ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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二十一話「修行の日々」

「修行を休みたい、ですか?」

 

 ダイがいてくれると意思疎通が本当に楽だなと思いつつ、俺は師匠に頷きを返した。

 

「えっと、メラゴースト君が言うには、『ここは友好的なモンスターがいっぱいいるので、その方々にモンスターとしての戦い方の教えを請うてみたいんです』だそうです」

「なる程、メラゴースト君はモンスターですからね。モンスターゆえの戦い方となれば、私より本物のモンスターから習うべき、確かに道理です」

 

 ましてや、モンスターからその手の方法を教えてもらうことなんて、原作知識のある俺で無ければ、この島ぐらいだと思うだろう。原作知識のある俺でも他の方法となると原作のストーリーをいくらか先に進めないと他の機会にはありつけなかったりするし。

 

「いいでしょう。それで、メラゴースト君は何を学んでくるつもりなのですか?」

「それなら、『この島には合体出来るスライムが居ると聞いたので、その方から合体や合体解除のコツを。火を噴くモンスターから火炎系ブレスのコツを習いたい』んだとか」

 

 そう、分裂するモンスターである俺として際限なく分裂できるのは最大の長所であり、同時に割とめんどくさいモノでもあった。俺が増えるのだ。百一匹メラゴーストとかになったら、オリジナルの俺がどこに居るかわからなくなったっておかしくないし。

 

「なんでも『分裂した俺が合体することでパワーアップを図れないかとか、分裂した各々の修行の成果を合体して一匹に集約したりできないかを期待してるんです』って言ってます」

「それは、なんと。もし、自分を増やして修行効率を上げられるのであれば、何倍もの速さで強くなれるでしょうし、可能であれば私でもちょっと羨ましくなっちゃったりしますね」

 

 ダイを介してであるが正直に狙いを話したため、師匠の質問はそこで止まり。

 

『では、俺はこれで』

 

 俺はぺこりと頭を下げてから二人の元を離れると件のスライム達を探しに出かける。

 

(原作通りならここから魔王の襲撃まで時間はそんなに残されてないもんなぁ)

 

 俺には襲撃までに完成させておきたいモノがあった。

 

(修行を休むことにはOK貰ったわけだし、これで密かに一人特訓することも可能だけれど)

 

 合体と分離のコツを習いたいというのも嘘ではない。ダイに話してもらった修行の効率化ができるようになれば、秘密特訓の効率も上がる。時間がないというのは事実なのだ。

 

『だから』

 

 俺は件のスライムを探し島中を走り回った。

 

『うわっと』

 

 その過程で障害物にぶつかりそうになってぴょいんと跳ね、分裂したのはまさに狙いの通り。

 

(これで捜索効率は倍、合体についても分裂した俺の誰かが会得して他の俺に合体してくれればいいし)

 

 場合によっては火の息などのブレス系習得とで人員を分けたっていいだろう。

 

『『やるぞーっ!』』

 

 すべては、ここからだ。俺と俺は声を重ねて腕を天につき上げる。

 

『『俺達の修行はこれからだ!!』』

 

 メラゴースト君の次回作にご期待ください。

 

『『って、危うく上がったテンションのまま打ち切りエンディングに持ってくところだった』』

 

 人間、ハイになるとよくわからないことをしてしまうモノである。俺は今メラゴーストなんだけど。

 

『それはそれとしてもう何度か分裂はするつもりなんで、もう一人の俺は火の息の習得を任せてもいい?』

 

 俺が尋ねれば、新たな俺ことA3は頷いて軽く腕を上げると別方向に去ってゆく。

 

『さてと、時間との勝負だ。やるぞ』

 

 こうして始まるのが師匠、勇者アバンから指導を受けない修行の日々の始まり。

 

『そう言う訳で、合体と分離のコツについて教えていただきたいんですが』

「ピキー? ピキキ!」

 

 幸いもあっさり見つかった合体スライムには指導について快諾してもらえた、のだと思う、ただ。

 

「ピーッ!」

『あ、えっと……』

 

 島のモンスター達に伝言ゲームされ、俺がキングスライムになりたいと言う歪んだ情報にいつの間にか変わっていたらしく、金色の翼の生えたスライムが指導開始その日の内に飛んできて、俺の視線は気が付けば遠くなっていた。

 

(そう言えば原作でもダイが貰った冠被って自分がキングスライムになったつもりになってたっけ)

 

 きっと自分を差し置いてキングスライムにはならせないとかそんなことを言っているのであろう、金ぴかスライムの名はゴメちゃん。世界に一匹しかいないという触れ込みのゴールデンメタルスライムと言う種のモンスターと言うことになっているが、その実は何でも願いを叶えてくれるというぶっ飛んだアイテムが友達が欲しいという原作主人公の願いで姿を変えたモノだった筈だ。

 

(このゴメちゃんに元の姿で元の場所に帰りたいって願ったら、願いはかなうのかな?)

 

 勿論、それをやるつもりはない。ここで俺が願いをかなえてもらったら、原作でこのゴメちゃんによって幾度か助けられて何とか果たされた勇者一行の大魔王討伐が詰むからだ。

 

(叶えて貰うとしたら、相応の代価は要るよな。本来ゴメちゃんが願いを叶えて救った窮地を代わりに俺が救うぐらいのことはしないと)

 

 そこまで考えて、無理という結論が即座に出た。

 

(俺はこの島に引き籠る訳だし)

 

 呪文はベギラマまで使えるようになってるが、魔王の意思の影響を受けないかどうかもまだ結局わかっていない。引き籠る理由の一つになるかもと敢えて試していないからだが。

 

『とにかく、今は合体のコツだけを――』

「ピーッ!」

『え』

 

 そして次の瞬間、俺の背からは翼が生え、身体は金色に変じ。ゴメちゃんと合体してゴールデンメタルメラゴーストになっていたのだった。

 

 ◇◆◇

 

『って、うわぁぁぁ?!』

 

 悲鳴を上げ、ガバリと俺は身を起こす。すぐさま腕を見れば、いつものオレンジ色であり。

 

『え? あ? ゆ、夢か』

 

 どうやら合体のコツを会得しようと励んでいるうちにつかれて眠ってしまっていたらしい。

 

(人だったころの自分が居たら、メラゴーストに睡眠が要るかって言うかもしれないけれど)

 

 気疲れはするし、ゲームと違って生命力が全快したりしないが精神力の方は睡眠によって回復するのだ。

 

『ベギラマぶっ放して結構精神力消耗してたし、仕方ない、かな?』

 

 しかし夢オチなんてベタなと思いつつ俺は修行を再開する。運命の日に備えるために。

 

 




次回、二十二話「奴が来る」に続くベギラマ。

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