ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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三話「もう一人の弟子」

『はぁ、はぁ』

 

 分裂した他の俺を追うか迷って立ち止まっていたのも拙かったのだろう。俺は全力で追いかけているというのに見えるのは俺を除けば最後尾に居るポップの背中のみ。

 

(直線の階段じゃないのもあるんだろうけど)

 

 港のある城下町から小高い丘の上にあるお城へ折れ曲がりつつ続く長い階段は丘の一部を削った場所を通ってるところがあり、そこだけ視界が開けてないのだ。

 

(原作だとお城に着く直前がそんな感じだったっけ?)

 

 うろ覚えで自信はないが、記憶が確かであればそろそろ心の準備をしなくてはいけないということでもあり。同時にどう立ち回るかも決めておく必要があった。

 

(確か原作だとお城でさっき戦ったのと同じモンスターとの戦闘になって、その後に不死騎団長が現れる)

 

 魔王軍で唯一、人間の軍団長にして、師匠の弟子の一人でもあったそいつの名はヒュンケル。その後、ダイ達の抹殺を命じられていたヒュンケルと戦いになってダイ達は敗北。

 

(魔王軍を離反したクロコダインが助けに来てくれたことでダイとポップは何とか脱出するけど、マァムは捕らえられ、クロコダインも深手を負って……って、やばい!)

 

 俺の記憶が確かなら、クロコダインは部下の鳥の魔物にダイ達を運ばせることで戦線を離脱させた気がするのだ。

 

(メラゴーストの俺って掴めないし、そも一人分増えたら重量オーバーじゃん!)

 

 かと言って俺のルーラで全員を逃がすと原作を大きくそれてしまう。

 

(確か、倒れて運びこまれたクロコダインがヒュンケルの拠点に居たことで、窮地に陥ったヒュンケルが難を逃れる展開とかあった気がする)

 

 ここで深手を負うクロコダインを一緒に連れ去ってしまうと、ヒュンケルが後に魔王軍から離反することになってもたぶん、その窮地で助からなくなる。

 

(ヒュンケルが魔王軍を離反するきっかけになるのは囚われたマァムの行動だった筈だから、マァムも連れて逃げられない)

 

 かと言って俺が窮地になったのにルーラの呪文で離脱を図らないのは不自然過ぎる。

 

(何か手はないかこの状況を打開する手段……そうか!)

 

 俺はポップ達の注意が前方を向いているのを確認すると、密かに呪文を唱え始めた。

 

『モシャス』

 

 変身するのは、先ほど遭遇したモンスターを指揮してる俺。一見しても違いはわかりにくいが、そこには明確な違いがある。そう、変身後の俺にはアバンのしるしが首からかかっていないのだ。

 

(モシャスの呪文って服装まで変わるもんな)

 

 この世界のモシャスは変身対象の皮を被ったような変身であり、原作でも師匠がどこかの道化人形にモシャスした時、仮面の内側は師匠の顔そのものだったって描写があった。

 

(だから、何も装備してない俺に変身すれば、変身対象の皮に隠れてアバンのしるしは見えなくなる)

 

 ブラスに変身した時と理屈は同じ。

 

(あとはポップ達と引き離された時に不死騎団側の俺と入れ替わってたってことにすれば、俺だけ離脱した理由ができる)

 

 本物の俺は先ほど出会った同族を追いかけていって、ポップに本物と勘違いされた不死騎団所属のメラゴーストがこれはチャンスなのではと俺のフリをしていたという設定だ。

 

(後はどこかで加勢に来るだろうクロコダインとの鉢合わせさえ警戒してれば、この場はしのげる)

 

 俺がニセの部下であることをヒュンケルが気づかなければでもあるが、先ほどの詰んだ状況に比べれば切り抜けられる可能性は高く。

 

「レオナ~ッ!!!」

 

 城の方から聞こえるダイの叫び声に俺はダイが廃墟になった城を目にしたことを察し。

 

(さてと、出て行くのはもう少し後だな)

 

 クロコダインがどこから駆けつけてくるかもわからないし、そも、先日の戦いで倒れたクロコダインが原作通りこの場に現れるという保証もまだないのだ。

 

(なら、隠れて様子を見るのが正解の……って、それなら隠れにくいメラゴーストじゃなくてロモスのお城で見た悪魔の目玉に変身して天井とかにへばりついておくべきだったんじゃ――)

 

 と、今更ながらに変身対象をミスったかもしれないと思う一方で、何度も変身しなおす魔法力もなく。

 

「んぬわぁっ!! って、こいつらさっきの――」

 

 前方から聞こえたポップの悲鳴で隠れていたモンスター達が姿を現したのだと俺は知る。

 

(今の内)

 

 今ならダイ達は突然現れたモンスターに注意を奪われているだろう。俺は物陰に潜みつつ前進し。

 

(ッ)

 

 上空から降り注ぐ斬撃が城の床と共に骨の剣士達を消し飛ばすのを見て、密かに息をのむ。斬撃の放たれた方へと自然と視線が向けば、ポップも一撃を放った相手を見つけたらしい。

 

「なんだあいつは……!?」

「……この太刀筋は……アバン流刀殺法大地斬……!!」

「ええっ?! そ、それじゃあ……あの人は……!?」

 

 ダイの言で驚きの声を上げたマァムを含む三人が、それに思い至るのは、ある意味当然だった。

 

「アバンの使徒……!!?」

 

 師匠の弟子という意味では間違っていないだろう。傍観者の立場に居る俺は、すでに知っていた事柄に驚きはせず、ただ件の人物が俺の存在に気付いているかのみを警戒するのだった。

 




主人公、綱渡り中。

次回、四話「俺には謎でもない剛剣士」に続くメラ。
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