ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「おお、剣士様。どう」
きっとどうだったかと問おうとしたのだろう門番の言葉は、不自然に途切れた。理由は考えなくてもわかる。
「生憎と問題の魔物は確認できなかったが、暴れうしどりを一頭仕留めた」
わざわざ説明するまでもない気もするが、後ろのカシーヴへ視線をやっている門番にそう説明し。
「カシーヴ」
「よぉ、悪ぃが、後を頼みやさあ」
どさりと音がして振り返れば、暴れうしどりを下ろしたカシーヴが地面にへたり込んでいた。もう限界だったのだろう。
「あ、ああ。まかしとけ。こんだけの大物運んできたんならそりゃへたるわな。解体もこっちで人を集めてやっとく。一番うまい部分は剣士様とおまえ用に大目に切り分けておく。おまえの分は家に届けりゃいいよな、嫁さん居るだろうし」
まくしたてるように言うが早いか、ちょっとここを頼むと言い残して門番の男は駆け足で村の中へ消えていった。獲物を運び解体する人足を求めに言ったのだろう。
「においを辿って魔物が近寄ってきているとは思えんが」
群れを作ってやってきたとしても森で戦った魔物であれば負ける気はしないが、そもそもあれだけ倒した後だ。
「確かにあれだけ倒しやしたし、あのあたりにはもうモンスターは残ってねぇかもしれやせんね」
村へ魔物がやって来るとは思えないところについてはカシーヴも同意し。
「モンスターが減ったと言やあ、前にメラゴーストの群れが見かけられた少し後にモンスターと出くわすことが極端に減った時期があったような」
「っ」
今思い出したという様に口にした言葉に、オレの肩が微かに動いた。おそらくだが、その魔物との遭遇が減ったことについてオレはおそらくだが真相を知っている。カシーヴの言うメラゴーストがオレの部下だったあいつらならば、オレは直接当人たちから聞いているからだ。
『炎の身体に興奮して襲ってきたので、危険な存在と認識し分裂して狩った』
だったか。ともあれ、最初は自衛の為だったが戦いを繰り返したことで強くなっていることに気づき、襲ってくる魔物を返り討ちにしている間にハドラーが復活、周辺の魔物が凶暴化したことで、それまでは襲ってこなかった魔物も相手にすることとなり、返り討ちにし続けた結果、周辺から殆ど魔物が居なくなった。だいたいそんな経緯だったと思う。
「どうかしやしたかい?」
「いや、少し昔のことを思い出していた」
思い出すと、今あいつらはどこに居るのかとつい考えてしまう。フレイザードについていったやつらはパプニカの侵攻に回された様だが、氷炎魔団がオレと不死騎団の侵攻を生き延びた町や村を襲うことはなく、侵攻部隊が居たのではと思しき場所には何者かと交戦したらしい痕跡が残るのみだったと聞く。いずれはこの目で確認しに、あいつらを探しに行きたいとは思うが、それは今ではなく。
「いずれにしても今回の一件とは関係ない話だ。そうだろう?」
「へい、ただ……メラゴーストに関しちゃ、ちょっと」
「ん?」
返ってきた言葉の歯切れの悪さが気になったオレはどうしたと問い。
「鳥の魔物がメラゴーストになった気がしただと?!」
「へ、へい」
カシーヴの告白につい叫んでいた。
「くっ」
先に、もっと詳しく目撃した時のことを聞いておくべきだったのだろう。後になって押し寄せた後悔と、どうしようもない脱力感。見知らぬ魔物の脅威に一つの村が怯えていたかと思えば、その原因が変身呪文で姿を変えた弟弟子にあるかもしれないのだ。
「剣士様?」
「勇者アバンの弟子のひとりに変身呪文を使う者が居るのだがな?」
「剣士様、何を?」
唐突な語りに状況を呑み込めぬカシーヴへ構わずオレは言葉を続ける。
「魔王軍に襲われぬよう敢えて鳥の魔物の姿で空を飛び、魔物の姿で魔王軍へ潜入する、そんな奴だが、変身呪文には効果時間があるようでな」
「鳥の魔物ぉ?! 剣士様、それってぇと、まさか……」
「ちなみにそいつは魔王軍に潜入する時、メラゴーストに化けたそうだ。空中で変身呪文が解けて、慌ててモシャスし直そうとしたところで以前化けた別のモンスターに間違って変身してしまった、としたらどうだろうな」
おそらくだがこの一件、あの弟弟子がカシーヴに見られたというのが事件の真相なのだろう。
「オレは、オレたちは居もしないモンスターを探し回っていたかもしれん」
調査を優先し聞き取りをおざなりにしたことが仇になった。オレは思わず空を仰ぐ。
「カアアッ」
「カアァッ」
見上げた空、先に見たカラスだろうか。ちょうど二羽のカラスがどこかへ飛んで行くところだった。
番外43「ベンガーナ再び(ヒュンケル視点)」に続くメラ。