ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「ぐわっ」
至近距離でのメラゾーマの呪文がクロコダインを吹き飛ばしたが、それは諸刃の剣でもあった。着弾したメラゾーマの炎が爆発し術者のポップをも吹き飛ばしたのだ。
「グウッ……何と言う、威力……さすがはアバンの使徒だな。……メラゾーマを使ってくるとは、しかも近距離で放ってくるとは思わなかったぞ。……先ほどひたすら避け続けて間合いを取ろうとしたのもこの布石か!」
にもかかわらず、クロコダインは起き上がる。原作より受けたダメージは大きいのだろうが、クロコダインを倒すには至らなかった。
「見事だ小僧。自らをも呪文に巻き込むその覚悟。先の小物という言も取り消そう。だが……耐えきった以上、今度はオレの番だ」
起き上がり、覚悟はいいなと続けるとクロコダインは斧を振りかぶって起き上がろうとするポップに襲いかかり。
「くっ、がっ」
とっさに床を転がることで斧を躱したポップの身体をクロコダインの尾が跳ね飛ばす。
「ぐ……ああああ……」
「勝負あったな……」
床でのた打ち回るポップを見てクロコダインが勝利を確信するが、俺は知っている。原作ならこの後ポップが立ち上がったことを。
(ただ……原作は零距離メラゾーマの自爆ダメージなんてなかった)
原作と比べたら受けたダメージは今のポップの方が大きい筈であり、だからこそ迷う。介入するか否かを。
(ポップは手を出すなと言ったが……)
ここでポップやダイを死なせるわけにはいかない。
(とは言うものの、回復呪文の使えない俺にできることと言うと、スカラかスクルトの呪文で防御力を引き上げ、ダメージを減らすことぐらい)
下手にダメージを軽減したせいで戦闘が長引いて死者が出でもしたら目も当てられない。
「……ポ……ポップ」
「ダ……ダイッ……?!」
そうして俺が葛藤する間にダイが意識を取り戻し、うつぶせに横たわるポップに逃げろといい。
「1発や2発くらったぐらいで……おネンネしてられねえよなあっ!!」
「た 、立ち上がってきた……?!」
ダイの生存を喜びつつも身を起こし、立ったポップにクロコダインが驚愕する。
「馬鹿なッ……先ほどのメラゾーマで負ったダメージがオレにあって威力が減少していたにせよ、オレの尾の一撃なら人間の魔法使いぐらい一撃でのせた筈ッ」
「ハァ、ハァ……」
クロコダインは信じられない様子だが、ポップもまた口を利く余裕はないのか息も荒く、再び杖に魔法力を集め出し。
(うん? あ、拙い――)
この後の展開を思い出して、俺は焦る。原作のポップは殴りかかった杖を砕き、杖の破片を用いて破邪呪文を使いブラスを魔王の意思から守ることで正気に戻した、だがポップは一度クロコダインに肉薄して呪文を使っている。
(杖で殴りかかりに行っても、先の零距離メラゾーマを受けたクロコダインがポップを近寄らせるとは)
思えなかったし、俺の記憶が確かならクロコダインの斧は道具として使うことで真空の刃を巻き起こすことができた。斧の届く間合いだけがクロコダインの攻撃の届く距離じゃないのだ。
(くそっ)
しかも真空の刃と言うのがタチが悪い。呪文のようなモノであるからこそ俺が介入してスカラの呪文をポップにかけても防ぐことはおろか、威力を弱めることさえ出来やしない。
「うわああああーーッ!!」
「ッ、またあの呪文かッ!! だが、舐めるなよッ!! このオレが二度と同じ手に」
「っ、あ」
案の定、即座に反応して見せたクロコダインだが、駆けだしたポップは途中でつんのめり、転倒したポップの杖は虚しく床に叩きつけられて、砕け。
「魔法の杖で殴りかかってくるとは……魔法力がつきて血まよったか……!?」
「ぐああッ!!」
倒れたポップを踏みつけたクロコダインはしかも運もない奴よと続けた。
「ダメージが足に来ていたのだろう。もっとも、杖で殴りかかられたところでどうと言うことはなかったろうがな……」
どうやらクロコダインはポップの転倒は、消耗からよろけてのモノと見たようだったが、俺は違う。
(そっか、迎撃されるところまで計算に入れて、わざと)
原作での行動を知っていたから、ポップの狙いが解り。床に倒れたポップはクロコダインへ踏まれながらも指で杖の破片を俺の周辺へと弾き飛ばしてゆく。
(この勝負、ポップの勝ちだ)
原作の流れに戻ったのが確認できたことで、俺は確信するのだった。
いよいよ動くか、主人公。
次回、十三話「バトンタッチ」に続くメラ。