ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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五話「やっぱ無理ゲーじゃね」

「……あなたに会えたのが不幸中の幸いだったわ」

 

 ヤバい、拙い、拙い。不死騎団長からすれば、ここでダイ達を逃がす理由はない。

 

「これからは私たちといっしょに戦いましょう……!」

 

 結果的に引き返し出す三人に同行する形になった銀髪の人物にマァムが話しかけつつ手を差し伸べる姿が視界の端に見えて居たが、俺にそれを気にする余裕なんてなかった。ただ、この先で明らかに詰む局面を打開する方法を考えるのに手いっぱいであり。

 

『がっ』

 

 だからこそ、気づかなかった。頭部に強い衝撃を受けるまで。

 

『ぐ、何が……』

『ふふ、ふふふ』

 

 呻きつつ身を起こそうとすると、聞こえたのは俺と全く同じ声音の笑い声。

 

『会いたかった、会いたかったよ』

『と言うかAさぁ、何してくれてんの?』

 

 笑い声の主に続いたのはやはり俺と同じ声での非難。つまり、不死騎団に所属する分裂した俺達であり。

 

『時間的猶予も無さそうだし、ちょっとあっちでお話しようか。当然拳でな?』

 

 くいっと示したのは先ほどの戦場からもダイ達の去った方向からも死角になる崩れかけの一室。

 

『待って、あれは、仕方なかった! 俺は良かれと思って、ちょ、待、話し合おう! ね? 放し――』

 

 誰かに聞き咎められる訳にはいかないから、囁く程小声で話しかけるも不死騎団所属の俺達はただ良い笑顔を見せるだけ。

 

『助け、やめ、アーッ!』

 

 俺は物陰でむちゃくちゃ殴られた。

 

◇◆◇ 

 

『お前、本当に何してくれてんの?』

 

 パプニカ入りも早いし変だと思ったら気付いてなかったとか、と呆れた様子でB8と呼ばれる俺が俺をゴミでも見るような目で見る。

 

『クロコダインの代わり? 出来る訳ないだろ! 合体でパワーアップはできたけど団長の必殺技喰らったら今だって余裕で死ねるよ?』

 

 不死騎団所属の俺達の言は至極もっともだった。だから、俺はぐうの音も出ず。

 

『とりあえずマァムは俺達が乱入してルーラで連れ去るのを妨害すれば、マァムだけ取り残されてダイとポップだけ離脱って形にはできると思うけど』

『問題はダイがとどめを刺されるのをどう止めるか、だな』

 

 ありがたいことに殴られて分裂し増えた俺と不死騎団所属の俺達は、原作から乖離しつつある現状をフォローし、詰ませずに済む方法について模索し始めてくれている。

 

(けど、酷いよなぁ)

 

 俺も参加しようとしたのだが、元凶は黙ってろと口をそろえて言われ、今はただ口を噤んでダイたちの後を見つからないように追いかけている。

 

『この町のモンスターの配置は団長の指示の元俺達がやったからな。発見されないルートは熟知してるし、邪魔なモンスターがいるなら隊長権限で退かせることもできる』

 

 そんなことを明かす俺は無駄に頼もしく、同じ俺の筈なのにこの差は何なんだと思わず頭を抱えたくなる。

 

『さて、つくまでに不死騎団所属の俺は全員オリジナルと合体しておくぞ、スカラ』

『ごふっ』

 

 だが、どうやら頭を抱えることすら許されないようで、俺は呪文によって防御力を引き上げられるといきなり隣の俺に殴られる。

 

『失敗か』

『ちゃんと避けて分裂しろよA』

『いや、あの不意打ちに近いのを避けろってのは無理、うわっと』

 

 反論を最後まで言うことを許さず俺は繰り出された一撃をぴょいんと避け、二人へと分裂した。

 

『そうそう、その調子』

『急げよ、ここに居る不死騎団の俺達を全員合体して吸収すればいくらかのレベルアップにはなるだろうけど、そうなってくると合体した奴らの代わりに不死騎団で隊長やる俺が不足するからな』

 

 合体した分を分裂して補充する。それが俺に課せられた役目の一つであり。

 

『合体吸収されてレベルアップした分、賢さだって増してる。合体前の俺達がああでもないこうでもないと考えるより――』

 

 合体後に分裂した俺の方が良いアイデアを思いつく筈。

 

『やはりAに責任とってメラゴダインしてもらうしかないか』

『賛成』

『やむなし』

 

 筈だった。

 

『何だよメラゴダインって!』

 

 マーマンにもマーマンダインって上位種が居たがメラゴーストの上位種って訳ではないと思う。

 

『こう、猛烈に嫌な予感しかしないんだけど』

『大丈夫、俺達がスカラの呪文はかけるし、ぴょいんで物理攻撃は無効化出来るだろ? 運次第だけど』

『しかも分裂までできるかもしれないんだ』

 

 なんてお得と俺以外の俺が声を揃えるが、何だそれ、通販番組か。

 

『全然お得じゃないだろ! それにさっき余裕で死ねるって言ってなかった?!』

『大丈夫、俺にいい考えがある』

 

 ずいと近寄ってきた別の俺が得意げに胸をそらすが、全力で嫌な予感しかしない。

 

『まぁ、いずれにしてもこの短い時間で立てられる対策なんて知れたモンなんだ』

『運命を受け入れろ♪』

 

 口々に声をかけてくる別の俺は良い笑顔で。

 

『受け入れるかーっ! だいたいお前ら、俺の筈なのにキャラ変わってない?!』

 

 魔王軍に所属していた日々が俺をこうも変えてしまったのだろうか。

 

『少し急ぐぞ? 団長とダイ達が戦い始めたら決着までにそう時間はかからない。手遅れになったらそれこそことだ!』

 

 手遅れが拙いことは俺も同感ではあったが、前提のせいでどうにも首を縦に振れないのだった。

 




主人公、ここまでのツケを払わされる?

次回、六話「○○ゴダイーンッ!」に続くメラ。
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