ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「魔王軍には正直アタシも戦いたくないような猛者とか厄介な相手が複数居たし、内何人かは健在なのよ。……こう、アタシが言うのも何なのだけれど、その内何人かが本気でダイちゃん達を倒そうとしたら全滅は必至。だから、バラン殿に戦ってもらってそう言う相手とぶつかるのを遅らせようとしてた訳、同時にアナタ達が成長してくれれば簡単には全滅しなくなるかなってのもあったんだけど」
勇者一行の成長を期待したこの目論見は残念ながら失敗に終わったわけだけれど。
「ちょっと待て、色々引っかかるところもあるけどよ……おまえが戦いたくないような猛者?」
「ええ。一人はそこのバラン殿ね。竜魔人になったときの強さはもうご存知だと思うけど……あ、ヒュンケルちゃんは知らないわよね」
そう言えば原作と違ってバランと戦う機会がなかったなと俺は今更ながらに思い出し。
「いや、確かに知りはしないがハドラーを押しのけて魔軍司令の地位にある者が戦いを避けたがるという時点でとてつもない強さだということぐらいは解かる」
「そう……そう言ってもらえると助かるわ。それで、他の猛者や厄介な相手なんだけど、猛者の方は大魔王バーン当人ね。もう一人居たのだけど――」
「もっ、もう一人ぃ?!」
「安心して、そいつはもう死んでるから。魔影参謀ミストバーン……魔王軍最強らしいわよ。純粋な戦闘力だと普通にアタシより上ね」
淡々と告げたつもりがどうしても声が震えてしまう。
「何だと?! ミストバーンが?!」
原作でも伏せる必要がなくなるまでは伏せられていたことだ、もう一人の師の衝撃の事実にヒュンケルが目を見張り。
「……厄介な方は二人かしら。そうね、一人は今味方だし、連れてくるわね」
プレイハードのことには触れたくなくて、未だ驚き冷めやらぬヒュンケルを残し、俺は部屋の外に出る。
「キルバーン、ちょっと中に入ってもらってもいいかしら?」
「おや? ボクをご指名かね?」
「ええ。あなたのアレも説明しておいた方が良いと思うのよ」
要請に首を傾げた死神に俺はそう理由を述べた。
「ああ、まァ、確かに取り扱いに注意しないといけない品だしねぇ」
「でしょう?」
黒の核晶。大陸一つを消し飛ばせる威力の超爆弾であり、俺がキルバーンの人形だった現キルバーンに分体を注入しなかった理由の一つがそれだ。と言うか、爆弾を仕込まれた人形と一体になってくれなんて頼んだところで首を縦に振る分体は居ないだろう。もっとも、人形を確保して現地で禁呪法を用いたので、注入できる分体も案内してくれた者以外存在していなかったという理由もあるのだが。
「お待たせ。彼がその厄介な相手よ」
「やあ、ボクはキルバーン。口さがない人は死神なんて呼ぶこともあるけどね。ご紹介に預かった厄介な相手さ」
部屋に戻った俺はお道化た挨拶をする死神に問うた。アレを起動させず仮面を外すことはできる、と。
「もちろんさ。この仮面はコレクションの一つで他にもいくつか仮面があるからね」
そう答えが返ってきて、ああ愚問だったなと原作知識にも仮面を変えるシーンがあったことを遅れて思い出す。
「じゃあ、見せてもらえるかしら?」
「おおせのままに」
かしこまってキルバーンは仮面を外し。
「そっ、それはまさか!!?」
仮面を外したキルバーンの顔を見て顔色を変えた人物が一人。バランだった。
「そう、邪悪な魔物たちすら恐れるという地獄の火種。黒の核晶だよ、バラン君」
「黒の核晶? 何だよそりゃ?」
「バラン殿はご存知みたいだし、説明をお願いしてもいいかしら?」
無論ダメならこちらで説明するつもりで話を振れば、顔をこわばらせつつもバランは頷き。
◇◆◇
「ばっ、爆弾だってぇ!!?」
「……そうだ。黒の核晶と呼ばれる魔界の超強力爆弾……! いや、爆弾と呼ぶのすら生ぬるい悪夢の兵器だ!!」
すっとんきょうな声を上げるポップにバランは肯定を返し。
「ちょ、ちょっと待てよ何でそんなことわかんだよ!?」
「かつて一度、魔界で見たからだ」
慌てた様子でキルバーンの顔面とバランの顔へ視線をあわただしく往復させるポップにバランは答え、説明する。内容からすると原作でハドラーの体内から露出したコアを見たバランがダイに説明したものとほぼ同じだったと思う。以前魔界で冥竜王ヴェルザ―と言う竜王と戦った時に一度使ってきたこと、大まかな製造方法、そして、使われた結果大陸ごとすべて吹っ飛んだこと。
「その後私に倒されるまで、さしものヴェルザーも二度と黒の核晶を使わなかった」
「そうそう。そして、二度目がコレって訳さ」
語るバランに相づちを入れつつさらっと爆弾を投げ込むのを目撃して、俺は思わずキルバーンの方を見る。確かに頭が爆弾ではある訳だが、発言まで爆弾なのはどうなのだろう。
「なっ」
「ボクの主人はバラン君の言うヴェルザーさまに仕えていてね。バーンさまのところには協力者として出向いてたんだ。まァ、その主人はトゥースさまが倒してくれて、晴れて自由の身になったボクはトゥース様に忠誠を誓って今に至るんだけどね」
驚くバランの顔を見てキルバーンが少し楽し気なのは、腰斬されたのを根に持ってたりするんだろうか。
次回、二十九話C「かくかくしかじかで終わるなら」に続くメラ。