ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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番外3「勇者とは・後(ポップ視点)」

「や……やったあ……やっと着いたぜ……!」

 

 結局メラ公とは合流できねぇままにマァムの故郷、ネイル村を出たおれたちが森を抜けてお城についたのは月が登り、星の瞬く夜になっちまってからだった。

 

「いざロモス城へっ! GO! GO!!」

 

 それでもたどり着いた達成感をかみしめ、二人を振り返りながらも真っ先にお城に向かったおれたちを阻んだのは交差する兵士の槍。今日こそあったかいお城のベッドで寝れると思ってたおれの口から愚痴が漏れたって誰も責められないだろ。

 

「しょうがないさ。ブツブツ言ってないで宿屋を探そうぜ」

 

 そんなことをダイが言った直後にマァムが宿屋を見つけ、泊まることになった宿は値段の割には結構いいところだった。そんな宿だからか、勇者が泊まってるって話だったんだが、泊まってたやつらはダイに言わせると勇者さまの名をかたる悪者だったらしい。今は改心したらしいが、ダイが今何をしてるのかと聞けば話す内容はあきれるばかり。自分より弱い魔物を倒して褒美をもらうだの、魔王軍に落とされたお城から宝物をくすねてくるだの。昔やってたことと殆ど変わらないってダイも呆れていた。

 

「自分より弱いやつとしか戦わねえくせに勇者だなんてよく言うよな」

「……人のこと言えるの……あんた」

 

 ダイに同意して思わず零れた言葉にジト目と共にぶつけられたマァムの一言がおれの胸に刺さったが、ハドラーもあのワニ野郎も別格なんだし、あれは仕方ねえと思うんだ。その後にせ勇者の一味にポーカーに誘われて何とも言えねえ空気になったりもしたが、森の中をロモスに向かって歩いてきた疲れもあった。適当なところで切り上げて、ベッドに潜り込み。

 

「っ」

 

 翌朝、おれたちを起こしたのはどこからか聞こえた咆哮だった。跳ね起きたダイが窓を開ければ、眼下の通りをモンスターの群れが駆けていきやがる。

 

「クロコダインの百獣魔団だ!!」

「そっ、そ……」

 

 総攻撃をかけてきやがったのは明らかで、血の気が引くのが自分でもわかった。同じ光景を自分たちの部屋の窓からでも見たらしいにせ勇者たちがおれたちの部屋に飛び込んできたのはすぐ後のことだ。ダイの説明にそいつらが取り乱す一方、マァムが顔を上げて窓の側からダイを引っぺがせば、鳥のモンスターにぶら下げられて軍団に檄を飛ばしながら空飛ぶあのワニ野郎が見えた。見ただけでゾッとするほどの尋常じゃない気魄。にもかかわらずワニ野郎が城に向かってると知ったダイはマァムが止めるのも聞かず、武器をもって飛び出し。

 

「早く! ダイの後を追わないと……!!」

 

 ベッドから跳ね起きた時のままだった服を着替え、マァムまでそんなことを言い出すのは想定外だった。

 

「さっきのクロコダインの目を見なかったの?! あの復讐に狂った目を……!!」

 

 理由を問うおれにマァムは言う、あのワニ野郎はダイを殺すことしかない、だから助けに行かないと、と。だが、居合わせたにせ勇者たちは口々に拒絶した。かなわない、命は大事、おれもそう思う。

 

「お、おれ、それ賛成ーっ」

 

 引きつり笑いしつつおれもこれに便乗して、マァムに胸を掴まれた。

 

「なにふざけてんのよ!! 早く……!!!」

「だ……だけどよ、あいつの強さはハンパじゃないんだぜ……行ってもむざむざ殺されに行くようなもんだ……」

 

 おれの言葉にマァムはだからこそ加勢しなくちゃダイが殺されちゃうでしょと言う、けど。

 

「し……心配ねぇよ……いざとなったらダイの奴ぁめっぽう強いし……死にゃあしねえよ……」

 

 それに。

 

「ポップ……?!」

 

 マァムがおれを驚いたような信じられないようなモノを見た目で映す。

 

「どうしたのよポップ!! あなたダイの友達でしょ?! 仲間でしょ?!」

 

 あぁ、そうだ。そのつもりだ。だけどよ。

 

「彼がどうなってもいいの?!」

「うっ……うるせえなっ!!!」

 

 胸を掴んで揺さぶるマァムの手をおれは払いのける。

 

「だいたいおれは魔王軍と戦おうなんてつもりはもとからなかったんだよ!! 好きで戦ってたんじゃねーんだ!!」

 

 それに、それに。

 

「そりゃあダイは一緒に修行した仲間だけどよ……」

 

 修行した仲間はあいつだけじゃねえ。メラ公が、メラ公もいて。

 

「ポップ、あなたの方が兄弟子なのですから……メラゴースト君のこと、よろしく頼みますよ」

 

 脳裏に先生の言葉がよぎる。けど、流石に言えねえだろ。メラ公と先生の言葉をおれが逃げる理由にするなんて。

 

「……あ、あいつがいるから、敵が次々と襲ってくるんだぜ……まきぞえくって……死にたかねぇよ!!」

 

 震えながら絞り出したそれもおれの本音。それにマァムが返したのは拳だった。

 

「てっ、てめえ……!」

 

