ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「メラゴースト君、ここは……危ない!! おれたちを残してすぐここをはなれて……!!!」
なんて、原作の船長に言ったようにダイが俺に避難するよう言うことなんてないのは、わかってた。
(うん、現実を見よう)
ありえない妄想を振り払い、ホルキア大陸に、目的地であるパプニカの城下町近くに降り立った俺の視界に入ってくるのは、廃墟と化した城下町だった。
「おい、ぼーっとしてんなよ、メラ公!」
『っ』
そして、ポップの声に振り返ると、無言のまま駆けだしているダイの背中を見つけて、俺は慌ててそれを追いかける。
(そっか、パプニカのお姫様が……レオナ姫が心配なんだっけ)
焦る理由は知っていたし、だからダイが走り出したのも頷ける、けれど。
(原作とじゃ城に向かう経路が違うのがな)
俺の気がかりは、そこだ。普通に考えれば、港からお城に向かうと考えて不死騎団長は戦力を配してるだろう。
(ある程度奥に引き込んでから包囲……あ゛)
そこまで考えて、俺は気づいた。原作で不死騎団長とダイが出くわしたのが、港ではなく廃墟になったパプニカ城跡だったんじゃないか、と。
(港で待ちぼうけじゃなかった、だって?!)
いや、それはいい。城に向かうとなると不死騎団長とは原作通りの場所で会うということになるのだから。
(問題はその前、港からお城までのルートに潜んでるかもしれない不死騎団所属のモンスターだ。俺が不死騎団長なら、城跡まで引き込んで包囲するけど、包囲を突破された場合にそなえて城下町にも戦力は伏せておく)
強行突破し包囲を抜けた獲物が城下町の外に向かうにしても、港から海へと離脱するにしても、城下町は必ず通る。故の判断だが、伏せる戦力が港からお城に向かうであろうダイ達から隠れることしか想定していなかった場合、建物の影など別の角度からは丸見えな位置に潜むモンスターをダイたちが見つけ、戦闘になる可能性は否定できない。
(ダイに忠告したいけど、初動の遅さがあってこの距離じゃ声が届きそうにないし)
ダイと俺の間に居る形のマァムやポップでは俺の言葉が理解できない。かと言って、意思疎通のためだけに変身呪文で魔法力を消費するのは避けたい。
「みんなァ、敵だッ!!」
そう思っていた矢先のことだった。先頭を走っていたダイが立ち止まって声を上げ。ロモスで授かった腰の剣を引き抜き、その声で漸く振り返った剣を持つ人骨を袈裟掛けに斬り捨てる。
(あっちゃあ)
危惧したことはあっさり現実になったらしい。ただ、不意を突かれる形になった人骨の剣士達からしてもこの遭遇と襲撃は想定外だっただろう。
『勇者一行?! こんなタイミングで――』
現に骸骨達の指揮官らしきメラゴーストが、驚きの声を上げ。
『え゛』
俺は固まった。
「いっ、メラ公が向こうにも?!」
(何で別の俺が不死騎団で指揮官やってんのぉぉぉぉぉ!!)
ポップが俺と声を上げたメラゴーストを交互に見る一方、俺は胸中で絶叫し。
『くっ、奇襲を受け浮足立った我が隊だけで勇者一行を討つのは不可能だ。ここは退く!』
俺が動揺する中、骸骨達に撤退の指示を出して後退し始め。
「うん? こいつら逃げんのか?」
メラゴーストの言葉を解さないポップがワンテンポ遅れてその意図に気づく。
「逃がすかよっ」
「待って、ポップ! ダイが――」
おそらく呪文で追撃するつもりだったのだろう。だが、制止したマァムがモンスターたちの退くのとは別方向を指し示し、そこにあったのはお城の方へと駆けて行くダイの背中。
「ちっ、ダイからすりゃ、逃げた敵よりお姫さんの方が気がかりか」
一人行かせるわけにはいかないとポップは手にしていた杖を腰に戻してダイを追いかける。おそらくは、そのままお城へと向かい、ダイたちは原作通りに不死騎団と遭遇するのだと思う。
(が、俺はどうする?)
思いもよらなかった別の俺との再会。
(追ってみるか?)
呪文の効かない鎧を持つ不死騎団長相手ではぶっちゃけ俺は戦力にならない。禁じられてる近接消滅呪文を使えば話は別だが、アレを使うつもりはないし。
(何より、魔王の意思の影響、俺は受けてないもんな)
なら、あの骸骨達を率いてた俺も正気の可能性は高い。
(接触できれば合体と分裂でお互いにパワーアップもできるし)
個人的にはどうして不死騎団に居るのかなど聞いておきたいことも多い。
「メラ公、何やってんだ!」
だが、世の中、そう甘くないらしい。俺がついていってないことに気づいたポップにさっさと来いと怒られ。俺はやむを得ずポップへ着いてゆくことになるのだった。
いつから……遭遇するのが不死騎団長だと思っていた?
次回、三話「もう一人の弟子」に続くメラ。