ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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二話「まさかの事態」

『やっちまった』

 

 へにょりと届かぬ腕で頭を抱えようとしつつ俺が降り立ったのは、デルムリン島の浜辺だった。師匠がマホカトールの結界を張った場所であり、たぶんダイ達が船で海へ漕ぎだしたのもおそらくここだろう。

 

『どうするかなぁ……ダイ達が村につけば誤解は解いてくれるかもしれないけれど』

 

 タイミングが読めない今、早く引き返し過ぎると村人やマァムに襲われる恐れがある。

 

(確か、原作だと村で一行は一泊してたはず)

 

 故に一日この島に留まってからルーラで合流を果たすでもいい気はするのだが。

 

(原作だと魔王軍の幹部がこの島にやって来てダイの育ての親のきめんどうしことブラスじいちゃんが攫われるんだよなぁ。そして別の幹部との対決の時に人質兼戦力として使われる、と)

 

 もし一日待った結果、その幹部と出くわしたら更に拙いことになる。幹部と出くわしてブラスをなすすべなく攫われればダイの俺に抱く心象は悪くなるし。かと言って、誘拐を防げば原作の流れを大きく歪める。

 

(代わりに俺が攫われる? いや、それは更に不味い)

 

 魔王の意思とやらで俺が敵側に回ってダイ達に近接消滅呪文をぶちかますと言う最悪のパターンもありえてしまうのだ。

 

(このしるしナシでも魔王の意思の影響を受けないのであれば、話は別なんだけど)

 

 操られてるフリをしつつ原作のブラスの代わりができれば流れを原作の方へと修正はできるが。

 

(試すのも綱渡りなんだよなぁ)

 

 試してみて魔王の意思の影響受けちゃいました、じゃ俺はもう自分の意思とは関係なく原作主人公と敵対することになってしまう。

 

(入れ違いになるつもりですぐにここを立つ……ってのもなぁ)

 

 俺の印象に残ってる場所と言うと、師匠と最初に会ったあの偽たき火の場所か、最初に海を渡った砂浜、ランタンの中で見たパプニカの国の村や町、そして城下町となる。

 

(ギルドメイン大陸、先生と会った場所は没だな。あそこには分裂した俺が居るかもしれないから気がかりではあるけれど)

 

 魔王の意思を受けて凶暴化していた場合、俺と全く同じ思考をしたメラゴーストの集団に襲われる恐れがある。

 

(パプニカの各地は、些少なりとも呪文の使える俺が行けば魔王軍から受ける被害を軽減させることはできるかもしれないけれど、うん)

 

 人間側から味方と見なされる筈もなく攻撃されるだろうし、雑魚はともかく敵の軍団長と出くわした場合、俺では勝てる気がしない。

 

(加えて、俺が敵だってことは魔王軍には広まってるだろうしなぁ)

 

 そのつもりはなかったとはいえハドラーに深手を負わせたことをダイ達から聞かされたときには俺は気が遠くなったのを覚えている。魔王軍に目を付けられたのは間違いないだろう。

 

(あちらから見た脅威とは言え、モンスターなわけだし、魔王の意思の影響を受けたら味方になるのではとあちらが考えてくる可能性もありうるけれど)

 

 やはりここらで魔王の意思を受けて凶暴化するかどうかは確認せざるを得ない。そう結論を出して俺は走り出す。

 

『うおおおっ』

 

 主目的は何かにぶつかりかけた時の分裂ともう一つ。

 

『どこだーっ、キャットフライッ!』

 

 呪文を封じて使えなくする呪文の使い手であるモンスターの確保である。魔法使いとして修行をしてきた俺は敵に回せば呪文こそ厄介だが、これさえ封じてしまえば役立たずに早変わりする。

 

(分裂した俺二人で実験台の俺と腕を繋いで、実験台だけ外に出せば――)

 

 凶暴化した場合二人の俺で実験台の俺を結界の内側に引っ張り込めばいいのだ。もっとも、この実験をするにはマホトーンの使い手が必要不可欠。俺が使えない以上、この島で使い手を確保する必要がある訳だ。

 

(原作だと偽勇者の呪文になすすべなくやられてた印象があるから、呪文の封じ手がこの島に居るかは微妙なところだけど)

 

 偽勇者に襲われたとき、島の魔物達はだまし討ちの形で攻撃されていた。使い手がいても不覚をとっていた可能性はある。

 

(と言うかちらっとどこかのシーンで見た覚えがあるんだよなぁ)

 

 アニメか漫画だったか定かではないが、色違いだと別のモンスターになってしまうことを考えると、俺の記憶にあるのはアニメ版か。

 

(魔王の意思を受けて凶暴化した時に同士討ちでやられて無ければ、今もどこかに居る筈……ん?)

 

 そこまで考えてふと思う。むやみやたらに探し回るよりもこの島の長老格であるブラスに話を通して居場所を教えてもらうなり呼んでもらえばいいのではないかと。

 

『そも、ここに立ち寄ったのに何も報告しないのも不義理だもんな』

 

 探しモンスターのことはさておき、すぐ戻れない状況でもある訳だし、立ち寄ったなら挨拶と報告くらいはしてしかるべきだろう。

 

(ブラスを誘拐して人質に使ってたのってロモスの城での決戦の時だから、今のタイミングならまだ例の魔王軍幹部はここにきてない可能性も高いし)

 

 そもブラスが攫われたなら、島だって騒ぎになってるはずだ。逆に入れ違いになるなら今がチャンスかもしれない。

 

(確認しなきゃ次の行動も決められない。今は勇気を出そう)

 

 俺の原作知識が確かなら危険もまだ少ないのだ。俺は方向を転換するとブラスの家に向かうことにするのだった。

 




次回、三話「なるほどのう、ならば」に続くメラ。

あれ? これのんびりして行きなされッて言われる流れ?
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