ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

23 / 256
二十二話「奴が来る」

 

『間に合った』

 

 正直を言うと、無理なんじゃないかという思いがあっただけにそれは奇蹟だった。時間にして二日ぐらい前に分裂した俺ことA3と俺は一つの俺に戻ることに成功し、火の息と火炎の息を吐くことができるようになった。

 

(二重人格になるようなことが無かったのは、分裂してからあまり時間が経ってないからか、あちらも俺であるからかはわからないけれど)

 

 半分くらいこうなるのではと言う確信はあった。この世界、大魔王を倒して世界が平和になるかどうかは原作の話だが、本当に綱渡りだったのだ。

 

(そんな状況下で、「俺が本物だ」だの「俺がオリジナルになり替わる」だのやったらどうなるかなんてわかり切ってるもんな)

 

 足の引っ張り合いをして、それが原因で世界が平和にならなかったら元も子もない。野心を持つ分裂した俺が仮に居たとしても、大魔王の脅威が去りましたとなるまではその手の野望は先送りにするはずだし。

 

(加えて俺、オリジナルだからって理由で師匠との接触任されてるからなぁ)

 

 他の分裂した俺も例に漏れず、原作に一番近い立ち位置を押し付けてくる。俺はオリジナルなのでやむなしで甘んじてるが、自分が分裂した俺だったら、わざわざこの損な立ち位置に居ようとは思わない。

 

(まして近々魔王が襲撃してくるんだ。元魔王だっけ? ともあれ、この状況で生き延びることを考えるなら、自分の割り振られた修行を完遂して本体と合体、本体を強くするのが一番確実だろうし)

 

 分裂したまま俺に危険を押し付けて逃げるという選択肢もあるにはあるが、オリジナルの俺と間違われて魔王襲撃の場に立ちあわされるという危険性があることを考えるとリスクがでかすぎる。それに辛うじて無事だったとしても、この島でフェードアウトする俺の代わりに原作主人公の旅の仲間に誘われる危険性が高い。1倍の修行成果しか得てない状態で危険に身を置くことになるかもしれないなら、数倍の修行成果を結集したオリジナルの一部の方が安全、と言う訳だ。

 

(そもそも、秘密特訓してる俺がこの場にいないってことは、アレはまだ完成してないってことだもんな)

 

 正直、ブレスなんかよりも難易度ははるかに高く。だが、俺がこの島で引退生活を送るには絶対に完成させなければいけないもの。

 

『A、合体は?!』

 

 様子を見に行こうかとまさに俺が思った時だった、険しい表情の俺が顔を出したのは。

 

『完成した、そっちは?』

『何とかはなった、だが』

 

 元々俺の考えたことだ。言葉を濁そうが先ほどの表情と慌てて俺を呼びに来た時点で何が起きたかは想像がつく。

 

『俺達から初めての死者が出たか』

 

 突貫でこの窮地を切り抜けるための手段を編み出す、それだけで無茶なのだ。

 

『馬鹿野郎、一番危険なところは俺に押し付けるんじゃなかったのかよ』

 

 自己保身に走っている俺らしからぬ自己犠牲に、罵倒の言葉で俺は分裂した俺を悼み。

 

『A、そうじゃない。他の俺が見かけたんだが、ダイが師匠の剣で使う初歩の技をマスターしたらしい』

『えっ』

『もうわかるよね? アバン刀殺法の初歩、大地斬をマスターしたってことは、次は海破斬』

 

 どうやら俺としたことが俺の言わんとすることを読み違えていたようだが、そこまで言われればあちこちあやふやだが原作知識を持っている俺にはわかる。原作のダイはアバンから三つの技を学ぶことができなかった。二つ目の技を何とか会得した直後に師匠が以前倒した魔王、ハドラーが襲撃してくるからだ。

 

『魔王襲来が、明日?!』

 

 引きつった顔の俺に、悪い知らせを持ってきた俺が頷く。

 

『危ういところだった。たまたま別の俺が見かけなかったら、もうちょっと先だって思ってたし』

 

 もう一人の俺の言葉には同感だが、日にちを読み違えていた俺はまだちょっと心の準備ができておらず。

 

『魔王もさ、もう少し空気読んでほしいよね。何で明日? ようやく合体できるようになって修行効率あがりそうだったのに』

 

 思わず不満が口から零れ出るが、これには理由がある。分裂する時、増えた俺は精神力がMAXまで回復するという謎現象を起こすが、合体した場合精神力の残量は合体時の俺達の平均値になってしまうのだ。

 

『俺、合体用の分身作る時失敗して受けるダメージ減らそうってスカラの呪文使ってたんだ』

 

 つまり俺の精神力も幾らか目減りしていて、、ちゃんと寝て精神力を回復させて朝を迎えないと不完全な状態で元魔王とやり合うこととなる訳で。

 

『合体してふて寝しよう』

 

 攻撃力倍加呪文が使えるようになっておきたかったと声には出さず嘆いた俺は、分裂していた自分を回収して一つになると師匠達の待つであろう野営場所へと向かうのだった。

 




ちなみにこの展開ですが、秘密の特訓や合体が間に合うパターンと間に合わないパターンをそれぞれ考えてて、どっちになるかはサイコロで決めました。

(間に合わない場合、ぶっつけ本番になるだけでしたが)

次回、二十三話「覚悟を決めて」に続くメラ。


『受けてみろ、ハドラー! これが俺のメ(以下ネタバレの為自粛)』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。