ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「こうなることは充分に予想できたが――」
剣を一閃させ、こちらに気づく前にオレはモンスターを斬り捨てる。マイボと言葉を交わした後、村を出たオレたちが目にしたのは、罠に残してきた死体に寄ってきたらしきモンスターの姿だった。
「先ほどの場所には居なかったが、毎回毎回そうもいかんか。」
前に来たときと比べれば量は少なく、釣り下げた死体だけと言うこともあったが、その前に来たときにそれなりに多くの魔物を倒しているのだ。
「悪ぃ、ヒュンケル少し待ってくれ」
「ああ」
そうして斬り倒した魔物や釣り下げられていた魔物の死体を同行者であるマイボが村で借りたという農具で穴を掘って埋めていた。
「墓、か」
死体を残せば肉食の獣や今の様に凶暴化したモンスターが寄ってくることもありうる。それ自体対処法として間違ってはおらず正しいものだが、この男はそんなことなど思っていないだろう。枝を刺したり石を置くだけの簡易なモノとはいえ埋めた場所にひと手間かけていることを鑑みるなら、ただ埋めただけでなく墓を作っているのだ。
「ああ。俺も自分がどこに生まれるかとか人間として生まれるかとかを選んで生まれてこれた訳じゃねえしな。ひょっとしたら魔物として生まれてきちまったかもしれねえと思うと……凶暴になって村の連中や俺達に襲いかかってくるヤツは倒さなきゃなんねえが、倒したってんならそれ以上はな。もちろん、解体して肉として食べてる隣村の連中を間違ってるなんて言うつもりもねえ。命を無駄にせず糧とするってのも大切なことだろうしな。けどよ、食べようのない奴らだからって野ざらしにしたまんまってのは違うと思ってよ」
「ふっ」
甘い男、そう思う。武器を被って冒険者をやっていたと言う身の上が信じられないぐらいに甘く、変わった男だ。
「しかし」
ふと思う、この調子で全ての魔物を弔った場合、どれほど時間を必要とするのかを。
「薄情かもしれんが、この調子で墓を作ってゆくと日暮れまでに戻れる保証は出来んぞ?」
今はないが墓を掘っている間にモンスターが襲撃してくることもないとは言いきれない。
「それなら大丈夫でさあ」
ただ、オレの懸念は杞憂だったらしい。後方からマイボ以外の声がして、振り返ればそこに居たのは村の狩人が数名。
「お前たち」
「勘違いしねぇでくだせえ。あっしらはただ、剣士様たちがまた暴れうしどりと出くわしたらって考えて後を追っかけてきただけでさあ」
「まあ、マイボのことだからこうなってるかなとも思いはしたがな」
カシーヴの漏らしたように下心あってか、名も知らぬ隣の狩人の言のような理由かあるいは両方か。
「墓を作るんだろう? 手伝おう」
「助かる。オレはこのまま周辺を警戒しておく」
人手が大きく増えたことで死体の埋葬と墓づくりは一気に進み、助力を得られた勢いもあったのだろう。
「ふぅ、これで終わりだな」
気づけば魔物を呼び出すために暴れうしどりをつるしていた場所までたどり着いたオレたちはすべての死体を埋葬し、墓を作り終えていた。それでもさすがに疲れたのか、狩人たちは地面に座り込んだままだったが。
「しかし、勢いってやつはすごいな。俺達も手伝ったとは言え、あれだけの死体を日が暮れる前に埋め終えちまえたんだから」
「まあ、大物もいなかったしな」
「けど、キノコの魔物って普通に埋めてよかったのかね? アレだけは地面から生えてきそうな気がしてるんだが」
最後の狩人の疑問は確かにオレも少し気になるも、だったらたびたび様子を見に来ればいいという他の狩人の言葉で懸念は解消される。
「もし生えてきても育ちきる前なら弱いだろうし、実際生えてきてたら今度は二度と生えてこないように燃やしちまえばいい」
「それもそうか」
ともあれ、これでオレがあの村に留まる理由もほぼなくなった。埋める前に死体を改めたところ、大きな猛禽などがついばんだ後などは見つからず、件の魔物が弟弟子の変身である疑いが一層深まったからだ。
「さて、オレはそろそろベンガーナに戻る」
「そうですかい。色々世話になりやした」
村の入り口まで戻ってきたところで告げればカシーヴがこちらに頭を下げ。
「もしまた近くに来たら、村に寄ってください。その時は森の恵みいっぱいの郷土料理をご馳走します」
「ありがとうございました、どうぞお気を付けて」
他の狩人たちにも見送られる形でオレとマイボはサガサの村を後にし。
「確か目的地はベンガーナだったな? あそこは俺も漁具の部品やら何やらを買いに足を運んだことがある。道案内は任せとけ」
「そうか、なら頼む」
思えば行きはマイナンに案内されてきただけで土地勘があるわけでもない。オレはマイボの申し出に甘え、その後ろをついてゆくことにしたのだった。
ベンガーナにまだつけなかった、だと?
番外45「続・続・ベンガーナ再び(ヒュンケル視点)」に続くメラ