ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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五話「信賞必罰3」

「とりあえず、ここにシロコダインを残してゆくから、しばらくはそこの偽アバンっぽいのに従ってちょうだい。流石にアタシはバーンパレスに帰らざるを得ないから」

 

 ザボエラへ罰を言い渡すとかザボエラの功績を大魔王へ報告するとか、捕まえたヒュンケルを運ぶとかやることが色々あるというのも事実だが、全然戻って来ないというのも何やってたんだと疑問に持たれる筈。

 

「よいしょ」

 

 ヒュンケルの身体を担ぐと、俺はやむなく、本当にやむなくではあるが蘇生したモンスター達をシロコダインに丸投げしてプレイハードに行くわよと声をかけた。シロコダインがちょっとか声をあげた気もするが、気にはしない。

 

「勇者アバンは今の勇者一行を育てた『次代の育成』についてはこの上なく優秀な人物、敵味方を考えなければ、貴方たちの修行を見る為の姿としてこれ以上ふさわしい姿はないわ」

「おおっ」

「なるほど、流石はトゥース様」

 

 更に付け加えた言葉にモンスター達が感銘を受けるのを後方に俺はほくそ笑んだ。悪いな、シロコダイン、と。こう、別に少し前のことを根に持ってたとかではない。

 

「ルーラッ」

 

 ニュンケルから吸い取った魔法力を用いて瞬間移動呪文を唱えた俺はヒュンケルを担いだままプレイハードとともに空に舞い上がり。

 

「とりあえずヒュンケルちゃんはパレスの牢屋に入れておけばいいわよねぇん」

 

 原作でザボエラが放り込まれた描写を思い出しつつヒュンケルの一時的な処遇を決める。牢番は文官の手伝いに回ってる個体に分裂して貰ってそれを当てるつもりだ。名目はモシャスの練習を兼ねると言ったところで。

 

「せっかくコピー元の当人が手に入ったのだものね」

 

 記憶というのは劣化する。定期的にモシャスで変身しておさらいしていなければ、観察できない人物へのモシャスは今後不可能となってゆくだろう、それが俺の見立てであり。

 

「一時的に姿を借りた見知らぬ騎士とか一般人はもう厳しいのが多いけれど、師匠とフレイザードもたまに鏡面衆がモシャスしていてもどこまで変身の選択肢に残しておけるか……」

 

 ダイ達に関しては悪魔の目玉を介するかちょくちょくちょっかいをかけに行って観察すれば問題はないのだが。ちなみにフレイザードへのモシャスを鏡面衆に任せているのは、俺がフレイザードにモシャスすると、炎の闘気と反発して半身が変身直後に消滅するからだ。

 

「その辺考えても、やっぱりプレイハードには今の姿を専任してもらうのも選択肢の一つよねぇん」

 

 消滅してしまっているフレイザードに関しては、モシャス可能な状況を長くもたせる方法が他にほとんどなく。

 

「姿一つ縛りですかい? そいつはハードだぜ」

 

 選択肢を減らすと言ったのに嬉しそうな反応を見て、もうやだコイツって俺が思ってもきっと仕方ないと思う。

 

「ドMザードの方が良かったかしら、コイツの名前」

 

 ただ、分裂元が究極的に自分であることを鑑みると、下手なネーミングは言葉のブーメランになって急所に突き刺さる。そういう意味でも俺は複雑なまま、呪文で運ばれ死の大地に降り立った。

 

◇◆◇

 

「――という訳で、ザボエラ殿が眠らせたヒュンケルを城の牢へと入れて戻ってまいりました」

 

 個人的にはすぐザボエラの方へ直行したかったが、こういう時優先すべきはまず上司と、プレイハードをヒュンケルを押し込んだ牢の前に残し、俺はまず大魔王の元へ赴き、跪いて今回の件の報告をしていた。薄布の左右にはミストバーンとキルバーンが控えており思い思いの視線を俺に向けている。

 

「そうか、ザボエラがヒュンケルを捕らえるとはな」

「ヒュンケルの身柄については、モシャスの手本とするなどいくつか利用方法を思いついておりますので、問題がないようでしたらこのまま預からせて頂きたく思います」

「ほう。しかし、それでザボエラは納得すると?」

 

 己の手でとらえた獲物を横取りされた様にも見える状況だ。大魔王が疑問に思うのももっともだが、これについてはニュンケルを預けたこと、そしてその時ザボエラにした話をしたことで得心がいったのか、ちらりとミストバーンの方を見た気もするが、好きにするが良いという言葉をたまわった。俺も手荒く扱うつもりはないし、生かして活用するとしたから、原作でミストバーンがヒュンケルを後々利用した件についても問題なしと判断したのかもしれない。

 

「そして、勇者ダイたちについてですが、引き続きバラン殿へ一任。それでもうまくいかないようであれば、ザボエラ殿を主軸として行動を起こす予定でおります」

「そうか……ふむ」

 

 続ける俺の報告へ大魔王は鷹揚に頷いたかと思えば薄布の向こうで何やら考え始め。薄布の向こうの人影が、傾ぎ立ち上がる。

 

「え」

「あ……ああっ!!!」

「まっ……まさか!!?」

 

 思わず声が漏れた俺の前方で、ミストバーンとキルバーンが驚きの声をあげた。だが、驚いたというなら俺も同じだ。あの大魔王が俺の前に姿を正体を現そうとしていた。

 




ザボエラへのペナルティどころじゃねえ?!

次回、六話「信賞必罰4」に続けメラ。

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