ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「剣士様、そろそろ引き上げやしょうか」
カシーヴの提案にオレはそうだなと頷いた。餌として吊るした魔物の死体の近くで待つだけでなく周辺の探索もしてみたが、遭遇したのはこれまでに屠った魔物のみ。それらを悉く倒したところでオレたちは成果が出そうにないと見切りをつけたのだ。
「関係ない魔物はおびき出されて寄ってきたんだがな」
吊るした暴れうしどりの肉に関してはカシーヴも美味いと評していた。餌と言う意味で問題があるようには思えないが。半日にも満たぬ時間では待ち伏せるにも短すぎたのか。
「ひとまず暴れうしどりは持ち帰るとして、作戦は練り直さなければならんだろう」
「へい。じゃ、あっしはまたあいつを担ぎやさあ」
出来れば今日中に片をつけたかったがそれは虫が良すぎたらしい。頷いたカシーヴが木の幹に近寄りオレがくくりつけたロープを解くと、どさりと血抜きしていた暴れうしどりの身体が地面に落ち。
「周囲を見て回ったとき、ここで待ち伏せていた間、それなりの数の魔物は倒した。そうそう出てこないと思いたいが、帰路はいっそう警戒していくぞ」
血抜きはしたとはいえ、暴れうしどりから全く血のにおいがしないかと言うと首を横に振らざるを得ない。残った血のにおいにつられて魔物が現れることは十分考えられる。かと言って、狩猟を控えているカシーヴ達に獲物を置いてゆけと言うのは酷であり。
「う、ぐっ、……へい、よろ、しくっ……頼み、やさあ」
「任せておけ。ただし」
戻ったら件の魔物と目撃した時のことをもっと詳しく教えてくれともカシーヴには言っておく。うまく行っていない今、手がかりは出来ればほしいモノだった。
「いや、手がかりを得たとしてオレが十全に活かせるかは話が別か」
旧魔王軍で育ち魔王軍にも所属していたたオレは、モンスターに関してはそれなりに詳しいつもりだが、旧魔王軍で育てられていたのは昔のことであり、魔王軍に所属していた頃にオレの周りに居たのは不死族のモンスターばかりだった。
「炎を纏った鳥だったな」
魔王軍に所属しているとしたなら、おそらくは氷炎魔団の魔物。
「まさか」
ひょっとして、フレイザードが倒され氷炎魔団が壊滅したことで野に解き放たれた魔物の一体だったりするのだろうか。
「剣士様?」
「っ、すまん。問題の魔物について少し考えて居た。先ほど見回った限りでは、とりあえず営巣しているらしき場所は見当たらなかったな」
「へい」
カシーヴが見たというのがただの狩りで、あそこが狩場の端だった場合、巣は別の場所にあることも考えられる。
「いずれにしても考察は後にすべきだった」
カシーヴには荷物を持たせているのだ。オレは疑問も推測も頭を振って払いのけ剣の柄に手を添え歩き出す。
◇◆◇
「でやあっ」
血のにおいに誘われたか、現れたおばけきのこを両断し、少し距離をとってから息を吸う。
「この辺りで厄介なのはこいつだな」
おばけきのこは、吸い込んだ者を眠らせる甘いにおいの息を吐く。簡単に眠らされるつもりはないものの、ひとたび眠ってしまえば無防備になるのは明白だ。
「風上からこちらの気づかない内に息を流されるのは避けたいところだが」
とりあえず、今回は早期に発見して倒すこともかなった、そして。
「そろそろ最初に罠へ魔物がかかっていた辺りも越えるしな」
気を抜くつもりはないが、それはオレの話だ。抜けた血液分重量が減ってるとしても吊るす場所へ向かった時以上の距離獲物を運んだカシーヴに警戒し続けろと言うのは酷であるし、無理でもあった。
「ところで、村に向けて応援を呼ぶような合図はないのか?」
だからこそ思ったのだ、人手を呼べば運搬ももっと楽になるのではと。
「あり、やすがね……門番、してる……仲間の手を煩わすわけにゃ」
「そうか、つまらないことを言った。許せ」
「いえ。気に、しねえで……っ、くだせえ。あっしが……もっと楽々、運べてれば」
いいだけの話でやしたしと続けたカシーヴが背の荷を担ぎなおすと、上から羽音が聞こえ。
「っ……カラスか」
柄に伸ばした手を放し、ほうと息を漏らしたオレの頭上を飛んでゆくのは、魔物でも何でもないただのカラスが二羽。
「ここに、こんなご馳走がありやすからね」
「なるほど」
あばれうしどりの死体に気付いて寄ってきたが、オレとカシーヴに気付いて降りずに去っていったとかそんなところなのだろう。
「今頃……例の場所は、カラスがびっしり、かもしれやせんね」
「ありうるな」
暴れうしどり以外の魔物の死体はそのままなのだ。オレたちが居ない間に件の魔物が現れた場合を考えてのことなのだが。
「もう一度あの場所に行けば、魔物の痕跡が見つかるのではと些少であろうと期待はあったが」
この分ではカラスの食い荒らした死体しか残っていないかもしれない。
次回、番外42「心当たりと後悔(ヒュンケル視点)」に続くメラ。