ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「さてと」
そう声に出した訳じゃねェ、心の中で呟きつつオレはここからどう動くかを考えて居た。オリジナルから得た原作知識で目の前の相手にゃ殆どの攻撃が効かねェことも肉弾戦の戦闘においては魔王軍最強だってこともわかっている。当然、バラバラになった自分をぶつける弾岩爆花散も効きゃしねェだろう。だが、それでいい。
「いくぜぇッ、弾岩爆花散ッ!」
オレの欠片が乱れ飛び、ミストバーンは申し訳程度に自分に当たりそうな欠片を伸びた爪で打ち払う。んなこたぁしなくてもダメージなどない筈だが、全く防御しなけりゃ効かねぇことをこっちに気づかれるとでも思ってるんだろうな。
「くッ、やるじゃねェか」
何のダメージにもなってないのを見ていったん合体する態でオレは欠片を集めて人型に戻り。
「フン……この程度の攻撃で私を傷つけられると思っていたなら見くびられたものだ」
「その割にゃオレの欠片を防いでたじゃねぇか」
呆れた様子のミストバーンにオレは言い返すが、わかっていた。防いでいたのは別にオレの攻撃に当たるのが怖い訳じゃねぇと。この弾岩爆花散は使用者の生命をいちじるしく消耗するフレイザードの最終闘法。使わせれば使わせるだけこっちを疲弊させられる。アイツが狙ってんのは、当たれば効果があると思わせることで弾岩爆花散を使い続けさせ、こっちが勝手にくたばること。
「つまり、てめえが防ぎきれなくなるかオレがくたばるかの勝負ってことだなァ? 面白ェ、ギリギリを攻めるハードな戦いだァ! ウヒャハハハハハッ!」
勝ち筋は有る、有るがコイツにゃ悟らせられねえ。当面はこいつの思惑に乗せられたフリで意味もなく消耗し続けなきゃならねェ訳だ。
「まったく、とんでもなく、いや、最高にハードじゃねぇか! クククッ、おらぁ、いくぜぇぇぇッ!」
モシャスが維持できるギリギリまで、踊ってやる。心の冷静な部分で機を見計らいつつ、表向きは炎のごとき熱狂でミストバーンへ攻めかかる。
「ククク、いくらてめえでもこの数の礫を延々さばききるなんざ無理だろ! このハードなプレイも悪かァねえがな」
「っ」
勝利を確信した態で、欠片の一部に伸びた爪の下をかいくぐらせ、腹部にぶつけ。
「ホラ、どうしたよ? 命中しだしたぜ? これで――」
このまま攻めつづければてめえは終わりだと、言いかけてオレは絶句した。絶句したフリをした。
「これで、どうした?」
「バカな……なんで平然としてやがる?!」
まるで動じぬミストバーンが問いかけてくれば、狼狽したフリを。
「そんな、そんな筈はねェ! 弾岩爆花散――」
取り乱しつつもう一度同じ攻撃をすればどうなるか。おそらくミストバーンはオレの心を折るために、敢えて防御せずにその身で受ける、凍れる時間の秘法で時間そのものが凍り付いた不滅の肉体ならばまともに受けてもノーダメージなのだから。
「改ッ!」
「な、に」
だからこそ、オレはこの瞬間を待っていた。
「がっ、こん、あ、あ、あぁ」
氷と炎相反する欠片を一つにして作り上げるそいつらは、オリジナルがハドラーの脇腹に風穴を開けたのと同じモノだ。それが複数。まさに消滅呪文の散弾と化したオレの一部がミストバーンの、いや若さをとどめたバーンの身体の右手首、左腕、右わき腹、顔の左半分、あちこちを食い散らかす様に消滅させてゆく。
「ぐ、お……くぅッ』
だが、それは同時にオレの一部も消滅することでもある。モシャスが維持できなくなってメラゴーストに、あちこち欠けた元の姿に戻り。
「か、身体が……バーン様の身体が」
「どっ、どうなってんだ……プレイハードが、メラ、公?」
呆然自失の態で立ち尽くすミストバーンの姿を見据えたオレの聴覚がかすれたポップの声を聞く。
『クククッ……ミッションコンプリートっつうにゃまだ早ぇが、悪くねェハードさだったぜ! 新入り、後は任した。トゥース様、大将にゃ、こう伝えといてくれや――』
満足したってな、と。そんだけ伝えておきゃ、充分だった。
『クックククッ……いやぁ、楽しい楽しいハードなプレイだがよォ、楽しいことにもやっぱ終わりってモンはあるモンだよなァ』
『プレイハード!』
牢の方から声がした、だが止まれねぇ、まだハンパなんだよ。
『ウヒャハハッ、フィナーレだッ、近接消失呪文ッ!』
呆然としたミストバーンの奴に抱きついて、オレの意識は光の中へ。ああ、本当に良いハードプレイだったぜ。
プレイハード、散る。
次回、二十三話C「帰還」に続くメラ。