ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「ダイが誤解を解くまでこちらに暫し滞在していきなされ」
きっと俺の説明が拙かったんだと思う。原作知識で知っていたとは言えないものだから、ダイ達が荷物をどこかで落としたかなくしたかして荷物と一緒になっていた俺は見知らぬ村で解放されてしまったと再会を果たしたきめんどうしに打ち明けた後のこと。
(いや、荷物を失くしたなら探し回って村には行きつくだろうし、そこから誤解を解くまでに時間が必要だろうと考えるのは、わかるよ)
誤解を解いた後ならルーラで戻っても攻撃はされないだろうし、その時ダイたちが旅立っていれば、拾ってくれるのをその村で待てばいい。つまり、些少遅れても誤解を解くより先に件の村に戻るよりはいいという判断なのだとは思う。原作知識が無ければ、何日で誤解が解けるかなんて指針も立たない訳だし、言ってることはきっと正しい。
(けど、ここでのんびりしてると魔王軍の幹部が来ちゃうんですが)
ダイの兄弟弟子であるからこその好意もあって滞在を勧めてくれたんだろうが、勝手ながら俺は全力でご遠慮したいところだった。
『お気持ちはありがたいんですが、師匠と旅をしてきたパプニカの国の方も気になりますし。俺はルーラでパプニカにも飛べますから』
ひょっとしたらダイ達は失念していたのかもしれないが、ロモスのことも気になって俺にルーラでいける場所を増やすためにまずロモスに向かったということも考えられる。
(原作だとポップが瞬間移動呪文を覚えていなかったから近いロモスに向かったとも考えられるし)
パプニカには俺が居ればすぐにでも向かえると考えたなら、ロモス行きも間違ってはいない。
『とにかくそう言う訳で、俺は自分がこのしるしナシでも魔王の意思の影響を受けるかを確認してからパプニカに向かいたいんです』
名目上は偵察として。実際は魔王軍の幹部との鉢合わせを避けるためにだが。
「魔王の意思の影響を受けるかどうかの確認ですと?」
『ええ。思い返してみたんですが、魔王軍の偵察隊のガーゴイル。あれもモンスターの筈ですが、マホカトールの発動する前の島の皆さんと違って、理性は失っていなかったように思うんです』
魔王軍のモンスターだからという可能性もあるが、原作では魔王軍から離反した魔王軍幹部だけでなくそれ程強くないにもかかわらず魔王の意思の影響を受けて居なかった魔物も居るのだ。流石に原作知識云々を話すわけにもいかないので、理由としては苦しくなったが、そもそも今の俺が安心して外に出られるのはポップ経由で渡された俺専用のアバンのしるしがマホカトールの効果を持つからこそなのだ。
『何らかのアクシデントでこれが外れた時、ダイ達の敵に回ってしまう可能性が高いのは解かってますが――』
念の為に確認しておきたいと俺が言ったとしても、不自然さは何もない。
「むぅ、気持ちはわからんでもない。じゃが、こんな夜更けで無くても良いのでは?」
『えっ?』
ただ、俺の話の持って行き様には穴があったらしい。虚を突かれて俺は固まり。
『けど、キャットフライって猫と蝙蝠が駆け合わさったようなモンスターですよね? てっきり夜行性かと思いまして』
なんて言い訳が思いついたのは、せめて明日の朝にしなされと言われて効果的な反論もできず横になった後のこと。
(あかん、結局この島で朝を迎えることになっちまった)
とはいえ、ブラスが連れ去られてしまうと島で悠長に実験をしてる場合ではなくなってしまうし、この島に来てブラスに挨拶も報告もしないのは不自然なのだから、この島にルーラした時点でもはやこの展開は避けようがなかったのかもしれない。
(今更ルーラでパプニカにも飛べないしなぁ)
このままでは、下手すると魔王軍の幹部と鉢合わせしてしまう訳だが、現時点で俺が幹部に勝つのは難しい。それこそ、不意を突いたうえ、自分も消し飛ぶ覚悟で例の近接消滅呪文を使いでもしなければ厳しいし。
(この島を訪れるのは、妖魔司教ザボエラ。魔法を使う術士系のモンスターとかを束ねてる軍団長で、当然当人も呪文のスペシャリストと言うのがね)
俺の記憶が確かなら、オリジナル呪文とかも編み出してたし、部下に変身呪文をかけて影武者に仕立てる何てこともやってくる相手だ。
(魔王軍の目がダイに向いてるなら、俺がこの島に居ることも気づかれていない可能性はあるけど……そもそも、ザボエラとは戦って勝つのも駄目なんだよ)
ここでブラスが誘拐され、ダイと対決する軍団長にザボエラが人質兼戦力として使う様そそのかしたことがきっかけで魔王軍から離反し、後にダイ達の仲間になる軍団長が居るのだ。ここでブラスの誘拐が失敗してしまうと原作から大きく乖離する上、原作で何度もダイ達を助けた味方が加入しなくなってしまう。
(とはいえブラスをみすみす誘拐させたら、俺は何やってたんだって話になるし)
ハドラーの時に使ったパターンはもう使えない。一度魔法力の制御に失敗してることもあるが、ダイとポップの二人がかりであれだけは使うなと釘を刺されてしまっているのだ。
(身体が半分吹き飛んで死にかけたんだから、二人の言うことは正しい、俺自身も二度目は制御できるかと言われると、うん)
どう考えても断念せざるを得ない。
(となると、どうする? ブラスの代わりに攫われるのもダメだし。せめて魔王の意思の影響を受けるかどうかが解かってればやりようはあったかもしれないけれど)
ああでもないこうでもないと俺が考えているうちに更に夜はふけて行き、やがて東の空が白み始めるのだった。
次回、四話「朝」に続くメラ。