ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「師匠にゃかなわねえよな、本当に」
おれはそう呟きテランのある方角へと視線を向けた。そう、あれは二日ほど前のこと。
◇◆◇
「あのトゥースって奴がパプニカに現れただあ?!」
テランにいたおれ達にパプニカから届いたのはロクでもねえ知らせだった。あの新しい魔軍司令って奴がパプニカへ姿を見せたってんだ。
「そんな……」
知らせを受けた姫さんの表情が強張るが無理もねぇ。あの無茶苦茶強かったバランを部下にして、挨拶代わりに極大呪文をぶっ放すような奴がパプニカに出現したとなりゃ、言いたくはねぇがとんでもねえ被害が出てるはずだ。
「それで、パプニカは?」
どれだけの被害が出たとまでは言わず、ダイが切り出せば、返ってきたのは意外な事実。
「殆ど被害が出なかっただって?!」
「ああ。新魔軍司令と言うやつはこう言ったんだ『せっかく復興したのにここを戦場にってのは嫌なんじゃなあい?』と」
その上で、あいつは言ったらしい。練武場でこっちの攻撃を一方的に受けると。
「何だそりゃ?」
「そうして自分が無傷なら、否が応でも力の差を思い知るだろうと……実際、やつはただこちらの攻撃や呪文を受け続け、こちらは傷一つ負わせることができなかった……その上っ、『降参なら降参でいいわよ? 今日は挨拶だけのつもりだったからこのまま帰るし』と」
「はあ?!」
実際、あのトゥースって野郎はその後何もせずに帰ったらしく、被害らしい被害はそいつが空に向けて放った極大呪文に驚いて転んだ住民がいただとかその程度だったらしいが。
「その気になりゃいつでも潰せるってことかよ」
極大呪文が放てて、パプニカの騎士の剣もあの三賢者の呪文も効かないとなりゃ、どうしようもない。にも関わらず、あの魔軍司令は言ったらしい。助っ人にダイ達を連れて来てもいいと。
「完全にこっちを舐めきってやがる」
遊んでるのが解かる言動におれは思わず拳を握りしめる、が。
「ポップ……」
「魔法使い君、そうは言うけど、そのトゥースって相手、呪文が一切効かない衣を身に纏ってて、その上ダイ君やクロコダインの技を受けても無傷だったのよ」
「なっ?!」
姫さんの言葉に驚きの声が上がった。
「そっか、知らせには来たけどこっちの情報は知らないんだよな」
もっとも知ったとすれば更に絶望するだけの情報だろうが。
◇◆◇
「……それであのトゥースって奴がパプニカに行ったと」
ここテランにバランがまた来るかもしれねえが、パプニカもこのまま放っとく訳にもいかねえ。かと言って打開策も見いだせなかったおれは師匠に助言を求め。唸る師匠へ問うた、どうすればいいんだよと。
「おれだって色々考えた、考えたけどよ……どうすればいいのかわかんねえ」
あのトゥースって奴がパプニカに居るなら、あいつとバランが揃ってテランに現れる可能性は低くなる。二人揃っちまったら勝ち目が薄いとなりゃ、パプニカを放っておいてまずバランを倒すべきなのか。
「助っ人を頼んで構わないってのは、ダイやおれたちをパプニカに向かわせたがってるようにも聞こえる」
「実際そうなんだろうよ」
「師匠?」
何故そんなことを言うのかもわからねえおれは師匠の言葉に振り向いて。
「あのマイボってヤツから話を聞いた。と言うよりもあいつが勝手にしゃべったんだがな。あいつはバランの命の恩人らしい」
「は?」
その口から飛び出してきた話に耳を疑った。
「あのおっさんがバランの命の恩人?!」
とんでもない話が飛び出してきたモンだが、師匠が言うところ、おれ達をパプニカに向かわせたがってる理由はまさにそこにあると言う。
「バランは来ねえよ。その命の恩人が居りゃ巻き込みかねねぇ戦いは出来ねぇからな。だから、あいつとおまえらを分ける必要があった。パプニカの助っ人におまえらは行くだろうが、バランがまたここに来るかもしれねえってなったらあのマイボってやつはここに残るだろ?」
「じゃ、じゃあここに残るのが正解なのかよ?」
「その時はパプニカが襲われるだろうさ。今度は何もしないなんてことはナシでな」
「っ」
つまりパプニカに向かうしかねえというこったろう。
「ただし、その場合あちらにとって一番されたくないのは、あのマイボがパプニカへ一緒についてゆくことだ。そこで思いついたんだが――」
ニヤリと笑う師匠にどことなく嫌な予感を感じつつもおれは話を聞き。
◇◆◇
「さてと、まだ時間にゃ早ええか」
視線をテランの方角から前に戻したおれ達が今いるのは、あの魔軍司令に指定した再戦の場所。派手な戦いになることを想定して先の不死騎団との戦いで荒れ地となった開けた場所が戦場に決められ。
「っ、き……た?」
不意に聞こえた着地音にそちらを見れば、立っていたのは魔軍司令ではなく、あのバランだった。
次回、最終話「死闘」に続くメラ。