ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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三話「信賞必罰」

「ふぅ、なんだか無茶苦茶気を使ったわねぇん」

 

 ヒュンケルの捕縛は本当に神経の張りつめた作業だった。その場にはいなかったが、俺は原作知識でバルジ島のハドラーとヒュンケルの戦闘シーンを知っているのだ。戦闘力どころか意識すらほぼ失ったヒュンケルにとどめを刺そうと近寄ったハドラーが急に動いた魔剣によって逆に殺されたシーンを。あれ同様に唐突に動き出して致死の一撃が来るのではないかという不安と戦いながらの捕縛は、結構きついモノがあった。

 

「というか、なんでアタシ自分でやったのかしら」

 

 師匠の格好をしたシロコダインにでもやらせればよかったのではと一瞬思ったが、もう済んでしまった話だ。

 

「さて、ヒュンケルちゃんの処遇に関しては、アタシにも腹案はあるけどとりあえずバーン様に報告してからどうするか決めることになるかしら」

 

 捕まえましたよと言う報告だけでそのあと逃がしたのでは俺の責任問題になるし、仮に逃がすとしても自己の責任でないところに移してからの方がいいだろう。こうすることでヒュンケルを助けるにしてもどう助けるかを考える時間も稼げる。

 

「その代わり、ザボエラ殿にはニュンケルを預けておくわ」

「にゅん?!」

 

 俺の発言にニュンケルが聞いていないよと言った顔をするが、これに関してはやむを得ないのだ。ザボエラにヒュンケルを預けて置いたら何をされるかわからないが、モシャスしてる味方であればザボエラも好きに手を出すことはできない。

 

「こ、こ奴をですと?!」

「そう。アタシが言うのもアレだけど、人質は奪還される危険性があるじゃない? だけど、その人質がそもそも敵の化けたモノだったら奪還される危険性は0よねぇん? それどころか敢えて奪還させて潜入させるとかだまし討ちにするとか、そういうことも可能だし」

「む、むぅぅ」

 

 実際俺を人質兼戦力にしようとして失敗したザボエラからすれば、これには反論できないだろう。そして、不在になったニュンケルは本物ンケルを逃がすときに活用できるかもしれない。ヒュンケルが語尾をにゅんにする生き恥を受け入れられればだが。

 

「そういう訳だから、ザボエラ殿はニュンケルと一緒に一度戻ってもらえるかしら? 今回のペナルティについては戻ってからね」

「も、戻ってからということはトゥース様は残られるので?」

「ええ。まだやることが残ってるもの」

 

 不思議そうにこちらを見るザボエラに頷きを返すと、俺はザボエラの側で倒れ伏したモンスター達に歩み寄る。

 

「……良かった、この悪魔はまだ息があるわねぇん、ベホイミ」

「あ」

 

 俺が回復呪文を使ったことでやることを悟ったのだろう。

 

「わ、ワシもお手伝いしますじゃ」

「そう、じゃあ息のある部下に回復呪文をお願い。シロコダイン」

 

 あくまで失点を少しでも埋めるための行動だろうが、魔法力が全快でない今の俺にはその申し出はありがたい。俺はザボエラに癒し手を任せることにして師匠の姿の部下の名を呼ぶ。

 

「はい」

「こと切れたモンスター達をこっちに連れてきて。プレイハードは穴を掘ってもらえるかしら? 魔王軍の為に戦ったのだから、せめてそれぐらいは、ね」

 

 墓穴掘りをプレイハードに割り振ったのは、遺体を運ばせては燃やすか凍らせてしまうから。

 

「ザボエラ殿は部下の回復が終わったら、部下を連れて戻ってくれるかしら? アナタは肉体労働には向かなそうだし」

「はい」

 

 流石に俺の言に一理あると思ったのか、素直に頷いたザボエラは息の有ったモンスターを一通り治療すると瞬間移動呪文で立ち去り。

 

「シロコダイン、マホカトールを」

「おや? よろしいのですか?」

「あれは軍団長クラスなら効果がないでしょ? けど、悪魔の目玉を残していってる可能性はあるもの。効果は一瞬、余計なことをしてるかどうかの確認に使ったってことにしておけば問題はないわ」

 

 これからやることをザボエラや魔王軍には知られたくない以上、人払いならぬ監視払いをする方法が他に思いつかなかったのだ。

 

「わかりました、では行ってまいります。ちょえーっ!」

 

 近くの木の枝を拾うと地面をひっかきながら走りだしたシロコダインを見送り。

 

「邪なる威力よ退け! マホカトール!」

「プレイハード、レオナ姫にモシャスしてザオラルを! アタシはバランの格好だし、ダメ元で竜の血を試してみるわ」

 

 ぐるっと周辺を回って戻ってきたシロコダインが破邪呪文を使って見せたのを確認した俺は指示を出す。そう、狙っていたのは力尽きたモンスター達の蘇生だ。

 

「一度命を落として、魔王軍からも除籍扱いになっているであろう人材。蘇生がうまく行ったらでまだ皮算用だしアタシたちに協力してくれるかも未知数だけど」

 

 ザボエラの人徳のなさを鑑みると、賭けとして悪くはないと思うのだ。

 

「まあ、こっちの方が先よね」

 

 俺はポツリと呟くと、モシャスが解けない程度に軽く掌を傷つけ、モンスターの死体の口に血を垂らして回ったのだった。

 




次回、四話「信賞必罰2」に続くメラ。
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