ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
(うん?)
ふとこの様子を窺っているであろう妖魔司教ことザボエラのことを考えた直後だった、俺がそれに気付いたのは。
(あれ? 何ともない)
思わず悲鳴は上げてしまったが、そう、何ともないのだ。結局、魔王の意思の影響を受けるかどうかの実験はできなかったし、だからこそ、しるしを外されててっきり敵に回ってしまうと思っていたからこそ、この展開は予想外。
(けど、これっていけるんじゃ)
ブラスに化けていた時と違って、元に戻ることを恐れる必要はない。加えて、この状況なら俺が操られたふりをしても誰も不思議に思わない。
(ダイとかお城の人とかを攻撃するのはちょっと気が引けるけど、中途半端に意識が残ってて抗ってる感じに手加減すれば)
ほぼ原作に近い形で話を進められるのではないだろうか、いや。
(そう言えば、ピンチに陥ったダイにゴメちゃんが立ち上がる力与えてなかったっけ、原作だと)
ゴメちゃんの正体は何とかのしずくと言う願いを叶える超レアアイテムだったはず。ダイが立ち上がったのもアイテムとしてのゴメちゃんの力を使ってのことだとすれば。
(俺の立ち回り次第では願い一回分の消耗を押さえられるのでは?)
ゴメちゃんは願いを叶え力を使うごとに消耗して小さくなってゆく、いわば使用回数の限られたアイテムでもあったはずだ。つまり、原作より消耗が抑えられれば浮いた願い事の分で俺の望みを叶えられるかもしれない。
(ごめん、ダイ。ごめん、ポップ。大丈夫だったってことにしてもクロコダインが離反した上仲間になってくれるとも思えないからさ)
俺は自作自演することを決めた。
『ぐ、グウウッ……ギラッ!』
苦しむ演技をすることで、直撃コースを外して俺は兵士達に閃熱呪文を放つ。ギラの呪文を選んだのは、下位呪文で範囲呪文がこれか爆裂呪文しかなく、後者はあちこち壊れた城の天井や壁が崩れて二次被害を発生させる恐れがあると踏んでのことだ。
「ぐわっ」
「ぐうっ」
ベギラマではない上に直撃を外した呪文は悲鳴こそ上げさせるが、倒れた兵士は一人も出ず。
「メラゴースト君!! やめてくれよ!!」
悲鳴に近い制止の声を上げるダイに心は痛んだが、ここまで来てやめるわけにはいかない、そして。
『グウッ、……い、ダイ』
「メラゴースト君?!」
駆け寄ってくるダイの名を苦しみつつも呼ぶフリをすれば驚きにダイが足を止め。
「メラゴーストく、うわっ」
再び駆け寄ってきたところを腕で払いのける。
「メラゴースト君?! なん」
『……近、な、分裂』
すがるような目で問いかけるダイに、俺は魔王の意思に抗ってますよと言う態で、とぎれとぎれに言葉を発す。
「分裂? あ」
俺の言葉を反芻したダイはハッとした顔で俺の方を見る。たぶん意図は伝わったのだろう。原作だとブラスと取っ組み合いになったりブラスを投げ飛ばす流れがあるのだが、俺相手にそれをやると俺が分裂して増えてしまう恐れがある。魔王の意思に操られてるという設定の俺が増えでもした場合、原作の流れからまたずれが生じてしまううえ、下手をすれば勝ち目が消えてしまう。
「メラゴースト君……」
魔王の意思に抗って何とか助言をしようとした俺の演技は成功し。流石に前の失敗があってか言わんとしたことを口に出さずダイはこちらを見て。
『メラミ!』
俺はそんなダイへ不意打ちの形へ呪文をぶつける。
「ダイッ!!!」
悲鳴もあげず吹っ飛んだダイの名を誰かが呼び。
「く、う、ううっ、めら……メラゴーストくん」
「……とどめだ!!」
ヨロヨロと身体を起こすダイを見据え、クロコダインが手にした斧を振りかぶる。投てきの構えだ。
(ここまでは原作通り)
魔王の意思に抗うフリをしつつ俺はちらりとマァムの様子を伺い、手当をしていたおそらくはこの国の王から離れダイの下へ駆けてゆく姿を確認しつつ呪文を唱え始める。
(原作じゃマァムがダイにぶつかるようにしてクロコダインの投げ斧から救ったはずだけど、万が一もあるもんな)
斧を躱せそうになければ、魔王の意思に抗うことであさっての方向に飛んだ呪文が斧を撃墜したという態で呪文を斧にぶつけるつもりだったのだが。
「くっ……また貴様かっ!!」
呪文の出番は必要なかったらしい。間一髪でダイを斧から救ったマァムをクロコダインは忌々し気に睨みつけ。そのマァムは銃のような武器を構える。たぶん、あれが師匠に貰ったという呪文を撃ち出せる武器なのだろう。マァムの村で筒から出されたときもちらっと見かけた気がする。
(ここまで原作通りなら、弾丸の中身はメラミだな)
原作ではあの銃で反撃に出ようとして、ダイにブラスに当たってしまうからと止められる流れだ、ただ。
(俺はメラゴーストだからなぁ)
ぶっちゃけ、誤射して俺に当たったところで俺は痛くもかゆくもない。登場作品によってはメラ系の呪文を受けると無効化するどころか回復してしまうのがメラゴーストなのだ。
「……ダイ?!」
「だ……だめだマァム。め……メラゴースト君に当たっちゃう……」
にもかかわらず原作の様にダイがマァムを止めたのは、きっと何の呪文を撃ち出すのかわからなかったからか。
(けど、メラミってわかってるなら、抗うフリをして俺ごと撃てって流れもアリか)
止めようとするダイにこのままじゃやられちゃうわとマァムが反論する声を聞きつつ、俺はそんなことを考えて居た。
次回、九話「獣王フルボッコされる(言葉で)」に続くメラ。