ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「キヒッ、これはトゥース様」
俺の姿を見ると揉み手をしつつザボエラは自分から近寄ってきた。まぁ、次の作戦のメインに据えたのも俺で秘蔵呪文の公開によって評価を一変させると言ったのも俺なのだ。ザボエラの性格を考えれば、結果が出るか自分の身が危うくでもならない限りこういう態度で接してくることに驚きはない。
「ただいま。ニュンケルに例の呪文を伝授してって頼んでおいた件だけど」
「は、はい。バッチリですじゃ」
「そう」
ザボエラからの言葉で俺は密かに安堵する。俺の計画がうまく行くか、一応検証もしておきたいところだがとりあえず第一段階はクリアしたと見ていいと思う。
「ニュンケル」
『にゅん』
俺がザボエラの向こうへ呼びかければ、メラゴーストが一人ふよふよとこちらへやってくる。呪文の会得と練習を考えれば、モシャスに回す魔法力もなかったのだろう。だが、俺にはむしろちょうど良く。お披露目までに俺の想定した通りのことが披露できるのか確認しておきたいという理由を前に出せば、ザボエラもニュンケルを連れて行くことに否とは言えないだろう。
「バラン殿と勇者一行の戦いは終わったから、報告のあとまずニュンケルに伝授してもらった呪文のお披露目をして、ザボエラ殿メインの作戦はその後を予定してるわ。呪文のお披露目でザボエラ殿の評価を上げた後の方がメインに据えても他所から文句が出にくいから」
この場合の他所と言うとダイとの再戦の機会を全く与えられていないハドラーくらいしかない訳だが。
「ところでザボエラ殿は他に予定とかは入れてるかしら?」
ハドラーと言う名でふと思い出したのは原作でザボエラがハドラーを改造した一件だ。俺の始末を大魔王が考えて居たなら、同時進行でザボエラにハドラーの改造を命じて居ても不思議はないかと思っての問いだが。
「いえ、なぜそのようなことをお聞きになられるのです?」
「お披露目に関して検証はするつもりだけど呪文の開発者はアナタでしょ? 疑問に思う点とか出てきた時に意見を聞きに来たら『今は手が離せない』なんてことになってたら困るからよ。その後の作戦の事前打ち合わせとかでも時間がとれない状況は避けたいなってのもあるけど」
「な、なる程。それならご安心を。呪文のお披露目や先の作戦についてはバーンさまもご存知ですので」
「あー」
忙しいとわかってるところに別の用件をぶっこんでくるはずもない訳か。
「むしろ今なら、手が空いてそうな人物に割り振るわよね」
ミストバーンかハドラーかは解からないが。
「すっきりしたわ、ありがとう。それじゃあバーンさまへ報告してくるけど、お披露目も作戦も予定通りでいいわね?」
予期せぬトラブルでもうちょっとかかりますでは困るからと確認をとれば、問題ない旨の返事がザボエラから帰ってきて。
「そう」
それじゃあねと片手を上げ俺はザボエラの元を去る。
「ニュンケル」
『にゅん?』
「他の分体と合体分裂して会得した呪文をいきわたらせて。アナタが伝達するのは一人でいいわ」
文官の補佐をしてる分体達のモシャスをし直す部屋なら、分体が結構な確率でたむろしてるだろうし、スカラの呪文で防御力を上げて物理的にぺちぺちしていれば分裂もそれほど苦労はしないだろう。流石にオリハルコン製の部下を作る時間的な余裕はなくてもそれぐらいならできる筈で。
「あとはアルビナスだけど」
「おーっほっほっほ、おかえりなさいまし、トゥース様」
「ああ、やっぱり」
合流できないならバーンパレスで待っているのでは思ったが、正解だったらしい。高笑いを上げ、やたら大きな胸を弾ませて駆けてくる女王にオリハルコン製だったはずだよなぁと首をかしげたくなるが、胸部の二人はスライムのような動作で動いていたので、任意に軟化させることができたりするんだろう。そんな機能をつけた覚えはないのだが、打撃には有効そうな気がする。
「あ」
原作で戦うのがマァムだからそれを見越して拳法家殺し的な性質をもたせたんだろうか。
「どうしまして?」
「いえ、なんでもないわ」
そう言えばマァムは原作でアルビナスとの最終決戦において戦いを避けようとしたこともあったはずだ。まさか女王の希望者が多かった理由って、原作の流れになった場合休戦に同意すれば生き延びられると踏んだからなのではと、今更ながらに気づく。
「そう、ね」
生き延びたい、のんびり暮らしたいと思う俺の分体なら女王に希望が殺到するのは納得の理由だった。主人が俺では兵士の駒も成長で主人が滅んでも死なない全く独立した生物になる可能性は低いだろうし。ただ、今それに気付けたのは大きいと思う。この後部下を作る時に分体を説得しやすくなると思うから。
あかん、報告部分までいけんかった。
尚、女王が人気だった理由は今話で触れたとおりです。
次回、十六話C「報告と下準備3」に続くメラ。