ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「ふぅ、ザボエラ殿はここだって聞いたけど――」
俺だってただ魔改造アルビナスを作るためだけに時間を割いたわけではなく、文官のところで働いてる分体からきちんとザボエラの居場所は聞いていたので迷うことはなかった。
「はぁい、ザボエラ殿いるかしらぁん?」
ただ、別れた時がそうだったので、遺憾にもオネェ口調にならざるを得なかったが。
「キヒッ、これはトゥースさ」
「に゛ょっ」
そんな俺の声に振り返りかけたザボエラが固まり、一緒に居たニュンケルがヒュンケルの顔でしちゃいけないレベルの顔面崩壊をするが、うん、まぁ、仕方ないというか何と言うか。
「おーっほっほっほ、御機嫌よう。初にお目にかかりますわね、トゥース様の配下でアルビナスと申しますわ。以後、お見知りおきを」
遠くを見そうになる俺の後ろでアレな創造物が高笑いをあげつつ挨拶すると、早くも連れてくるんじゃなかった的な後悔にさいなまれるが、野放しにするよりマシなのだからこれはもう仕方ない。
「とりあえず、コレの説明は話すと長くなるかもしれないし後回しにしてさっさと本題に入るわね」
いつの間にか表情の戻ったニュンケルが説明を求めるような目を向けてくるが、下手に説明するとご本人が口を挟んできかねない予感がヒシヒシしたのだ。ニュンケルが驚いたのがこのタイミングでもうアルビナスが完成していることについてか、やたらでかい胸部の膨らみについてなのかわからないし、説明に関してもどちらかかそれとも両方かもわからないし、ザボエラの前では話せないことも多いので、やはり説明は後回しの方が効率も良く。あと、俺個人としても説明はできればしたくない。あの胸部が俺の趣味だとか思われたら嫌だが、否定したら否定したで信じてもらえるかは別の話だし。
「ザボエラ殿には独断行動についてペナルティを課すと言ってあったわね? あ、ヒュンケルを捕らえた功績については既にバーンさまに報告済みだから、先にそれは伝えておくわねぇん」
「ヒョ、あ、ありがとうございますじゃ」
「で、問題はここからよ。アタシとしてはペナルティとしてザボエラ殿には一つ、呪文を教えて貰おうと思ってるの。自分の切れる手札を人にも渡しちゃうってのは、気が進まないでしょうけどペナルティってことだからまぁ、それはね」
納得してもらわないといけないわと言いつつも、俺はただと続けた。
「強い呪文を使える者が軍内に増えれば、軍全体の戦力の底上げにもなるし、取れる手段も増えてくると思うのよね」
「は、はあ」
「話は変わるけど」
そう前置きして俺はザボエラに問う。他人から凄い奴だって思われてみたりとかしたくない、と。
「す、すごい奴ですと?」
「そうよ。アタシが見るにザボエラ殿はこのバーンパレスの武器庫に匹敵するぐらいのお宝だと思うのよ。智謀もだけど技術とか、手持ちの呪文の数々とか。ただね、それが評価されない理由をアタシは知ってるの」
「なっ、な、な」
わなわなと震えたかと思えば、次の瞬間、お教えくだされと駆け寄ってきたザボエラに予想はしてても内心気圧されるというか引きつつ。
「それは、知らないからよぉん」
俺は、答えた。
「知ら……ない?」
「そう。いかに素晴らしい呪文の使い手でも、使うところを見た者がいなければ、持ってることさえ気づかれないし、使い手が当人だけなら使われる機会も少なく、見ただけでは呪文の真価も伝わらないところだってあるかもしれないわぁん。けど、その呪文を教わった人が、大活躍して、呪文の素晴らしさを周りに伝えた上でそれが元はザボエラ殿の呪文であったと語ったとしたらどうかしら?」
幹部は厳しいだろうが、教えを乞いに魔王軍の面々がやって来て頭を下げてくるかもしれない。
「奥の手として秘匿しておくのも間違ってはいないわ。けど、表面に出さない優れたモノって言うのは評価されにくいのよ。だから、アタシがザボエラ殿に呪文を教わって、それで活躍すれば」
「ワシの、ワシのおかげと」
「ええ。前にも言ったけど、アタシは部下の功績を横取りにしたりはしないから、ザボエラ殿のおかげだってちゃんと言うわよ? そう言う訳で、見返りもあるペナルティなのだけれど」
どうかしらと訊ねれば、ザボエラは二つ返事で乗ってきた。まぁ、出世欲の塊ならばきちんと評価される方法があると言っただけでこうなるんじゃないかとは思っていたが。
「と、言う訳でザボエラ殿独自の呪文みたいなのがあるなら、リストアップしてもらえるかしら? その中から、大活躍出来て、ザボエラ殿を見る目が変わりそうなのをアタシが選んであげるわ」
そう言いつつ俺が狙っている呪文はただ一つ。マホプラウス、他者の呪文を自分の身で受け、取りこんでから自分の魔力を乗せて放つ呪文だった。
次回、十三話「何とかと呪文は使いよう」に続くメラ。