ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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二十七話C「どうしよう、その一言に尽きた」

「とりあえず、場所を移しましょ」

 

 分体はともかく文官の皆さんの前で打ち明け話は拙い。そして分体達と合流する為に足を運んだのだが、分体全員を連れだせば文官の反発は必至。なら、事情説明の間だけは文官を手伝うままで居て貰おうと決めて俺はそう提案する。ちなみにこれは時間稼ぎの側面もある。

 

「どうしよう」

 

 今の心境を言葉にするなら、まさにそれだ。これから俺達は大魔王との決戦に臨むわけだが、それを話せばポップ達が参戦を希望することは充分ありうる、現状のレベルでは完全に足手まといでしかないにもかかわらず。

 

「……ラゴウ」

 

 悩んだ俺はヒュンケルの近くにいた元ドラゴンキラーを呼ぶ。ポップ達に説明をした者が居るとしたらもう一人の分体の可能性もあるが、あちらはモシャスしないと人の言葉が話せない。一手間かかることも加味すれば、ヒュンケルの元部下である分体が注入されたラゴウが説明していたと考えた方が自然なのだから。

 

「どこまで話したのかしら?」

 

 ポップ達には聞こえない程度に小声で俺は尋ね。

 

「……私が元ヒュンケル団長の部下であること。そして、鏡面衆がメラゴーストなのは隠しようがありませんでしたから、事情があって分体がこちらに居ることまでは」

「そう」

 

 答えを聞いて俺は胸中で唸る。モシャスの使えるメラゴーストがホイホイいるような世界ではない。俺の分体が魔王軍に所属していることがバレてしまったのなら、俺の正体を隠すのも厳しい。

 

「バランに話したのに修正をちょっと加えたモノを話すしかないか」

 

 モシャスの為の部屋へと無言で通路を進みつつ出した結論がそれで。

 

「……とりあえず、話はこの中で。キルバーンと親衛隊のみんなは外で見張りをお願いね」

 

 全員入るには手狭な上、ポップ達を下手に警戒させてしまうが故に部屋の前まで来たところで俺はそう指示を出す。分体の注入されていないキルバーンは当然として、オリハルコンの駒に注いでしまったデメリットとして親衛隊も合体分裂による情報のやり取りができないので、かやの外に置く形になってしまうが、仕方ない。

 

「さてと、どこから話そうかしら……そうね。そこのバラン殿は一部ご存じだけれど、アタシが魔王軍に入った経緯からがいいかしらね」

「魔王軍に、か」

 

 元魔王軍の軍団長故に思うところでもあるのか、呟いたのはヒュンケル。

 

「ことの始まりはそこのバラン殿が勇者アバンの故郷、カール王国に侵攻したことに端を発す……その時アタシはカール王国を守ろうと動いていたのだけど、バラン殿を撃退したこ」

「は? ちょっと待てよ、先生の故郷を守ってた?! しかもバランを撃退?!」

「そうよ。大魔王バーンは強さを尊び、猛者であれば種族や所属陣営を問わず勧誘する人物なのよ。魔王軍最強と言われてた超竜軍団とその団長を退けたのだもの、自軍に欲しくなったんでしょうね」

 

 その結果、キルバーンが大魔王の意を受けて勧誘しに来たことを俺は明かし。

 

「カール王国は超竜軍団を退けたとはいえ被害を受けてたし、ヒュンケルちゃんならある程度知ってると思うけれど、魔王軍はそれまでの拠点をバカでかいゴーレムみたいな形態に変えて死の大地までのお引越しの最中」

「バカでかいゴーレム?! そうか、あの足跡は――」

「そういうこと」

 

 当時の光景を思い出したのか顔をあげたヒュンケルに俺は頷き。

 

「アタシが勧誘へ首を縦に振らなかったら、消耗してたカール王国に動く本拠点付きで残る魔王軍が押し寄せてきてたでしょうね。そういう訳で、断ることも出来なかったアタシは魔王軍入りするんだけど、せめての抵抗にと条件を出した。『人間の生存権をくれ』ってね。魔王軍は人間根絶の方向で動いてたから、人の被害に歯止めをかける意味でもこれは譲れなかったんだけど――当時大魔王は人間を滅ぼすことでバラン殿との協力を取り付けてたから、アタシの条件を呑むのも拙かったのよね。そのためにバラン殿に人間を滅ぼすことを思いとどまってもらえるよう説得する必要が出てきて」

「……それで、こっちのバランは人間を滅ぼすのを止めたって訳か」

 

 俺の話を聞いていたポップがちらりとバランを見る。バランの方は動じずただ腕を組んで黙したまま立っていたが、こっちの説明に肯定も否定もせず。

 

「話を続けるわ。バラン殿はアタシに撃退された時深手を負って行方不明でもあった。そのバラン殿を説得し、連れ帰った功績でアタシは魔軍司令に任じられ、新任だからこっちが引継ぎとかいろいろしている間バラン殿に勇者一行の威力偵察をしてもらったの」

「……威力偵察だあ?」

「そうよ、バラン殿の生き別れたお子さんがダイちゃんだって判明して、バラン殿もダイちゃんを殺すわけにはいかなかったから、どれほどの脅威か確かめ、勧誘によって味方に引き込めないかも試すという名目でアナタ達と接触した」

 

 俺の言葉をオウム返しに口にしたポップに俺は肯定を返したのだった。

 




次回、二十八話C「話は続く」に続くメラ。
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