 殴り飛ばされた痛みに呻きつつ身を起こした俺がそれ以上何か言う前に、マァムは泣きながら言う。先生から何を習ってきたのかって。

 

「ダイもあなたも……二人とも先生の敵を討つために命をかけて戦っている。……そう思ったからこそ……私、ついてきたのに……仲間になったのに」

 

 マァムは泣きながらおれを罵倒して宿を出ていった。

 

「二人じゃねえよ、いや……二人かもな」

 

 すれ違って結局ルーラで飛ぶ前後だけの顔合わせとはいえ、メラ公だって、あいつだって先生のために戦う一人だろう。何とも言いようのない空気のまま、おれは立ち尽くして。

 

◇◆◇

 

「なんだったんだ?! さっきのものすげぇ音は……」

 

 我に返ったのは少したってからだった。いつの間にかあのにせ勇者たちは居ねぇし。一人だからか、ダイとマァムがやらっれちまっただなんて嫌な想像が頭をよぎる。

 

「い……いや!! 関係ねえ……関係ねえさ!!」

 

 そう、もうあいつらが死のうが生きようが知ったこっちゃねえんだ。それに、おれなんかが行ったところでどうにかなる訳でもねえ。あの怪物相手じゃなんにもできねえでブッ殺されちまう。

 

「ここに居るのがメラ公だったら――」

 

 あいつなら自分のいのちなんて顧みずに戦ったかもしれねえ。けど、あいつにはハドラーの横っ腹に大穴開けた呪文がある。けど、おれの呪文は、前にあの化物の息ひと吹きで吹っ飛ばされちまってる。

 

「……うん? だっ、誰だ?!」

 

 背後の方で物音がしなければ、おれはそのままウジウジしていただろう。

 

「ヒョッヒョッホ……おじゃまするよ」

「な なんだ。てめえ、あのニセ勇者の一味の魔法使いじゃねぇか」

 

 誰何の声に姿を見せたのは、たしかまぞっほとか言う名の魔法使いだった。何をしていたのか、逃げないのかと聞けば、宝石や財布、短剣に金貨なんかを抱えていてそれをちょうだいしてきたとか言いやがる。

 

「そーゆーのは火事場ドロボーっていうんだよ!!」

「……そうともいうかな」

 

 おれの指摘にも悪びれた様子を見せず集めてきたモノをテーブルの上に置いたその魔法使いは、こともあろうに仲間にならないかと誘ってきた。だが、冗談じゃねぇ。おれはかつて魔王を倒したアバンの弟子なんだ。

 

「てめえらみたいな小悪党と一緒にすんない!」

 

 心外だし侮辱だった、けど。

 

「ワシには全く変わらんように見えるがのう……」

「なっ! なんだとおっ!」

 

 聞き捨てならない台詞を吐くまぞっほに食ってかかろうとしたおれへ放たれたのは、一つの問い。

 

「仲間を見捨てるような者にでもつとまるのかね、かの有名なアバンの使徒と言うのは……?!」

「ウッ」

 

 反論できないおれの前でまぞっほは水晶玉を取り出すとおれの仲間がどうなっているか見せてやろうという。そこに映し出されたのは、あのクロコダインの前で倒れ伏したダイとその傍らに立ちつくすメラ公。

 

「め、メラ公?! な、なんでこんなところに……? ダイたちを助けに?」

 

 なら、何で立ち尽くしてんだ。島の外だって先生の作ってくれたアバンのしるしがあれば動ける筈。にもかかわらず棒立ちしている理由は、すぐに見つかった。

 

「って、ねえ?! メラ公が首から下げてるしるしが?!」

 

 きっと、戦いの弾みか何かで紐が切れるか何かしたんだろう。

 

「くそっ」

 

 どうすりゃ、いい。

 

「そうだ、マァムは……マァムは何やってんだよっ!!」

 

 答えが見つからなくて水晶に映らないもう一人の名を口にすれば、映像が切り替わり、無数の触手を持つ目玉のモンスターに絡めとられたマァムの姿が映って。

 

「マァム~ッ!!」

 

 仲間の窮地だなんとかしてえ。だというのにおれには、おれだけの力じゃどうにかできる気がしねえ。

 

「勇者とは勇気ある者ッ!!」

 

 ただ水晶玉を見つめるだけだったおれの背は突然の大声に顔を上げ。

 

「そして真の勇気とは打算なきものっ!! 相手の強さによって出したりひっこめたりするのは本当の勇気じゃなぁいっ!!!」

 

 まぞっほの声に一瞬だけど、先生やメラ公の姿が浮かんだ。

 

「なんてな……」

 

 まぞっほの言うことにはそれはまぞっほに魔法を教えていた師匠の言葉らしい。若いころ、正義の魔法使いになりたくて修行してた頃の師匠だって言う。

 

「だけどあかんかった……」

 

 自分より強い怪物に遭うとふんばれず、仲間を見捨てて逃げることもザラ、昔の自分を見て居るようでおせっかいを焼いたという。

 

「さあ、早く行けっ」

 

 胸に勇気のかけらがひと粒でも残ってるうちにとおれは肩を叩かれ。弾かれたように走り出した。ロモスのお城に向かって。

 




気が付いたら、二話分の文字数になってたというね、うん。

十一話「到着、そして」に続くメラ。
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