ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十一話「到着、そして」

「なんだ……誰かと思えばあの時の魔法使いか……いまさらおのれ程度がでてきたところで何ができる!!」

 

 息を切らして現れたポップにクロコダインはうせろと一喝する。

 

(良かった)

 

 そんな光景を視界に入れつつ、俺は秘かに安堵していた。

 

(ポップは間に合ったし、来てくれた)

 

 原作同様に偽勇者一行の魔法使いにでも背中を押されたんだろう。これで原作の通りに状況は動くはずだ。

 

「……ゆるさねえ」

「なんだと?」

 

 小さな声ではあったがポップの漏らした声にクロコダインが聞き返し。

 

「……おれの仲間を傷つける奴は絶対にゆるさねえぞおぉぉぉっ!!!」

 

 今度は指を突き付けてはっきりと吼えて見せ。

 

「……小僧……貴様、自分の言っていることがわかっているのか……?!」

「お……おお! 仲間の敵討ちで……おれが御前をブッ倒してやるって言ってんだよ! このワニ野郎があッ!!」

 

 クロコダインに見据えられながらも勇気を振り絞っているようでポップは叫ぶように言葉に答える。

 

『ポッ……プ』

「……メラ公」

 

 俺は抗いつつ絞り出すように声を出し、それに気づいたポップがこちらを振り返り。

 

「ポ……ポップ……!!」

「マ、マァム……!!」

 

 更に別方向からの声に向き直ると、目玉のモンスターから伸びる触手に拘束されたマァムに気づく。

 

「ポップ、そのメラゴーストは」

「しるしがなくたってわからぁ!! こいつは、メラ公……何をどうやったかは知らねぇがしるしを奪って手下にしようとやがったな」

 

 ちくしょうと吐き捨てたポップはドぎたねえやつらだぜと非難し。

 

「時々、抗っているようだけど」

「魔王の意思の影響を受けてんだから、攻撃してきてもおかしくねえってことか」

 

 ロクでもねえ状況だぜと顔を歪めるポップにマァムはクロコダインが魔法の筒をもっていること、それを使って俺を封じ込めないとどうにもならない状況だと伝え。

 

「ううっ」

「マァム!」

 

 ザボエラが下手に助言をされると拙いと見たのだろう、触手の締め付けを強められたのかマァムが呻き。マァムの名を口にしたポップの顔が険しくなる。

 

「……さっさと消えてしまえ小僧。しょせん貴様はダイとは比べ物にならない小物だ」

 

 今なら見逃してやらんでもないとクロコダインがポップを追い払おうとする。

 

(実際、原作だと良いとこなしで逃げ回ってばっかりだったしなぁ)

 

 クロコダインの口ぶりからすると俺が筒の中に入っている間の行動も原作通りだったのだろう。戦うより脅して追っ払おうとするのもまぁ、頷ける。

 

「ふ、ふざけんな」

 

 だが、ポップは誰が仲間を見捨てて逃げるもんかと叫ぶ。

 

「アバンの使徒にゃそんなフヌケはいねぇぜっ!!」

 

 そう続けた言葉に、視線をそらしたくなる人物が約一名。そう、俺だ。原作を読んでた頃はただの物語だったが当事者になると、そのセリフが容赦なく俺の心を抉ってゆく。

 

「クロコダイン! おれと一対一で勝負しろッ!! それとも……おれみたいな『小物』が相手でもきたねえ人質作戦を使うのかよ!!」

「なっ……! なんだとぉッ‥‥!!」

 

 おそらくこの時クロコダインが感じたものは屈辱だったと思う。

 

「……よかろう、そんなに死に急ぎたいのなら……仲間と一緒にあの世へ行くがよいわあッ!」

 

 あっさり挑発に乗ったクロコダインは俺へ手出しをするなと言いつけ。

 

「メラ公、こっちもだ」

「ぬッ?!」

 

 ポップが俺に向けて言った言葉にクロコダインが目を剥いた。

 

(えっ)

 

 いや、中途半端にしか魔王の意思に抗えていないってことになってると言う訳だから、ひょっとしたらでも短時間、俺が魔王の意思に勝って自分を援護するかもしれないという可能性にポップが思い至ったとしても不思議はない。だが、わざわざそれをするなと言ったのは予想外で。

 

「何驚いてんだ? 一対一って言っただろうが!」

「小僧ッ」

 

 ポップの言葉がクロコダインの心にどう作用するか、どう作用したか、心の読めない俺にはわからない。

 

「くらええいっ!!」

 

 ただ短く呻くように吼えた獣王は斧を振りかぶって駆け出すと、ポップめがけて襲い掛かっていった。

 

(なんで)

 

 何故あんなことをと声に出さず呟く。その間もクロコダインの攻撃は続く。斧が微かに掠めたポップの服が破れ。攻撃を躱す内に息は荒くなってゆく。

 

「グフフフッ……必死に間合いを取ろうとしているな……」

 

 一方的に攻めていることへの余裕の表れか。魔法使いは肉体的には並の人間とたいして変わらず、一撃を受ければ即死だから無理もないといった旨の解説までクロコダインはわざわざ口にし。

 

「すなわち……貴様がこれからためそうとしてる呪文がオレに通じなかったら……その瞬間が貴様の最期だ……!!」

「……つ、通じるか通じねえか……いま見せてやらあ……!!」

 

 血走った眼で睨みつける獣王を前にしてポップが杖を抜き。

 

「なッ」

『え』

 

 クロコダインめがけ駆け出した姿にクロコダインだけでなく俺も思わず驚きの声をあげた。

 

「メラ公、ヒントはメラ公がくれたッ!」

(いや待って、この展開俺は知らない)

 

 狼狽する中、驚きで動きが止まったクロコダインへポップは間合いを詰め。

 

「メッラッゾォーマァァッ!」

「ガ」

 

 殆ど零距離でクロコダインの腹部へ叩きつける様に放った呪文がその巨体を浮かせて吹っ飛ばしたのだった。

 




原作通りに行くかと思ったらそんなことなかったぜ。

今回の原因、メラゴースト君がメラ系呪文のふりをして近接消滅呪文なんてオリジナル呪文を見せたせい。

次回、十二話「想定外だよポップさん」に続くメラゾーマ。

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