ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
(ええい、もはやこれまでっ)
原作であればブラスがダイの制止に戸惑う兵士に混乱呪文メダパニをかけ、同士討ちさせた場面。
「断る、メラミ!」
「なっ、ぐおおっ!」
くるりと向きを変えた俺の放った攻撃呪文に驚きつつもクロコダインは手にした斧を振るう。
「じいちゃん?!」
「「なっ」」
「えっ」
クロコダインも驚いただろうが、魔王の意思に操られて敵に回っていると思っていたダイやダイから説明を聞いた兵士達、そして視界の片隅に確認したピンクの髪の少女が驚きの声をあげるがそれもそうだろう。
「……どういうことだザボエラ!」
そして声に振り返れば無傷のクロコダインが怒りつつ叫ぶ。
(まぁ、意に沿わぬ卑怯な手段をとれと渡した人質兼戦力が命令に従わず攻撃してくれば、当然と言えば当然の反応だな)
「それは……こういうことさ、ぐっ」
未だに衝撃以外の解き方がわからない俺は止む得ず自分を殴って変身呪文を解き。
「めっ、メラゴースト君?!」
「あれは、あの時の――」
「何だと?!」
正体を現した俺に敵味方問わず驚きの声が上がり。
「も、モンスター?!」
「あっ」
どこからどう見てもメラゴーストな俺の姿に再び警戒をあらわにする兵士に気が付いたダイが声をあげる。
「待って! あのメラゴーストは……あのメラゴーストは敵じゃない! 先生から、アバン先生に学んだおれの兄弟子なんだ!!」
『あー、説明すまない』
まるでさっきの光景の繰り返しだが変身を解いてしまったことで、人に言葉が通じなくなってしまった俺としては、ダイに説明の大半はお願いするしかなく。
「メラゴースト? まさか、貴様が魔軍司令どのに痛手を負わせたという」
遅れて俺の正体に気づいたらしいクロコダインが俺を凝視するが、さすがにここで通りすがりのメラゴーストですは無理がある。
『……ハドラーから話を聞いていたのか』
俺としては魔法力の調整に失敗してやらかした黒歴史という面も含めて広めては欲しくないのだけど、口ぶりからダイと変わらぬ程度に警戒されてる事実にちょっと気が遠くなりかける。
「そういえばメラゴースト君、なんでクロコダインの筒の中に?」
『あぁ、えっと筒から出たら……そっちのピンクの髪の子と見知らぬ村人に囲まれた状況で、抵抗するわけにもいかないし、逃げられそうもなかったからとっさにルーラでデルムリン島に戻ったんだけど、ブラスさんと居たら急に嫌な予感がして……ブラスさんを隠して覚えたての呪文でブラスさんに化けたら魔王軍の軍団長を名乗る奴がやって来たから』
敢えて攫われて様子を探ることにしたと告げ。
「メラゴースト君、なんてムチャをするんだよ!」
『いや、あそこでブラスさんを攫われるわけにはいかなかったし、単独で軍団長相手は。それに下手に戦うと島のみんなを巻き込んでしまっただろうし。加えて俺にはこれがあるだろ?』
言いつつ俺が示したのは、俺専用のアバンのしるし。
「そうか、メラゴースト君のそれがあれば島の外でも魔王の意思の影響を受けずに」
『ちょっ』
事情説明のためとはいえアバンのしるしを示して見せたのは俺のミスだろう。が、納得したダイが声にしてしまったのは想定外であり。
「危ない!」
『え』
ダイに注意が行ってしまったのも悪かった。ピンクの髪の子ことマァムの声で振り返った時には遅かった。
「ギョエッ」
遠くからの悲鳴とパリッという何かが弾けた音。視界の端に映ったのは、一部が赤くなった細くうねっとした何か。そして、跳ね上げられて宙を舞う俺のアバンのしるしだった。
『グアアアアアアアッ!』
「メラゴーストくぅぅぅん?!」
それ は そうだ。しま の そと で 、てき に まわらない りゆう を わざわざ せつめい すれば、それ を なんとかしよう と するの は、あたりまえ。
(歴史の修正力とか、そういうモノだったりするんだろうか?)
こうしてブラスのかわりに俺が敵兼人質に回って、流れは原作の通りに引き戻されると。
(ある意味結果オーライと言えなくもないのかもしれないけれど)
問題は俺が敵に回った場合、ブラスより厄介だということだ。
(こんなの、あり……?)
確かに打開策とか全く思い浮かばず、詰んだかなとも思いはしたけれども。
(今頃、この光景を見てるザボエラは馬鹿笑いでもしてるんだろうなぁ)
それが無性に悔しく、腹立たしかった。
メラゴースト君は今回もまたやらかしましたとさ。
次回、八話「ダイ、苦戦せり」