ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「時間をかけられないって言った舌の根も乾かない内にあれだけど――」
ルーラによる帰還を少し待って貰い、俺は一つだけ。だが必要不可欠な小細工をする。気が進まない一面はあるものの、それはこの後のことを鑑みれば必要不可欠であり。
「ごめん、俺としてももうちょっと他に方法もあったんじゃって思うんだけど」
俺の謝罪に、身を起こした彼は頭を振った。それがバランの襲われた洞窟を出る直前の話。
「「なっ」」
「お待たせ……それじゃ、ダイちゃんのことお願いねぇん?」
バランとクロコダインの両者から注がれる驚きの視線をさらりと流し、俺はバランにいきましょと声をかけた。ここから先の同行者はバラン、親衛隊、そしてもう一人。大魔王と事を構えるに必要不可欠の人材を加え、俺は瞬間移動呪文を唱える。
「ルーラ」
と。キルバーンがバランを襲った時点でこれまでの関係は壊れたも同然、俺も敵とみなしたなら、バーンは居城に魔力で障壁を張って引きこもる可能性もある。
「アタシたちが締め出されたままあっちの分体が全滅させられるのが最悪のケースね」
その場合、牢に入れられているポップとヒュンケルの生存もほぼ絶望的になる。ミストバーンは原作でヒュンケルを自身のスペアボディとみなしていたので、ヒュンケルの肉体だけは助かる可能性があるが、身体だけ無事でもどうしようもない。
「間に合ってくれ」
時間を取らせて出発を遅らせた俺にそんなことを言う資格はないかもしれないけれど、声には出さず心で呟く。呟きつつ大魔王ならどう動くかを考えてみるが、文官のヘルプに動いてる分体達は数が多いので俺なら後回しにする。数が多いが故に始末に一度に全滅させるのは難しく、逃してしまえば他の場所の分体などに襲われたことを伝え迎撃態勢を整えられる可能性もある。それなら、数の少ないところから逃さず各個撃破してゆく方が堅実であり。
「ミストバーンとハドラーか……」
「その二人がどうしたのだ?」
「あ、ううん。『大魔王がアタシたちを敵に回したなら、他に動かせる戦力は』って考えてただけ」
これにあのオリハルコンのチェスの駒の王と城の動力炉に太鼓の魔物も居たか。ただ、太鼓の方は動力炉から動かせないであろうから、チェスの王駒を含んでも戦力は三つ。ザボエラも寝返る可能性は高いが、そういう意味合いではニュンケルをザボエラのところから回収できていてよかったと思う。未だザボエラのところに居たなら、ニュンケルが真っ先に始末されていたであろうから。ともあれ、死の大地についたことで俺達は着地し。
「おそらくだけど、バラン殿の次に狙われるのは、牢に居るプレイハードと捕虜三人、そして新入りの一人」
牢の前の狭い通路は大人数を展開するには向かないので、配下を連れたチェスの王駒が出てくることはないとすると、ハドラーかミストバーンを差し向けると考えた方がいい。
「ミストバーンが本気を出してなければ、アタシたちが駆けつけるまで凌ぐくらいはできる筈」
あのドM分体ことプレイハードのことだ。嬉々として時間稼ぎをするんじゃないだろうか。モシャス元が死亡し、変身先をフレイザードに絞ってしまったからか、オリジナルである俺とキャラがかけ離れて行ってしまってる気がしなくもないが。というか、変わってなければ俺がドMってことになってしまうので、やはりあの分体だけ例外的に変身先に引っ張られてるとかだと思いたい。
「ならば、急がねばならんな」
「そうね、時間を浪費させてしまったアタシが言えたことじゃないけれど」
原作知識があるからこそ知っているが、凍れる時間の秘法がかけられた最盛期の大魔王の身体を操るミストバーンは魔王軍最強。消失呪文くらいしか通用する攻撃は存在せず、それもはじく技をミストバーンは持つ。正確に言うなら身体の持ち主である大魔王の技だが、それはこの際どうでもいい。捕虜に囮になって貰うという当初の予定は狂うが、今は一刻も早くプレイハード達と合流し、一塊になって行動するしかない。場合によってはポップ達にもある程度打ち明けた上で行動を共にしてもらうことも考慮すべきだろう。
「よかった、まだここは通れそうね」
いつも使っていた裏口に近づいて侵入を拒絶されないことにホッとする。ひょっとしたらバランを暗殺しに行ったキルバーンが帰還してくることを想定してのことかもしれないが、それが俺達を通すことになるのだとしたら、皮肉なことだけれども。
主人公のした小細工とは?
次回、二十四話C「ミストバーン」に続くメラ。