ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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番外40「モンスター現れず(ヒュンケル視点)」

「たし、か……こ、の辺り……でさぁ」

 

 苦し気に喘ぎつつカシーヴは膝をつくと、もう限界だと担いでいた暴れうしどりの体を地面へ降ろした。

 

「すまんな、持たせて」

「よしてくだせえ。肉が欲しいって下心もあってこれを提案したのはあっしの方ですし、剣士様に荷物持たせていざという時何かあっちゃあ、申し訳が立たねえ。ただ」

 

 血抜きで吊り上げる時手伝っていただいても良いですかいとカシーヴが続ければ、オレは勿論だと頷いて。

 

「ありがてえ。そんじゃ、手早くこいつを縛っちまうとしやしょうかね。運んでくるのに少々時間をかけちまった。まだ血が中で固まったりしてねえといいが」

 

 どことなくカシーヴの動きに緩慢さが見えるのは、疲労が抜けていないのだろう。

 

「手伝おう。ひっくり返せばいいのか?」

「あ、すいやせん」

 

 ロープをかけるのに手間取っているようにも見えて申し出れば、カシーヴは遠慮することなく礼を言いつつこちらに指示をし始めた。師、アバンと旅をしていた頃、野生の獣を狩って食料としたこともあり狩猟にしろ血抜きや解体にしろ、全くの素人と言う訳ではないが、やはり本業の狩人にこそ一日の長がある。

 

「大したものだな」

 

 疲労してさえいなければもっと手早く作業も終えていただろう、そう思うだけの的確さがカシーヴの指示にはあり。

 

「恐縮でさあ。剣士様、後は吊るして首を掻っ切るだけ、もう少しお手伝いをお願いしやすぜ」

「ふっ、心得た」

 

 差し出されるロープを受け取ると、カシーヴのあの木にしやしょうと言う提案にのって手にしたロープに石をくくりつけて投げ、重しの石と一緒に降りてきたロープの先端を引っ張ることで枝の根元にかかったロープが暴れうしどりの体を持ち上げて行く。

 

「すげえ、あんな軽々と」

「カシーヴ、高さはどうだ?」

 

 ロープを引くごとに上がってゆく暴れうしどりにカシーヴは口をぽかんと開けてそれを眺めているが、首を掻っ切って血を抜くのはカシーヴの役目なのだ、高さに関してはカシーヴに決めてもらはなくてはならず。

 

「あ、ええと、もう少し高めでお願いしやす」

「わかった」

「もう少し、もう少し、ストップ! その辺で」

「ああ。さて」 

 

 カシーヴの声に合わせて高さを調整すると手にしていたロープを木の幹に括り付けて固定する。

 

「こんなところだな」

「へい、ありがとうごぜえやす。じゃ、剣士様は離れていてくだせえ」

 

 頭を下げるカシーヴに無言でうなずいてオレが離れると、カシーヴが山刀を振るい傷つけられた暴れうしどりの首から流れ出した血が鉄臭い臭いを漂わせながら地面へ滴り落ち始める。

 

「この血のにおいに釣られてモンスターが現れそうな気もするが」

 

 それもむしろカシーヴの狙いの内なのだろう。

 

「剣士様は木に登れやすかい? 暫く木の上で枝に身を隠して様子を見ようと思うんでやすが」

「問題はない」

 

 鎧の魔剣を着込んだ状態であっても木の方が重さに耐えてくれるのであれば木登り自体は可能であるし、鞘となっている鎧だけ隠しておけば、それほど太くない木でも登ることはできるだろう。

 

「へい、そんじゃ暫し様子を見やしょう」

「わかった」

 

 頷き合って別々の木に登って様子を見ること暫し。

 

「ぴきーっ」

「ぴきき」

 

 最初にやって来たのはスライムベスたちだった。つるされた暴れうしどりの死体の真下まで跳ねながらやってくると、血だまりに近寄ってゆき、血をすすり始める。

 

「ハズレか」

 

 そう声に出したわけではないが、当てが外れたとは思う。同時に最初からうまくいくはずもないかという納得もあったが。

 

「それはそれとして、だ」

 

 あのままにしておいて本命が来襲したら、それはそれで面倒なことになる。

 

「アバン流刀殺法、海破斬」

「「ぴぎゃ」」

 

 木の上からの斬撃で纏めて両断すると、オレは一度地に降りる。

 

「剣士様?」

「あれの死体を片付けておく。そのまま残しては警戒されるだろうからな」

 

 そうしてオレはスライムベスたちの死体を近くの茂みに隠し、木の上に戻って待つこと暫し。

 

「ぢゅーっ」

「ぢゅぢゅっ」

 

 次に現れたのはネズミの魔物だった。先ほどのスライムベスと言い弱い部類の魔物だが、だからこそ平時はこうして死した他の魔物を餌としているのかもしれない。

 

「しかし、ネズミか」

 

 フクロウなどの猛禽が小動物を餌にすることはオレも知っている。

 

「あの数なら問題ない」

 

 そもそもオレの剣は鞭のように形状を変えることも刀身を伸縮させること可能なのだ。

 

「ぢゅ」

「ぢゅぎっ」

 

 伸ばした剣の切っ先でネズミどもを貫き、物言わぬ死体に変え。

 

「カシーヴ、悪いがロープを分けてくれるか? 餌を増やしてみる」

 

 再び地に降り立ったオレはカシーヴにそう要請し。

 

「あ、へい。あっしも手伝いやさあ」

 

 我に返って木から降りてきたカシーヴとネズミの魔物の死体を木に吊るし。

 

「来やせんね」

「そうだな」

 

 木の上で互いに視線を交わすころには討った魔物の数は十をとうに超えていた。

 

 

 




次回、番外41「帰路(ヒュンケル視点)」に続くメラ。
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