ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「……ニュンケル」
きっと犠牲になってくれたんだと思う、俺たちの緊張をほぐす為の。
「あいつと比べるとあまりにもアレだとか……そんな風におちゃらけて名前を出せる程、吹っ切れてはいないけど」
気を紛らわせようともしてくれたんだろうか、ニュンケルは。
「『ありがとう』でいいよね?」
きっとそれ以上を、ニュンケルは望まない。独言のように俺は漏らし、進む先は、天魔の塔。今は死の大地に埋もれているが、らせん状の階段が絡みつくことでまるで角のようになった円錐が円盤を貫くような構造をした塔はバーンパレスの中心に聳えている。俺達はこれからそこに行くのだ。
「ニュンケ」
『勝手に殺すなにゅう゛ぅぅんッ!』
そして、もう一度名を口にしようとしたところで、メラゴーストが一体俺を追い越した。
「ニュンケル!」
『はぁ、はぁ、はぁ……本物の攻撃、割と本気だった気がするにゅん。ピオリムで加速しなかったら当たってたかもしれないにゅん』
息も荒くしながら振り返るのは、本物ンケルが追いかけてくるのを警戒しているのか。
「っ、そこか!」
「あ、待って!」
そこへ案の定現れた本物へ俺は声をかけて制止する。
「何故止める?!」
「いや、怒るのは無理もないんだけど……こいつ、一応大魔王戦の要だからさ」
一応マホプラウスを会得した分体は複数居るものの、ニュンケルが会得は一番早く、慣れて居るはずなのだ。合体分裂で記憶と一緒に伝授したので、どんぐりの背比べ程度の差でしかないかもしれないが。
「だから、ここで消耗させるのはちょっとね」
ニュンケルには秘策にして切り札を使って貰わないといけない。
「って、あ゛」
そして、ニュンケルの役目に意識を向けた俺はごくシンプルな結論に至って顔を引きつらせる。
「今度は何だ?」
「あー、えっと……ヒュンケルには大魔王との戦いで秘策を行使するニュンケルの護衛をして貰いたいな、って」
俺がニュンケルに使わせる予定のマホプラウスは術者に呪文を集め自分へ向けられた魔法の魔法力を増幅、自分の呪文に上乗せして放つ呪文であり、分体の殆どがニュンケルへの呪文行使に回る。つまり、護衛に割けそうな戦力がバランとヒュンケル、キルバーンにポップしかいないのだ。
「バラン殿やキルバーンも居るには居るんだけど、バーンが急遽戦力をかき集めた場合、あの二人で押さえきれるかわからないし」
バランは竜魔人と言う形態もあるが、アレは敵が全滅しないと止まれない狂戦士のようなもの。味方を攻撃することはないと思いたいが、敵を倒すことに意識を割くあまり、こっちとの連携が全く取れなくなる恐れもある。
「……わかった。おまえが居なければこの場にくることさえ叶わなかったであろう身だ。だが、大魔王を討ち倒す所に居合わせることができるかもしれんのだ……オレはおまえに従おう」
「ヒュンケル」
「それに弟弟子の頼みでもあるしな」
そう続けられると俺は何も言えず。分体や親衛隊と共に先へと進む。塔のふもとに至り、螺旋に塔へ絡む階段を上って、上へ上へと。原作ならバーンが階段を上るダイにゆさぶりをかけてきた筈の場所でもあるが。
「それもない、か」
呟きつつ次に気にするのは塔の内側。魔力炉と呼ばれる半生物の触手を持つ生きた動力炉がそこには居るはずであり。原作では大破邪呪文で大魔王からの魔法力の供給を断たれ、飢餓状態に陥った魔力炉が魔法力を求めてダイに同行していたレオナを襲ったのだ。もっとも、現状ではバーンの魔法力供給が途絶えて居ない筈なので、飢餓からこちらを襲っては来ないだろうが、純粋に戦力としてこちらに嗾けてくる可能性は残っている。
「みんな、気をつけて。この階段の上じゃ逃げ場は殆どない」
魔力炉の件など関係なく、奇襲の恐れがあるかもと言う態で俺は振り返って同行者に警告し。
「確かに、足を踏み外してもトベルーラでどうにかなる私は良いが」
「ヒュンケル君は緊急時に落下を免れる手段がないものねェ」
バランの言葉を継ぐ形で本物ンケルをキルバーンがちらりと見る。
「ところでキルバーン、この辺りに罠は?」
「幾つか仕掛けてあるよ。そうだね、敵が奇襲して来るようであれば使わせて貰おうかな」
「……何と言うか、味方に回すと頼もしいな」
敵は罠を警戒せねばならず、逆にこちらはほぼ気にせず進むことができる。これはかなり大きく。
「じゃあ、行こう。あの円盤みたいなとこにバーンは居るはずだ」
俺は前方に向き直って、再び階段を上り出すのだった。
次回、三十二話C「秘策2」に続くメラ。