ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「ルーラッ!」
やることを最低限終わらせた俺は、死の大地を瞬間移動呪文で発つ。やることの内、ドラゴンキラーを基にした部下の作成の後にちょっとだけ仮眠を挟んだが、流石に魔法力を回復しないとマホトラで辻魔法力奪取でもしなければ呪文の一つも唱えられなくなっていたであろうから、そこは勘弁願いたい。
「あ」
やがて着地が近づき、そこにバランの姿を見つけて俺は良かったと密かに安堵する。急に一人離脱してしまったが、バランはあの反省会をした場所で待っていてくれたらしい。
「ごめん、けど戻って正解だった」
「なに?」
言い訳がましくなってしまうのがアレだったが、戻らなければ独断行動していたザボエラが大けがを負ったか死んでいたことを俺はバランに話し。
「それでヒュンケルは捕らえてパレスの牢の中、次の戦いに加勢してくることはないと思う」
「そうか」
「ただ、おれに新しい部下ができたことで魔王軍の戦力が増大したから……」
ダイ達は前にもまして厳しい状況に置かれてしまったことになる。にもかかわらず、バランが手心を加えたため、原作では既に果たしていたパワーアップも果たせておらず。
《バランからすると、ここからは、二択になる。心を鬼にしダイ達を追い込んででも乗り越えてパワーアップする方に賭けるか、諦めず説得して部下にするか。まるっきり成果が出せず膠着状態ってなれば、ザボエラ殿やハドラー殿が不満に思うのは想像に難くないし》
久々の思念波で、俺は先を続けた。
「なるほどな」
ぼかしたことを察すようにバランは頷き。
《鬼にする、か》
《うん。申し訳ないけど手段を選んでるような時間はないかもしれないから》
と言う前置きで、俺は触れておく、この思念の波には他に使い方があるんじゃないかと。つまり、原作のようにコレを用いてバランがダイの記憶を消してしまうことも選択肢の一つだと言外に言ったのだ。
《記憶を消すだと……正気か?》
《正直おれも断腸の思いだけど、死なせるぐらいならどこかに逃げ延びて生きてて欲しいから、さ》
ダイがパワーアップを果たしてくれなければ、俺もできれば戦いたくない魔王軍の猛者が出張ってきたところで勇者一行は詰む。一応マホプラウスを使った検証がうまく行けば俺の方でバーンを倒す見込みはつくが、あくまでも俺の希望はのんびり穏やかに過ごすことなのだ。それに上手く大魔王を討てたとしても、人間からすると大魔王以上の力を持つモンスターが誕生することになってしまう訳で、下手すれば次の勇者一行が俺を討つ為に差し向けられかねない。
《ダイを生かすために大魔王を討つって選択肢もあるにはあるけど、採る気はないだろ?》
バランはバーンの背任行為を確認したわけではなく、まだ魔王軍に居るのだ。選ぶはずもないと知りつつも一応聞き。
《無論だ》
思念波の会話で無ければ、おそらくバランは首を横に振っていたであろう。
「とにかく、作戦だけは始めないと」
いつまでも黙ったままも不自然なので、俺はそう言った。
「先に構想していた通りパプニカを襲撃するので、バラン殿にはテランの様子を監視してもらうね。それであのマイボって人がパプニカに向かう様ならテランに残留する面々に挑んでもらって」
「残るようなら逆にパプニカに向かうということだな、承知した」
「うん。その場合おれは入れ違いの形でテランに戻ることになるね」
せっかく人死には出来るだけ減らしてここまで来ているのだ、これ以上の犠牲者は出したくないが鏡面衆も置いてきてしまった今、バランをフリーにせざるを得ないのが少し痛い。
「じゃあ、テランの監視はお願い」
「わかった」
頷くバランと俺はそれぞれルーラの呪文を唱え。
「ふぅ、ここもなんだか随分久しぶりねぇん」
降り立ったのは、ヒュンケルと最初に戦った港町の陸地側の入り口だ。不死騎団によって廃墟になっていた痕跡も復興が進んだからか、殆ど見受けられず。
「そう言えば今はモシャスで人間っぽい格好なわけだし、敢えて正面から堂々とってのも面白そうかも」
新魔軍司令トゥースとしての顔を知るのは人間側だと勇者ダイ一行と大魔導士マトリフとあのマイボってオッサンくらいだろうから、下手をするとパプニカでは顔が割れてない可能性もある。
「復興中のところを壊すのも悪いわよね。こう、暴れまわっても問題なさそうな場所を探しつつ散策してみようかしら?」
まさかパプニカの人々も観光客か何かの様なノリで魔軍司令が乗りこんでくるとは思うまい。
「ふぅ、侵入成功♪」
こうして緩い感じで俺は港町に足を踏み入れることに成功したのだった。
次回、十七話「魔軍司令、来襲」に続くメラ。