ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
『ようやく陸地か。島以外で最近外に出てる間の記憶って船上が多かったからこう広い陸地を見ると解放感を感じるよなぁ』
足が無い俺はふよふよと浮きながら、なので降り立ったと言うのも変な気はするがともかく、デルムリン島から海を渡り、ロモス王国のあるのラインリバー大陸への上陸を果たした。
「――だって」
本来なら、理解されない俺の言葉もダイがいてくれるからこそ通訳されて兄弟子に伝わり、気楽なもんだぜとか呆れられても俺は構わず、現実から逃避しつつ原作でしか知らない新たな大陸での旅に胸を膨らませ。
◇◆◇
『ると思ってたんだけどなぁ』
俺は一人ぼっちでポツリと呟いた。
『今頃ダイとポップはロモス手前の森で迷子になりつつ、近くの村の子供を魔物から助けてる辺りかな?』
原作の記憶を思い出しつつ今俺が独り言を続けるのは、黒い魔法の筒の中。
「メラゴースト君の傷は治ってると思うけど、体力まで戻ってないかもしれないしさ」
「デルムリン島のじいさんや一部の魔物とロモスの人達には面識があるとはダイから聞いてるが、説明なしで人目についても拙いことになるしな」
しばらく筒の中でおとなしくしててくれと、ポップに言われた俺はデルムリン島を出たときからほぼずーっと魔法の筒の中で缶詰にあっているという訳だ。これじゃ、二人が今どこで何をやってるのかが全くわかりゃしない。
『まぁ、下手に原作を曲げずに済むし、原作だと三人目の仲間との出会いもあったからこの方が都合がいいんだろうけれど』
確か、村の子供が魔物に襲われてるのを撃退しようとしたダイたちの詰めが甘く、魔物の反撃を受けそうになるところを後の新たな仲間である少女に助けられるのだ。名前は確か、マァム。俺を含むダイたちと同じ師匠の弟子で、俺達より先に師匠の教えを受けていたから姉弟子と言うことになる。
『最初の出会いが魔物との戦闘中だもんな』
俺が居合わせたら村の子供を襲おうとしてた魔物の仲間と勘違いされて一緒に攻撃されてることも考えられるから、筒の中にいることに不満はない筈なのだが。
『こう、完全に話から置いていかれた感が』
デルムリン島に引き籠れると思ったら旅の仲間にされて現実逃避してたら、こんどは筒の中に引き籠り。このまま出番なく筒の中にいられるなら、安全なようにも思えるものの。
『綱渡りな旅についていってる時点で安全なはずがないって話だよなぁ』
とはいえ、瞑想と考えること以外何も出来そうにない今の俺にできることと言えば、原作の知識を掘り起こして今後の流れをおさらいしつつ、どのタイミングで外に出されても大丈夫なように覚悟を決めておくことぐらいか。
『俺の出番があるとしたら、新たな仲間とかの顔合わせか、少しでも戦力が欲しいとき、もしくは想定外のタイミングかな』
俺は魔法の筒に居るので、想定外のタイミングで出されることがあるとしたら、手に持った誰かがうっかり、もしくはこの魔法の筒を持ったダイとポップ以外の何者かが意図して筒から解放した場合。
『もしくは筒自体が破壊された場合、かな? と言うか、この筒、中身がある状態で破壊された場合、中身って外に出されるんだよな?』
筒ごとぐしゃっと行くとかは勘弁して欲しいが、原作で中身のあるまま筒を破壊された描写を見た覚えがない俺にとってそれは未知数であり。
『まぁ、いいや。怖い想像は後回しにしよう。破壊されると限ったわけじゃないし。って、いやいや、大丈夫大丈夫』
口に出してから、すぐにこれはフラグじゃとも思ったが、俺は頭を振って筒を破壊する様な敵との遭遇はあったとしてもはるか先だと誤魔化し。
『えーと、原作だとマァムとの出会いの時に確かポップ達は荷物を置き忘れて、ゴメちゃんと一緒にマァムに荷物が回収……あ゛』
すぐに原作の流れをたどって固まることとなった。魔法の筒の中にいるということは俺は今、荷物と一緒にマァムに回収されている可能性があるのだ。
『魔法の筒についての知識がどれぐらい広まってるか……普通に考えればマァムの故郷ってそれほど大きな村じゃなかったような気がするし、キーワードを誰かが口にして解放されるような恐れはない筈なんだけど』
マァムの両親は魔王討伐をなした師匠の仲間の戦士と僧侶なのだ。加えてこの村の村長はある程度の呪文が使える人物だった筈。
『知識があればこそ、やすやすと筒の中身は開放しないと思うけど』
村の子供が話を聞いて好奇心から、何てオチは充分ありうる。
『ゴメちゃんはまだいい』
原作でも村の面々に見つかっても無事だった気がするから。きっと、人畜無害そうなあの外見もあってのことだろうが。だが、オレは違う。オレンジ色の人魂で、悪いモンスターじゃないよなんて言い訳は一切通じなさそうである。
『加えて俺の言葉、ダイの通訳が無いと伝わらないしなぁ』
マァムが俺のぶら下げてるアバンのしるしに気付いてくれる可能性が微量にあるかもしれないが、ほぼ逃げるより他になく。
『え』
「え」
不意に外に吐き出された俺が呆然としつつ立ち尽くす視界を埋めるのは、人、人、人。
『ちょ』
「わっ?!」
「今度はメラゴーストだ!!」
今度はと言うことは、ゴメちゃんはきっと見つかった後なのだろう、が。
(薄情かもしれないが、そんなことを言ってる場合じゃないッ)
視界の端でこっちに銃っぽい武器を向けるピンクの髪の少女が見えて俺は自分がすさまじく拙い状況にあることを理解していた。
『くそっ、ルーラッ!』
逃げようにも周囲を村人に囲まれていてはどうにもならず、空いて居るのは真上のみ。周辺の地形を強く心に刻み込んでから俺は瞬間移動呪文を唱えるのだった。
旅の仲間からメラゴースト君が抜けて、パーティーは原作通りに戻る筈、やったね?
次回、二話「まさかの事態」に続くメラ。