ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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二十二話「想定の外」

「しくじったようだな、ザボエラ」

 

 だが、想定外だったとはいえ全くの手詰まりと言う訳でもない。効果時間の短さ故に透明化呪文が解けたところで、俺はバランの姿のままそう言うと、退くぞと偽ヒュンケルに声をかけ。

 

「なっ」

「はい」

 

 マイボが驚き立ち尽くす一方で、我に返ってどことなく悔し気に応じてこっちに寄ってくるあたり俺がザボエラと呼んだ意図を理解したのだろう。魔王軍でモシャスの使い手と言えば、あの妖魔司教となる。ヒュンケルの偽物がいた件についても、ザボエラがモシャスを使えることをダイ達はバルジ島で部下を身代わりに使った一件で知っているはずなので、この事が後で伝わっても不審には思われない筈だ。

 

「待て、バラン!」

 

 我に返ったマイボがこちらに走ってくるが、同じ失敗を二度する気はない。俺は答えず踵を返すとトベルーラの呪文で空へ舞い上がる。

 

「見失うほど離れず、それでいて追い付かれるほど近くもなく」

 

 目指したのはそんな距離だが、空を飛べないであろうマイボが追っ手ならば、作り出し維持するのは難しくない。後はこちらに気をとられてる間に偽ヒュンケルが離脱してくれればそれでよかった。適当なところまでおびき出して催眠呪文で眠らせ、ロープか何かで縛るなどした上であのオッサンを最初に見た漁村に瞬間移動呪文で置いて来れば、馬でも借りて一直線にこっちに来ない限り数日は時間が稼げる。マトリフが瞬間移動呪文で迎えに行ったりしたなら話は別だが、それでもマイボの連れ去られた先を知っていなければ行方を探して回る必要があり時間稼ぎにはなる筈だ。

 

「……もういいか」

 

 ある程度テランからは引き離せた、そう判断したところで俺はUターンしながら急加速し。

 

「っ、バラ」

「ラリホーマ!」

 

 着地と同時に催眠呪文をマイボへかける。

 

「うっ」

 

 それだけでどたまかなづちを被ったオッサンは地に膝をつき。

 

「これでいい……あ」

 

 後はこのオッサンを運ぶだけだと思ってから、ふと気づく。マイボと出会った漁村の位置を知ってるのは、当人を除くと俺とバランくらいの筈だ。

 

「またあの漁村に行かなきゃいけないのか」

 

 運び手はモシャスした分体に任せるとしても、それはテランから目を離さないといけないということであり。

 

「マトリフがパプニカに行くとは思えないけど」

 

 万が一を考えテランの見張りと押さえに戦力を残すとするなら、分体一人では荷が重い。

 

「出来るだけ早く戻ってこないとな」

 

 瞬間移動呪文なら移動に時間はかからない筈だが、先ほど想定外の事態で策が失敗したばかりなのだ。慎重すぎるくらい慎重になったって罰は当たらないと思う。周囲を見回し、よさそうな植物の蔓を見つけたのでそれを用いてマイボを縛り。

 

「よし、こいつは任せる。おれは――」

 

 後は炎の闘気が俺に戻ったときのことを鑑み、分体に縛ったマイボを持たせてルーラで移動しようと空を仰いだ時だった。

 

「げっ」

 

 視界に入ってきたのは、鳥の魔物に両肩を掴まれて飛ぶピンクのワニさんこと獣王クロコダインの姿で。

 

「マイボがいないことに気付いたのかしらぁん」

「バランが来るかもしれないと考えてのパトロールの可能性もあるけど」

 

 どちらにしても軽々しく呪文で飛び立てなくなった。俺はそう思ったのだが。

 

「こんな時こそ偽ヒュンケルの出番じゃないかしらぁん?」

「あ」

 

 オネエ口調な分体の発言に俺は声を上げていた。

 

「そうか、マイボにはばれたけどそれだけだから――」

 

 先の失敗を生かしてもう一度ヒュンケルのふりをしてクロコダインの目を誤魔化すという訳か。

 

「ドラゴンキラーは途中であった分体にでも預けてきたことにしましょ。それならある意味嘘じゃないわぁん」

「あー、預けてきたというか、一つになったというか」

「それで、まず相手も知ってるものとして話して、クロコダインが知らなかったら『マイボから聞いていなかったのか』とでも言えばいいわ」

「むぅ」

 

 ともあれ、マイボに指摘されたこちらの知りえなかった情報まで組み込むとはと俺は感心する。

 

「そう言う訳だから、偽ヒュンケルちゃんはクロコダインのことに今気づいたふりをして呼びかけてちょうだい。クロコダインの気がそれれば瞬間移動呪文で離脱するタイミングも生じるはずよ」

「その間におれたちは離脱する、と」

 

 さっきはどうなることかと思ったが、今度こそうまく行きそうな気がして。

 

「念の為にこっちはレムオルで隠れるわよ」

「あ、うん」

 

 透明化呪文まで使おうという念の入れようにも感心しつつ俺は頷いたのだった。

 




次回、二十三話「テイク2」に続くメラ。
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