ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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番外52C「牢の前で(ポップ視点)」

「クッ……ククッ……クククッ」

 

 何かできることはねえかと視線を巡らせてみるも左右も後ろもレンガの様に石材で組まれた壁があるだけ。前方の鉄格子の向こうではプレイハードが肩を震わせていて。

 

「グワ~ッハッハッハ!! ウ、ウヒャハハハハハハ!!」

「……何がおかしい?」

 

 いきなり大笑いしだしたヤツに苛立ったのか、あのミストバーンってヤツの声が壁の向こう、通路の先からした。

 

「悪ぃ、悪ぃ、こんなハードな状況が待ってただなんて思ってもみなかったんでなァ。ククク、あの魔影参謀と戦うとかとんでもなくハードじゃねぇか」

 

 ああ、そういえばなんて本物のフレイザードを思い出しちまうのは、塔で出くわしたときのあいつと重なるところがあったからか。ただ、あいつは手柄が好きな野郎だったが、こいつは違う。不利な状況に身を置かれるのを楽しんでやがるんだ。

 

「おい、新入り。お前は手を出すな。協力プレイも嫌いじゃねぇが。特上のハードプレイはソロで味わいてぇからな」

「プレイハード?」

「なんだと?」

 

 振り向きもせず緑の鎧の奴にかけた声がそれを証明してやがる。味方がいるのに一人で向かって行こうってヤツの言にはミストバーンだけではなく鎧のヤツまでが驚いていて。

 

「それにてめえにゃてめえの目的があんだろうが!」

 

 そう言いつつプレイハードはおれたちの方を見た。だが、目的なんて言われてもおれには訳が分からねえ。とはいえ、聞いても答えてくれるかどうかもわからねえ。

 

「け、けど」

「せいぜい巻き込まれないとこでオレのハードプレイを見物でもしとけぃ」

 

 おれが困惑しているうちにプレイハードは鎧の奴との会話を断ち切って、もう一度こちらを見る。

 

「てめえらも鉄格子から離れてな。囚人に何かあったらオレがトゥース様にどやされちまう」

「ポップ」

「わ、わかってらあ」

 

 こんな敵同士の戦いに巻き込まれて無意味に怪我なんてしたかあねえ。ヒュンケルの声に応えつつおれは壁際まで下がろうとして。

 

「……メラ公?」

 

 そこで漸く気が付いた。一緒に牢に入れられていたメラ公の様子がおかしいことに。確かにここまで驚きの連続だったんだ、棒立ちだったとしても無理はねぇ、けど。

 

『メラメラメラ』

「だああっ、またこれかよ! 何言ってるかわかんねぇ! おい、ヒュンケル、訳し――」

 

 そこまで言って振り返ると、目を剝いたヒュンケルがメラ公を凝視して立ち尽くしていた。

 

「は? え?」

 

 そんなに驚くことを言ったってぇのか、メラ公は。

 

「ああ、何が何だか……とにかくメラ公、下がれよ!」

 

 話がわからねえ以上、やれることって言やああのプレイハードの忠告に従うことぐらいしかねえ。シャクにゃあ触るが。

 

「さてと、待たせて悪ぃな、ミストバーンさま。じゃ、とっととおっぱじめようじゃねぇか」

 

 ニヤリと笑ったプレイハードを見てやべえとナニカが訴えかけ、おれは壁際で身を伏せた。その直後だ、プレイハードの野郎が光って大爆発したのは。

 

「っ、これはあん時の――」

 

 自分の身体の岩をバラバラにして操る技だ。フレイザードが爆発した時は自爆かと思ったんだったか。とにかく、本物が爆発した時のことを頭のどこかで覚えてて、無意識にこれが来るってわかったんだ。

 

「ぐ、やっぱキツイ……が、まぁそうじゃなくっちゃハードじゃねぇよな。受けてみやがれ、弾岩爆花散――」

「つまらん」

 

 おそらくこれから飛んでゆくであろうプレイハードの欠片にミストバーンのポツリと漏らす声が聞こえ。

 

「くそっ、とんでもねえ技最初から使いやがって……これじゃ、何が起きてるかわかりゃしねえ」

 

 伏せたままおれは漏らす。牢の外ではこれからプレイハードの破片が飛び交うはずだ。だからプレイハードの野郎の忠告自体は間違ってねえ。鉄格子の側に居たら確実に岩が身体のあちこちに当たってた。鎧のヤツに手を出すなって言ったのもこれに巻き込まない為だって遅れて気が付いた、ただ。

 

「なんだよ、技を見る前からいちゃもんたぁ器がちっさくねぇか、ミストバーンさまよォ」

「私は……前々からおまえたちが気に入らなかった」

「は? なんだァ、唐突に」

 

 戦いが始まるかと思やあ、ミストバーンってヤツはプレイハードの言葉を無視して話し始めた。

 

「他人の姿を借り、他人の技を使い、簡単に強くなることが出来ながらも……驕らず、他人の技を己がものにすべく研鑽を怠らず、どん欲に更なる力を求め、強くなる。私は、自らを鍛え強くなる者を尊敬していた……だが、そこにおまえたちと言う例外が現れた」

「へぇ、そうかい。そいつを聞いたらうちの大将はどう思うかねェ」

 

 それに感銘した様子もなくただつまらなそうにプレイハードが相づちをうって。

 

「おまえは、どうなのだ?」

「あ? オレか? んななぁ決まってんだろ! どうでもいい! そういうの考えるのは大将や他のヤツがやりゃいいんだよ! オレはなァ、今から最っ高にハードなプレイが出来るってワクワクしてんだ! 焦らすんじゃねぇよ!」

 

 おれがこっそり顔を上げると、話を向けられるや叫んだプレイハードの欠片が鉄格子の向こうで動き出すのが微かに見えた。




次回、番外53C「最高にハードに(プレイハード視点)」に続くメラ。
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