ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「どうすりゃいいんだよ……」
やるせなさを込めるようにおれはぐっと拳を握り締めた。あのトゥースって魔軍司令に自己犠牲呪文を邪魔されて気を失っちまっていたらしいおれが目を覚ましたのは、見たこともねぇ真四角の部屋の中だった。楔を連ねた様な形の鉄格子の向こうは鉄格子に近寄ればどうやら通路らしいってことがわかりはしたが、鉄格子を握った瞬間手に電撃が走って慌てて手を離したのはついさっきのこと。
「ダイは連れ去られちまうし、おまけに……」
「すまん」
最後まで言う前にヒュンケルが絞り出したような声で詫びてくる。まさか、こいつが魔王軍に捕まっているとは思わなかった。
「責められやしねえよ、おれも捕まっちまったんだ。しかも」
先生に頼まれてたメラ公まで今は同じ部屋に、いや牢屋にいる。
「プレイハードつったか、あいつ……」
フレイザードそっくりのヤツを鉄格子の向こうに見た時は、ついに死んじまってここがあの世なのかと思った。その誤解を解いていったのも、新しい絶望をぶつけていったのもプレイハードと名乗ったそいつだった。
「大魔王の居城、バーンパレス……」
ご丁寧にここがどこかを説明した上で、抜け出して下手に出歩けばまず命がないと忠告までくれやがった。そりゃ、大魔王の居城を守ってる魔物が強ええのはわかるけどよ。
「なんだよ、総オリハルコン製の勝てる敵しか狙わない掃除屋みたいなヤツって……」
一切の呪文が効かず、味方とはぐれたとか負けながらも逃げ出して手傷を負ったり弱ってるやつを専門で狙うヤツがこの居城にはいるらしく、牢から逃げられても嬉々としてそいつがリビング・ピースって同じオリハルコン製の魔物を嗾け襲い掛かって来るって言う。
「クワーッハッハッハ! まぁ、弱っちい人間にゃこのバーンパレスをうろつくのは百年早ぇってこったな……とフレイザード辺りなら言うだろうよ」
だが、とそのプレイハードって野郎は笑い方を変えて言った。
「苦境に、困難に挑むヤツは嫌いじゃねぇ。オレ自身、ハードな状況に身を置くのは大好きだしな。まぁ、立場上てめぇらを牢の外に出してやる訳にゃいかねぇが」
と。
「それにトゥース様なら……ん?」
そんで更に何か言うつもりだったらしいプレイハードは急に通路の先の方を向き。
「これはこれは、魔影参謀ミストバーンさまじゃねぇですかい」
「っ」
「ミストバーン!? ぐっ」
プレイハードの口にした肩書と名にゃ聞き覚えがあった。バルジ島でフレイザードに鎧を与え、負けて目とその周りの炎だけの姿になったフレイザードを踏みにじって消したひでえヤツだ。同じ牢の中のヒュンケルが急に立ち上がって鉄格子に張り付き、伝わる電撃に顔を歪める。
「こんな牢屋に何か御用で?」
「……そうだ。次の作戦の予定が変更になった」
「へぇ?」
鉄格子の関係で相手の様子は見えねぇおれに見えたのは、ミストバーンってやつの言葉で、プレイハードが左目の上あたりを微かに動かしたことぐらい。人間なら眉がある辺りか。
「予定の変更、なるほどねぇ。しかし、それならわざわざ魔影参謀さまが来なくても、使いっ走りの一人でも寄越してくれりゃ充分でしょうや。それに次の作戦はザボエラさまが主体の作戦の筈。作戦に直接関係ねぇあなたがここに来るってなぁどうにも腑に落ちねぇ」
「……何がいいたい?」
「お引き取りを。本当に予定変更ってんでしたら、手間ですがね……うちの大将、トゥース様を連れてもう一度お越しくだせぇ」
「ええっ?!」
さま付けで呼んでた相手を追っ払おうとしたってだけでもおれにとっては驚きだった。
「……まぁ、無理でしょうがね」
「なに?」
「あなた、いやさてめぇが従うのは、大魔王のみ。で、大魔王の意向で作戦変更があったなら、トゥース様かオレみてぇな直属のヤツを伝令にした方が話が早ぇえ。それが出来ないってこたぁ、トゥース様が魔王軍から離反したってこったろ?」
「は?」
にもかかわらず、プレイハードの口から飛び出してきた推測は更に大きな爆弾だった。
「ここは牢屋だ。そういう場所ってなぁ、囚人が逃げ出せねぇように隔離された場所に作られてることが多い。ここを含めてな。つまり、他所と隔離されたどん詰まり! 離反の情報もすぐに届かず、戦力としても分断されてる。各個撃破狙いなら誰でもここを狙うことを考えるだろうよ!!」
「離反で各個撃破って……こいつら仲間割れってことかよ」
敵同士が争う、それだけならおれらにとってはラッキーなはずだ。けど、喜べるような状況でもない。おれたちは牢に囚われ、見ていることしかできないのだから。
実はけっこう前から構想してたんですよね、プレイハードVSミストバーン。
次回、番外52C「牢の前で(ポップ視点)」に続くメラ。