ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「外に出ただけじゃ、さっきの話を聞いてた奴が聞き耳立ててるかもしれねえしな」
デパートを出た足で宿屋に向かい一室借り、その部屋でマイボは部屋を借りた理由を語る。
「もっとも、それだけじゃねえ。もう日が沈む。魔物が凶暴化してる今、夜の行軍は危険だってのもあるが夜中に尋ねて行くのはあっちからしても迷惑になる」
「なるほど、しかし」
部屋をとったのに得心が行っても、一つのこる疑問があった。マイボが借りたのは二人部屋だったのだ。
「ん? あ、言い忘れてたがそっちのベッドはおまえのな?」
「な」
「一応道は話すつもりだけどよ、口で説明したって迷うやつはいるからな。刀工のおっさんのとこまでは俺が案内してやる。そうなってくると、足並みそろえてもらわなきゃ拙いだろ」
「それは」
つまり、オレを案内することも視野に入れ二人部屋を借りたのか。
「最初はこのどたまかなづちに染料をつけて布か何かにスタンプした紹介状『マイボのしるし』でも渡そうかって思ってたんだけどな、どう考えたって俺が引き合わせた方が確実だろ?」
「おまえは、どこまで……」
とんだお人よしが居たものだと思う。
「刀工のいるのはこことカールの間にある小さな村だ。村自体に取り立てて特徴もないこともあって、『刀工の村』なんて呼ばれている。正式な村の名前は俺も知らねえ、片手の数で足りる民家しかねえ小さな村でな」
「なるほど、それほど小さければ」
「ああ、知る奴も殆ど居ねえ。俺が村のことを知ったのも本当に偶然だったしな。頼まれごとで山に入って煮炊きの煙を偶然見つけなきゃ村があったことにも気づかなかっただろうぜ」
一応目印になりそうなモノはあるらしいが、案内すると言い出したのは、親切心からだけではないらしい。
「それで、案内したら俺はテランに向かうつもりだけどよ、そっちに何もなきゃ今度はカールに行くつもりだ」
「そうか、それならカールの方はオレが請け負った方が効率が良いのではないか?」
わざわざ案内までさせることになりそうなせいか、オレは気づけばそう口にしていて。
「んー、気持ちはありがてぇけど、ちょっと訳ありでな」
「そうか」
詳細を話せないというのであればこちらも同じだ。
「気持ちだけもらっておくぜ」
そう言うマイボへ加えて何か言うこともできず。
◇◆◇
「よぉ、起きたか?」
翌朝、修練の為ベッドを起きだそうとしたオレは声をかけられて振り返った。
「おまえも起きたのか」
「まあな。漁師は朝も早ええもんだ。もっとも、ここにゃ俺の船も漁具もねえ。起きてもやれることって言えば朝の修練ぐらいだろうけどな」
マイボによると冒険者を辞して漁師になったものの腕が鈍らないように漁のないときや何らかの理由で旅をする時は代わりに修練を行っていたらしい。
「とはいえこうも周りに家や店のある場所じゃあな、でかい音立てるようなことはやれねえだろうし」
「まあな」
マイボに同意してオレが窓に寄ればそれなりに広い通りを挟んですぐ向こうには民家があり、民家の後ろにも何か建物の影が見える。視界に収まる区画だけでもどれだけの人間が暮らしていることか。
「剣の素振りならばまだしも――」
マイボの武器は兜と一体化した殴打武器だ。殴りつけるとなれば大きな音がする。当てず寸止めなら音はしないだろうが、勢い余って何かにぶつけてしまう可能性もある。
「ふだんはこいつにさらに重りをぶら下げて首を振ったりしてるんだけどな、重りを下ろすにも音がしちまう」
「諦めるか」
「もしくは少し遠出するかだな」
話し合いの後、オレたちは周辺に配慮し、軽めの運動をするにとどめ。
「そんじゃ、行こうぜ。道中なら音を気にする必要もねえ」
「ああ」
朝食を取り終えるとチェックアウトを済ませベンガーナを後にする。目指すは西。休憩のついでに朝できなかった分の修練をし。
「しかし、本当に何もないな」
「だろ?」
辛うじて道と認識できるものをたどって入った山林はしばらく手をかけていなければ自然に呑まれて消えてしまいそうな頼りない道が続くだけ。
「冬になれば木が葉を落としてもっと見やすくなるんだけどよ」
「なるほど」
「とはいえそれを待ってもいられねえからな」
マイボの言葉に相槌を打ちつつ進む道は曲がりくねりながら続き。
「あそこだ、あれが刀工の村だ」
足を止めたマイボの示す先には山林の木々の間から少しだけ民家の屋根が顔を出していた。
次回、番外47「刀工の村で(ヒュンケル視点)」に続くメラ。
尚、向かう村は日本地図なら岡山の位置にあるという設定です。