ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十話「窮地」

「終わりだ……ダイ……」

 

 ちくしょうと呻くダイをクロコダインが払いのけ、マァムがダイの名を呼び、慌てて駆け寄る姿を俺は見る。

 

(あれ?)

 

 ただ、ここまで来て俺はおかしいなと思う。原作のブラスはクロコダインがそう言った時クロコダインの後ろにいた気がしたのだ。

 

(原作の流れに戻したはずなのに、何故差異が……あ)

 

 思い至ったのは、マァムの行動。本来ならタックルをかけて共に転がっていったのを俺の場合分裂するからと威嚇射撃で動きを制した。結果、俺はまだクロコダインの前方よりの側面に居る。

 

(待って、それ、色々拙いんだけど?!)

 

 俺は焦った。

 

「……それ以上苦しまぬように……一思いに葬ってやる……この獣王クロコダイン最強の秘技でな!!」

 

 と、理由はピンクのワニさんことクロコダインが直後に言ってくれたソレだ。原作だとダイだけでなくその後ろに居た国王や兵士達まで一緒に吹き飛ばしていた気のするクロコダインの大技。つまり範囲攻撃だ。

 

(いや、伝えないといけないことがあって魔王の意思に抗うフリとかしつつ言葉を伝えたりはしてましたけどさ、うん)

 

 今の立ち位置だと、巻き込まれる可能性がそれなりにある。完全に敵対してたブラスと違い、半端に抗ってる俺だ。

 

「魔王の意思を自力で克服するやもしれん、念の為一緒に葬ってやろう」

 

 とか考えたクロコダインが俺まで攻撃した場合、生命力的な意味で撃たれ弱い俺が生き残れるかはけっこう微妙な感じになると思う。

 

(使える呪文増えてレベルは上がってるはずだけどさ、ステータス数字で確認する術ないし)

 

 初期値が低かったからこそ、慢心する理由はなく、怯える根拠は既にあり。

 

(どう)

 

 どうすると続けようとした時のこと。

 

「退けい」

 

 口で言いつつクロコダインは俺を片手で押しのけた。俺が非難に案化した時の言葉が功を奏したのか、他に理由があるのかはわからないが、どうやらクロコダインは俺を捲き込むつもりはないらしく。

 

(危なかった)

 

 胸中で胸をなで下ろしつつ俺はここからどうするかを考える。

 

(出来れば国王や兵士達、ダイやマァムに補助呪文をかけたいところだけど)

 

 味方集団の防御力を増すスクルトの呪文であれば、クロコダインの宣言した大技の威力を軽減することは出来ると思う。だが、その場合中途半端に動けるまま大技を耐えた兵士やダイ達が反撃に出て、殺されてしまう恐れがある。加えて、せっかくターゲットから外してくれたクロコダインが考えを変えて俺まで葬ろうとする可能性だってあるのだ。

 

(静観しかないか)

 

 歯がゆさを感じつつもただ立ち尽くしていた時間は時間にすれば十数秒。それだけの時間の間にクロコダインは力み、右肩の防具をハジケさせながら吠え、肥大化したのかと錯覚せんばかりに力を込めた右の腕を突き出し闘気を放った。

 

「獣王痛恨撃!!!!」

 

 渦の様に激しく回転しながら一直線に伸びた闘気は人も無機物も関係なく呑み込み、かき回し、壁に大穴を穿って外まで突き抜ける。

 

「……勝った……!!」

 

 一撃が過ぎ去れば、目につくのは一直線に抉れた床の両脇に倒れ伏すダイや国王、兵士達とマァムの姿。思わずクロコダインが呟きの声を漏らしてしまうほどに、立っている者は誰も居らず。

 

『ダ……イ』

 

 俺は魔王の意思に抗い弟弟子を気にするふりをしつつ、密かに呪文を唱え始める。原作だとこの後、呻きつつ身を起こしたマァムがダイを回復させようとして悪魔の目玉に捕まる。

 

(その結果、なす術なくダイが殺されそうになる光景を見せられたポップが城下町の宿から走ってきて乱入を……あれ?)

 

 おそらくこの後起こるであろう原作知識をおさらいした俺だったが、ふと思う。城下町の宿屋からこのお城のこの場所まで全力疾走したとしても結構な時間がかかるのではないかと。

 

(ポップが駆けつけてくるまでクロコダインって何やってたんだ?)

 

 思わず浮かび上がる疑問だが。普通に考えたなら、卑怯な手段を使ってしまったことに葛藤してトドメを刺すのをためらっていたとかだろうか。ただ、推測しかできぬままに視界の端でマァムが身を起こし。

 

「あ……ウッ……?!」

「……悪魔の目玉……!! そうか、こいつの首飾りを跳ね除けたのも」

 

 天井から伸びてきた触手に絡み取られたところでクロコダインがその存在と、やってのけたことを思い出し。

 

「グヒェッヒェッヒェ!!」

「ザ……ザボエラッ!!」

 

 瞬きしたあとに目玉に映った人物の名をクロコダインが口にする。

 

(そっか、加えてクロコダインと目玉を通したザボエラの会話で時間が経過……うん?)

 

 納得しかけた俺だったが、それが答えだとすると両者の会話はものすごく長いモノにならないと説明がつかないような気がするのだが。

 

(あ、ひょっとしたら城下町って、俺が考えてるより狭いのか)

 

 よくよく考えれば俺はロモスの城下町をしっかり見たわけじゃない。ここまで筒の中だったのだ。

 

「安心して……ダイにとどめを刺すがいい‥…!!」

 

 こちらが納得している間にザボエラとクロコダインの会話は進んだようで、クロコダインの頷く姿が見え。

 

(とは言え、万が一もある)

 

 俺はいざという時呪文で邪魔を出来るようクロコダインと悪魔の目玉の様子を伺い。

 

(って、あれ? まだ来ない?!)

 

 一向に現れぬポップにちょっと焦って呪文の詠唱を小声で開始した数秒のち。

 

「待てェッ!!!」

 

 その声を聞くこととなるのだった。

 

 

 




……いつから窮地がダイの立場を指すと思っていた?

まぁ、無事切り抜けられましたが。

次回、番外3「勇者とは(ポップ視点)」に続くメラ。

出したり引っ込めたりしてるメラゴーストは居る気がするけど、彼は勇者じゃなくてメラゴーストなんで、うん。

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