ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「……悪ぃ、遅れた」
そんな声がしたのは、頭を振って嫌な考えを俺が振り払った後のこと。
「ポ、ポップ君……」
「い……生きていてくれたか……! ポップ!!」
その姿を認めてレオナとクロコダインが顔に喜色を浮かべ。
「へへっ、楽勝だったぜ……って言いたいとこだけどよ、殆どこいつらのおかげだよ」
ポップが示す後ろにはヒュンケルとラーハルトの姿。
「ラーハルト?! どういうつもりなの、っ!」
そこまで言いかけてバランも気づいたのだろう。
「悪いな、俺はラーハルトじゃない」
そう、ポップについていった分体の片割れであることに。俺の分体も一人一人の強さはバランにこそ劣るものの、ヒュンケルと同じかそれより少し上くらいの竜騎衆よりレベルが一回り高い。モシャスで前衛にも回れる格上二人とポップを相手にするには竜騎衆の残り二人は相手が悪すぎたんだろう。
「ポップが危なかったんでな。不意打ちに近い形になってしまったが、あのセイウチ獣人を先に倒せば、残りの一人は俺とこっちの偽ヒュンケル相手に二対一だ」
一定以上のダメージを与えればモシャスは解けるとは言え、自分と同じ強さの相手に加えて偽ヒュンケルを相手にしろなんてふざけた状況でラーハルトが勝てるはずもない。
「ぐっ」
同じ見解に至ったと思われるバランがこちらを睨むが、ぶっちゃけこの勝ち筋は俺も想像外だった。言われてみればなぜ思いつかなかったんだろうとも思えるぐらいにシンプルな答えでもあるが、バランのもう一人の我が子ともいうべき相手を俺の分体が倒してしまったという状況は気まずいというレベルではなく。
「ただ……バラン、おまえの悲劇は、ラーハルトから聞いた」
俺が居心地の悪さに身じろぎしている中、偽ヒュンケルの分体が口を開いた。原作よろしくバランを説得するつもりなのだろう。その口から語られる悲劇の内容は原作と同じで、妻でありダイの母親でもあるアルキードの王女が人間の手によって命を奪われてしまったことを話した偽ヒュンケルはバランの怒りと悲しみに理解を示した上で、だが人間がすべて悪ではないと言う。
「それはおまえ自身が誰よりもよくわかっているはずだ!!」
バランの愛した女性もまた人間であり、加えてこの世界では自身が滅ぼしたアルキード王国出身の男にもバランは命を救われている。原作とは違いバランが説得を受け入れる可能性もあるのかもしれない。俺はかたずをのんで成り行きを見守り。
「おまえは人間の最も美しい部分と最もみにくい部分を同時に見てしまった。だからその矛盾に耐えきれず、人間すべてを自分の目の前から消してしまおうと思ったのだろう、だが――」
今のバランは、俺が大魔王に人間の生存を認めさせたことを受け入れて魔王軍に留まっている。
「どういう心境の変化で人間を滅ぼさないことへ同意したのかは知らん。しかし、おまえが自分の心に折り合いをつけられたなら、次は人の心でダイに接してやるべきではないのか、バランよ!!?」
それをきっとソアラも願っているはずだと偽ヒュンケルは言い。
「……バラン! そいつの言う通りだ」
「……バラン!」
獣王がレオナが声をかける中、目をつむったままバランは暫く立ちつくしていたが、威圧感を発しつつ目を開き。
「……ならば……捨てよう! この人の心と……身体を……!!!」
片目につけていた装飾品、原作では隠し武器でもあったはずのそれを外すと握りしめ。
「おまえらがいかにキレイ事をならべてもソアラは生き返りはしない!! もう一人の我が子とも思っていたラーハルトももはや居ない!!」
叫ぶバランの拳から滴る血の色が変わってゆく。そして、おれは分体のやらかしに気づく。原作ではラーハルトに装備と思いを託されてヒュンケルは説得に望んでいたが、偽ヒュンケルは経緯をラーハルトから聞いたと言っただけで、ラーハルトがバランのことを偽ヒュンケルに託したとは言ってない。その上でラーハルトは倒しているモノだから、減少していた勇者一行へ向けるバランの敵意を継ぎ足してしまったんだろう。
「とりあえず避難した方が良いかもしれないわね」
もう竜魔人へバランがなる流れは止められない。パプニカへの被害は出来るだけ減らしたかったが、建造物の方は諦めざるを得ないと思う。
「確か――」
原作ではダイと再会したところでバランに一時的に人の心が戻り、戦い始めたら敵が全滅するまで戦い続けるという竜魔人の狂戦士的な部分にいったん歯止めがかかったはずだ。見定めるべきは、けが人の退避とかをさせるならそのタイミングしかない。
「そう」
それももう遠くない、おそらく近い未来のことになると俺は思った。
ヒュンケルの成長機会「ぐわあああああーっ!」
「ヒュンケルの成長機カイーン!」
次回、七話「心を捨てた男」に続くメラ。
ドラゴンキラーをベースにした新キャラの名前は?
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