ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「念の為に先ほど魔物の死体を吊るした場所をもう一度確認しに行って、何もなければベンガーナへ戻る」
マイナンの家へと戻ってきたオレは調査の経緯と推測を話した上でそう告げた。
「あ、うん」
頷きつつもマイナンが微妙そうな表情だったのは、村の為に危険を冒してまでベンガーナへ向かった理由の魔物が危険でも何でもなかったと知ってしまったからだろう。オレとて真相を知ったときは思わず空を仰いだのだ。
「すまんな」
「ううん、ヒュンケル兄ちゃんが謝る理由なんて」
「いや」
何となく申し訳なさを感じて頭を下げれば、マイナンは頭を振るが、一応オレには謝る理由はあるのだ。徐に自分の首元へ手を伸ばすと引き出したのは普段内に隠している首飾り。
「ヒュンケル兄ちゃん、それは?」
「アバンのしるし、勇者アバンの弟子の証だ」
「それって――」
「ああ、今回の騒動の原因は推測だが、オレの弟弟子が原因かもしれんのだ」
気になるところがあるとすれば、狩猟と間違えられていたくだりだが、何か敵と戦ったとかそう言うことであれば、カシーヴの目撃証言があれだけなのは不自然だ。あの弟弟子はモシャスを抜きでも魔法使いとしての腕は確かだったはずだし、一方的にやられるとは考えにくい。戦いが起こったなら、攻撃呪文の余波なりなんなりを目撃している筈であり。
「加えて、オレの探し人がその弟弟子でな」
「うわぁ」
厳密に言うとその分体だが、接触できるならこちらとしては本体でも構わないのだ。出来れば合流したいものの無理なら無理でいい。
「合流を望んでいたが無理そうなのでテランへ戻った」
と本体から分体を介してでも伝えて貰えれば、伝わったあいつの分体はテランかパプニカかともかくダイ達と合流すべく動くであろうから。
「ともあれ、そう言う訳だ。オレとしてはベンガーナに戻って人探しと行きたいところだが」
森に吊るして放置してきた魔物の死体をそのままには出来ない。懸念となっていた謎の魔物が存在しないなら、あれは周囲の魔物を呼びよせるだけだからだ。
「あー、そっか」
「この辺りの魔物だけなら村の狩人達でなんとかなるようだからな」
「ヒュンケル兄ちゃん……」
確認と撤去が済めば、オレはベンガーナに戻る、それを理解してかマイナンは何か言いたげな顔でチラリとこちらを見て。
「どうした?」
「えっ、あ、えっと、ありがとう」
「いや、礼を言われるほどのことは」
「ううん、それでも、ありがとう」
ないと続ける前に頭を振ってマイナンはもう一度オレへ礼を言い。
「おいらの話を聞いて村まで来てくれて、嬉しかった。村まで来る途中でもおいらの話に付き合ってくれて、えっと、それから……また、会えるよね?」
「探し人が見つかれば、オレはテランに向かって仲間と合流するつもりでいる。……その後のことはわからん」
「……そう」
魔王軍との戦いもある今、頷くことなど出来なかったし、そもそもオレは嘘が苦手だった。だからそんな答えになってしまったオレにマイナンは言う。
「けど、また会お」
と。
◇◆◇
「よぉ、色々あったみてえだな」
そして、再び森へ向かうべく村の入り口に向かったところで、声をかけてきた男が居た。
「マイボか」
「話は門番に聞いたぜ」
再度の説明は不要とでも言う様に告げ。
「俺からするとここは隣村だ、そんなこと関係なく困ってたら放っておけなかったとは思うけどよ、問題の魔物ってのが居なかったって知って少しホッとしたぜ。これで人探しも再開できる」
「人探し、か」
奇遇と言うべきなのだろうか。同じ村に立ち寄った男の本来の目的がどちらも人探しだったというのは。
「ならば、ここはお互いに情報を交換してみないか」
何か得られるものがあるかもしれんと、そう提案してみたい気持ちが心の中に浮かんできたが、オレの探し人がメラゴーストだということが問題になってくる。あちらが探し人のことを話し、こちらの探し人はと聞かれたとき、嘘をつかずに探し人が魔物だと伝えずに説明するのは、おそらく不可能に近い。しかもこのマイボと言う男、かなりのお人よしだ。オレだけが情報提供と言う形で協力することを良しとしまい。
「オレはこの件の始末が終わればベンガーナに戻るつもりだ」
故にオレの方はただこの後のことを話すにとどめ。
「オークションはもう終わっているだろうが、あそこは人が多い。目撃した人間が居るかもしれんしな」
ドラゴンキラーのオークションにあいつの分体が姿を見せたかどうかくらいは確認しておきたい。
「そうか。確かに人が多いってんなら目撃者くらいはいるかもしれねえな。決めたぜ、俺もベンガーナまで同行させてくれ」
「……構わんが」
一応後始末を終えた後になと言ったものの、特に拒む理由もない。オレはマイボの申し出を承諾したのだった。
ベンガーナまでたどり着けなかった、無念。
次回、番外44「続・ベンガーナ再び(ヒュンケル視点)」に続くメラ。