ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十話「トゥースは逃げ出した!」

「とりあえず、それなりに数はこなせたと思うけど……」

 

 持ってきてもらった鎧やらなにやらの殆どを使い終え、さまようよろいもどきが小隊として行動できるくらいには数を揃えたところで、俺は思った。

 

「流石にこの空気、ちょっと耐えられそうにない」

 

 と。俺が作成に失敗するとかミスをすればそれを詰ることでハドラーがストレスを発散する、それでガス抜きが出来て、造反とか暴走を抑えられるならやむ無しかと思っていた俺だったが、こう、数を作るうちに慣れてきたというか、うまく作れるようになってきてしまったのだ。

 

「ぐっ、ぬううっ」

 

 ケチをつけようにもケチの付け所がない俺の創造物をみたハドラーは今にもそれを殴りつけるのではといった形相で震えていたし、流石にこんな状況下で実際いろいろ動いてもらう予定のドラゴンキラーとかオリハルコンの駒への禁呪法の行使はしたくない。

 

「とりあえず、練習はこんなところでいいかな。俺、ザボエラ殿を待たせてるし、続きは次回ということで」

「……なに?」

 

 切り上げるのが想定外だったのか、茫然としたハドラーへありがとうございましたと頭を下げて俺は逃げ出した。

 

「きみたちはひとまずミストバーンのところに行って、当面はミストバーンに従って」

 

 後ろをぞろぞろついてきた鎧については資材提供者へのお礼のつもりでそう指示を出し、途中で別れる。

 

「……ふぅ」

 

 製作者行とハドラーの罵詈雑言で精神と肉体の両面で疲労困憊だったようで、一人になると疲れがどっと押し寄せてきた気がして、俺は壁に手をついてため息をつく。

 

「本番は最低でも一度休んだ後にしよう。万全を期すならもっと練習しておきたいところだけど」

 

 製作物に生命を吹き込む禁呪法がそう気軽にできるようなモノなら、目につくすべての無機物をすべてモンスターにして物量で魔王軍は今頃地上を征服していることだろう。当然制約もあって、俺が魔法生物を作るにはハドラーかミストバーン、あるいは大魔王の協力がなければ無理だということもハドラーから禁呪法を学ぶ過程で判明した。一応の例外は存在する、ただ。

 

「うーん、いや、まあ……ないな」

 

 その例外とは、吹き込む生命をメラゴーストで代用するというモノ。フレイザードの半分がミストバーンの鎧に宿ったのに近い形のモノで、メラゴーストとしての弱点である水を克服することはでき、大幅なパワーアップも叶うだろうが、一定確率で物理攻撃を無効化する回避能力と分裂及び合体能力を失うことにもなる。デメリットがある上、一度吹き込んでしまえばそのメラゴーストはおそらく元に戻れない。故に俺はこれをやることはまずないと断じた。自分から望む分体とかが居れば話は別だが、メリット面に釣られて手を挙げそうな分体はきっといない、いないだろう。

 

「……一応本番に入る前に聞ける範囲の奴には確認だけしておくか」

 

 勝手に判断してまた殴られるのも嫌ではあるし。もっとも、確認より先に俺はザボエラのところへ向かう必要があるが。

 

「ザボエラ殿、結構待たせちゃったからな」

 

 急がないとと、俺は再び歩き始め。

 

◇◆◇

 

「おーっほっほっほっほっほっほ」

 

 バーンパレス内の一室に高笑いが響き渡る。

 

「おかしいなあ、俺、ザボエラ殿のところに向かうはずだったんだけど」

 

 どうしてこんなことになってるんだろうと思わず天井を仰ぐ俺の前には、オリハルコンの輝きと胸に頭部より大きな膨らみを二つ持つ元女王の駒がいるのだった。

 

「どうなされまして、トゥース様? わたくしはトゥース様の僕、悩みがあるのでしたら遠慮は不要でしてよ?」

「いや、そのおまえが悩みの種というか……うん」

 

 俺は顔をひきつらせたまま記憶を過去へと遡らせる。

 

『あれ、トゥース様』

『お疲れ様です、トゥース様』

『先輩たちに御用ですかトゥース様』

 

 ザボエラの元を訪れようとしていた俺は三人の分体とたまたまばったり出くわし、そう声をかけられた。三人が居たのは、急遽設けられたモシャス室とプレートの下がる文官の応援に派遣した分体がモシャスをし直すための耐火防炎処置の施された部屋の前。ここにいる理由は説明するまでもないが。

 

「いや、実はね」

 

 精神と肉体の疲労でつい愚痴の一つでも漏らしたくなった俺は三人に経緯を話してしまい。

 

『はぁ?! オリハルコンの駒ぁ?!』

『それ、挙手してもいいですか? すぐ分裂しますんで!』

『いいなあ、まだ注入できる駒って残ってます?』

 

 一人は驚いただけだったが、残りの二人は凄まじい食いつきだった。

 

『ちょっと待ってください、今勤務中のやつらにも意思確認してきますんで』

 

 だが、驚いたやつは驚いたやつで真顔に戻るとモシャスしてから仕事場の方に戻ってゆき。

 

『トゥース様、俺、女王になりたいです!』

『ふっ、お前ばかりにかっこいい顔はさせないぜ、女王になるのは俺だ!』

『おーっほっほっほっほ。ふっ、女王を希望するなら、まずは自分が女王であることがいかにふさわしいかをアピールすべき。そこのお二方は、そこが知れましてよ?』

「ちょ」

 

 かわりにやって来た連中の食いつきっぷりとかアレ加減とか勢いに俺は仰け反った。

 

◇◆◇

 

「で、詰め寄られた結果、熾烈な女王の座争いの果て、こいつを作ったんだっけ」

 

 過去の記憶から戻ってきた俺の前で未だ高笑いする元女王の駒。その名を、センターアルビナスと言う。

 

「あの戦いは本当に熾烈だったよな」

「本当に、よく残れたなって自分でも思うよ」

 

 そして、そんなセンターアルビナスの胸部でしゃべる左右の膨らみがアルビナスビットとアルビナスコア。結局一人に絞れず、三人で一人という何でそうなったんだとツッコミ入れたくなるような決着を強引に形にしたのが、大幅な胸部増大の理由であった。

 




本作の女王、名前でピンときた方も居ますよね?(ウニみたいな何か見つつ)

次回、十一話「女王様と一緒」に続くメラ。
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