ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
(……ダメだ)
筒の中であれから色々シミュレーションしてみたが、どれもがうまく行かなかった。まず、操られたブラスのふりをするパターンだが、これは戦闘中に衝撃などでモシャスが解けた場合拙いことになる上、そうなる可能性が高い。
(なら、正体を現すしかない訳だけど)
ここからの軌道修正の難易度はウルトラC級になる。原作では卑怯な手段をとり人間側から非難され、後から駆けつけて仲間の為に命がけでブラスを救おうとしたポップの姿に心を動かされたクロコダインが起き上がってきたダイに敗れた。そうして卑怯な手段を使ったことを後悔しつつ城の外へと倒れこんでフェードアウトし、後に回収され、蘇生を試みられたことで息を吹き返したクロコダインは魔王軍を離反するのだ。
(攫われたのが俺だったことで、卑怯な人質を使う策がまったく意味をなさなくなるし、ポップが駆けつけた理由ってダイたちが苦戦してるのを見せられたのも一つの原因だからなぁ)
まさに綱渡りでうまく行った流れが全部ぶっ壊れてる訳だ。
(ポップが師匠の言葉を覚えていてくれれば、俺のことを師匠から頼まれてるからって理由で駆けつけてくれる可能性はあるけれども)
人質が居なくなるであろうこれから起こる戦いで、原作で命を張ったほどの苦戦になるとは思えない。
(どうしよ、原作だとクロコダインに助けられた場面は結構多いんだ)
俺の身の安全のためにも、クロコダインには何としてでも魔王軍を離反して仲間になってもらいたいのだが。
(俺が説得する? 説得が成功する要素が殆どないんですが)
だが、現状では確実に失敗するとわかっているブラスのフリ作戦よりはそちらの方が幾らかマシだろう。仮眠を挟んだり、念の為にモシャスの呪文をかけなおしたりしているので、相変わらず俺の姿はきめんどうしの姿をとっているがそれはそれ。
(けど、説得って本当にどうするんだろう。人質作戦が失敗に終わってれば負い目もほとんどないだろうし、こう、翻意させるとっかかりみたいなものすらほとんどない訳で)
ああでもないこうでもないと考える筒の中は、外部の情報が入ってこないから、今どこでどうなっているのかすらわからない。下手すると今すぐにでもこの筒から出されることだってありうる。
(ほんと、どうしよ)
追いつめられているという自覚はある。お手上げなような気もしてきた。もうあきらめて成り行き任せに行こうと自分の一部が囁く。
(いやいや、何諦めてるんだよ! その先に俺の穏やかに過ごせる未来なんてありそうもないのに――)
頭を振るって叱咤してみるも、いいアイデアが出るわけではなく。
(考えろ、まだ時間は)
あるはず、と続けようとしたところで筒の中に光が差し込み。
「……出でよ! デルパッ!!」
「ちょ」
俺の身体は筒の外へと吐き出される。思わず待ってと出かけた言葉を呑み込んで、降り立ったのは建物のものらしい小さな欠片あちこちに転がる床。
「早ぇぇよ、クロコダイン!」
なんてツッコめたらどれだけよかったことだろうか。出されてしまった。何も考えついてないのに外に出されてしまった。
「じ、じいちゃん……?!」
ダイの驚きの声に俺は自分がまだきめんどうしの姿のままであったことを再認識し。
(と言うことは、ザボエラは育ての親には手出しできまいと得意満面でこの様子を窺ってるんだろうな)
なんでこんなところにと驚きと疑問を感じつつも近寄ってくるダイの姿を視界に収めつつも、視線はどこか遠くを見ざる得なかった。
「さあ行けッ!! 鬼面導士ブラスよッ!!」
俺が立ちつくしていたからだろうか、後方から誰かが命じ。
(ええい、もうこうなったら仕方ない)
「おのれッ化物めッ!!」
俺が動こうとしたのを見てとってか、統一した兜と服を身に着けた男達が武器を構え。
「待って!」
それをダイが慌ててあれは俺のじいちゃんなんだと制止しようとする。
(どうする? 正体を現すなら、ここだ)
原作ではこの後ブラスは兵士に呪文を放ったはず、俺は決断を迫られていた。
次回、七話「奇蹟よ起きろ」に続くメラ!
え、作者もこの展開に頭抱えてないかって?
だ、大丈夫、ですよ?(目そらし)