ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「……来たか」
大魔王の視線が閉まった扉の前に立つ俺たちへと向く。
「偉大なる大魔王バーン様、今ここに新たなる我が部下たちをお目にかけます!」
原作のハドラーならそんな口上を言いつつ紹介したような気がするが、アルビナスのみ先行で見せているこちらは事情も異なるし、何よりそんな言いまわしの出来るようなボギャブラリーも存在しない、よって。
「はい。残る部下も完成いたしましたので――」
下手に言葉を飾っても無残な結果が待つだけと、頷いた後はシンプルに並ぶ部下をシンプルに名前を呼ぶだけの簡単なご紹介のつもりでいる。
「兵士・ヒム!」
俺が名を呼べば後方で金属の擦れる音がした。きっと敬礼とか何がしらかのポーズをとってオリハルコン製の身体の部位同士が擦れたのだろう。
「騎士・シグマ!」
「……騎士?」
「はっ、騎士です」
二人目を呼んだ時、大魔王が何か言いたげにこちらを見たが、頷いておく。どこから見ても乳牛でも素材は騎士の駒なのだ。
「僧正・フェンブレン!」
続いて三人目を呼ぶが、他の二人同様に言葉は発さない。オリハルコンボディの擦れる音でやはり何らかの反応をしていることはわかるが、振り返る訳にもいかないので、俺は淡々と名を読み上げ続ける。
「城兵・ブロック!」
最後に女王だが、女王のお披露目は済んでいるので他の面々同様に名を呼びはせず。
「これに先にお披露目させていただいた女王・アルビナスを加え、我が親衛隊となります」
「ふむ……先に見せて貰ったのでな、女王のことについてはある程度知っている。騎士の見た目はそれを流用したか」
「はい」
大魔王の言葉を肯定しつつ思う。親衛隊の中では女王と騎士が二強だと。分体の数が多いというのはそれだけで魔法力が分体三人分と言うことであり、大きすぎる胸の膨らみは近接戦闘では不利の様に見えるかもしれないが、左右の胸の膨らみは女王と同様パージして自立行動できるようになっているので実際にはそんなこともなく。加えて僧侶の修行をしていた分体の力を得た分体を注入したことで、シグマは本体も胸部も素早さを上昇させるピオリムの呪文が使えるのだ。遅くなるどころか補助呪文による素早さの上昇でオリジナルをはるかに超えた速度で動きまわることができる。
「……素晴らしいぞ、トゥース。よくぞここまでの戦力をそろえた。見事残るアバンの使徒の残党を討ち倒し世界を制圧した暁には、この地上、おまえにくれてやろう。そこにお主の言う人間どもの生存域とやらを作るのも自由だ」
「は、有り難き幸せ」
そう応じつつも、原作でハドラーに向けた言葉に近い言いまわしに、俺は大魔王が約束を守る気がないことを確信する。
「では、呪文のお披露目の準備もありますので、おれはこれで」
決戦は近い。それまでにどれだけ準備を終えられるか。切り札は検証を終え、出来ることがあるとしたら、バーンの側に侍るミストバーンとキルバーンの両者への対策くらいだろうが。暇を請い、くるりと踵を返して退室しながら俺は考える。マホプラウスのお披露目の時であれば、呪文をより強力にするための名目で文官に協力させている分体達をかき集めることは可能だが、バーンがそれを許すとは思えない。いくら大魔王に反射呪文があるとはいえ、数は力だ。そして分体もおれも見せてない切り札があるぐらいは理解しているだろう。
「うーん、お披露目かぁ」
表向きはマホプラウスのお披露目について悩んでるふりをしつつ、その実大魔王の意向を想像しつつ俺は廊下を進む。俺が反逆することを想定しているなら、マホプラウスのお披露目より前にバーンはこちらを排除しようとするだろう。
「とりあえず、ザボエラ殿のところに行こう」
「「はっ」」
揃う親衛隊の返事を聞きながら考えるのは、排除しようとするなら、大魔王がどう動くかを考える。暗殺とするなら死神を差し向けるとか何だろうが、キルバーン単体ならぶっちゃけ怖くはない。親衛隊が揃っている今、各個撃破の第一号になって終わりだろう。キルバーンの能力で恐ろしいのは聞いたものを行動不能にする鎌に仕込まれた笛の音と数々の罠、そして頭部に埋め込まれた黒の核晶。このうち黒の核晶はバーンパレス内では使えないであろうから、警戒すべきは笛の音で動きを封じられてのなぶり殺しか、対処不能な罠にかけられての死だ。ただ、なんとなくではあるもののキルバーンを単体で差し向けてくる気はせず。
「トゥース様?」
「あ、ごめん」
訝しむヒムの声で我に返った俺は軽く詫びてそのままザボエラの元に向かうのだった。
次回、二十一話C「読めない思惑」に続くメラ。