ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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六話「○○ゴダイーンッ!」

『いいか、手順はわかったな?』

 

 それ程離れていない場所から、戦闘の音がする。不死騎団長が正体を明かし、伏せていたモンスターたちを嗾けたか、モンスター達は一掃されて団長とダイ達が戦ってるのか。

 

『窮地に陥ったダイを庇おうにも、歩くなり走って割り込んだんじゃ、気づかれる』

『原作でどうやって割り込んだかの描写はなかったが、そうなってくると考えられるのは一つ、上から降ってきたってパターンだ。ルーラと同じ効果のあるアイテムを使ったか、配下のモンスターに運ばせたかはわからないけどな』

 

 他の俺達が戦いの介入として選んだのはこの内後者の模倣だった。クロコダインの姿にモシャスで変身した俺は、同じくモシャスの呪文で変身した鳥の魔物に肩を掴まれ、空へと飛び立つ。

 

『いいか、着地の衝撃でモシャスが解けるようなヘマはするなよ?』

 

 送り出した俺の一人が釘を刺すが頷くような余裕もない。

 

(しっかし、結局この姿か)

 

 無論、この姿にも理由はある。不死騎団のモンスターから見れば獣王クロコダインは同じ魔王軍の軍団長であり、見かけたからと言って即座に攻撃してくることはない。魔王軍からの離反が明らかになるのは、原作だと不死騎団長ヒュンケルの攻撃からダイを庇った所なのだから。

 

(空にいて敵に見つかっても構わないってのは大きいよな、本当に)

 

 距離が開いてしまったダイ達を探す上でこれ以上の好条件もない。

 

「あそこか!」

 

 眼下の景色を見回していれば、ほどなくして、戦場は見つかった。

 

(戦闘中、それ自体は予想してたけど)

 

 見る限り不死騎団のモンスターと思しき人骨の剣士達はバラバラになって散らばっており、戦いは不死騎団長とダイ達の戦いへと移行していたらしいが、それだけでなく。

 

(こっちも話や下準備で時間をかけたから、間に合ったのを良しとすべきか)

 

 先ほど見かけた軽装とはうって変わり、不死騎団長は全身に鎧を纏っていた。

 

(完全武装ってことは前哨戦は終わってるな。そして、とりあえずこっちにも気づいている様子はない、と)

 

 俺はダイ達と不死騎団長の戦闘をじっと見つめながら尻尾を何度か振って合図を送る。

 

(これで下に居る俺にもヒュンケルが完全武装状態だってのは伝わったはず)

 

 同時に介入が近いかもしれないから気をつけるようにと言う意味合いの合図でもある。実際の介入前にも合図はするので、介入待機とでもいったところだろうか。

 

「ダイが窮地に陥るのは、完全武装後のヒュンケルとの戦闘中だが」

「クェ」

 

 俺のつぶやきに同意するように鳥の魔物になった俺が鳴き声をあげる一方、眼下で戦っていたのはダイではなく。

 

「むううううっ!! 閃熱呪文ッ!!」

 

 ヒュンケルに杖を向けポップが呪文を唱える。

 

「むんっ!!」

 

 放たれたソレは一直線にヒュンケルへと向かうも翳しただけの手に受け止められ。

 

「ああっ!!?」

 

 ポップが声を上げるもヒュンケルの掌で弾かれた閃熱は分かたれ散ってゆくだけ。

 

「かああああーッ!!」

「うわああああッ!!」

 

 それどころかヒュンケルが気合のようなものを発せばポップの呪文は跳ね返ってポップへ命中、吹っ飛ばされたポップの名をマァムが呼ぶもポップの身体は崩れかけた民家の壁に半ばめり込んでいた。

 

(そう、あの全身鎧には攻撃呪文が通用しないんだよな)

 

 俺の使える呪文の中では近接消滅呪文だけが例外だろうが、使用を禁じられている俺はあの場にいても戦力外通告を受けたも同然だっただろう。正直、ヒュンケルと俺はむちゃくちゃ相性が悪いのだ。にもかかわらず、これから介入しないといけないことを考えると、このままどこかに飛び去ってしまいたくもなるが。

 

(物理攻撃したところでたかが知れてるし、そもそも近接戦闘のプロフェッショナルである剣士に挑んで有効打を与えられるかも疑問だしな)

 

 と、俺が切り捨てた近接戦闘をマァムは選んだ。

 

「よせ……女を殺すなど性に合わん」

 

 視界の中で杖を構えたマァムにヒュンケルは警告し、これにマァムがバカにしないでよと食って掛かる。

 

「女だって生命をかけるわ……正義のための戦いなら……!!」

「……フン、それがアバンの教えというわけか……!?」

 

 鼻で笑うヒュンケルへあなたも教わったでしょうとマァムは続けた。

 

「先生は間違った人間には絶対にそのアバンのしるしを渡したりしないはずだわ!」

 

 そう叫ばれたとき、間違ってるどころか人間ですらない俺は、どうしたらいいのだろうか。俺が思わず視線を彷徨わせたのはきっと仕方ないと思う。

 

「……なんてことを!」

 

 俺がプチ現実逃避をしてる間にヒュンケルが手にしたアバンのしるしを指で弾いて捨て。これを非難しつつも、なぜ先生を憎むのかと尋ねるマァムへヒュンケルは答えた。

 

「それはアバンが……オレの父の敵だからだ!!!」

 

 と。ヒュンケルはこの地のとある町を旧魔王軍が焼いた折、赤子だったところを旧魔王軍最強の騎士であるアンデッドモンスターに拾われて育てられたという経緯があり。魔王討伐の為に旧魔王軍の本拠地に攻めてきた師匠に育ての父を討たれ、復讐の為に師匠に師事し、剣を習ったのだとヒュンケルは語る。

 

(暫くはこのままいろいろ語るんだっけ)

 

 既におおよそのことを知ってる俺としては上空での待機に飽き始めていたが油断はできない。

 

(確か、ダイの盾になるのは、マァムが戦闘不能になった後だった筈)

 

 そうでなければダイ達が離脱する時に残されたマァムは、逃げるなり抵抗しようとしただろうから。

 

「っ」

 

 記憶をおさらいしてる折に下から聞こえた轟音で思わず視線を落とせば、民家に大きな風穴があいており。

 

(えーと、おれ が たて に なって うける の って……この みんか に あな あけた わざ ですよね?)

 

 ゆっくりと救いを求めるように見上げた鳥の魔物は、俺と目を合わせなかった。

 

「無理! 無理だって!」

 

 下ではヒュンケルが技についてのエピソードだとかさっきの話の続きを始めていたが、ぶっちゃけそんなことはどうでもいい。逃げたい、そう思った矢先。

 

「クエ」

 

 短い鳴き声に頭上を仰げば、鳥の魔物が首の動きで下を示し、釣られてそちらを見ると近くの建物の屋上からこちらを見上げてるメラゴーストがいた。

 

「クエ」

「あー、補助呪文のかけなおしか」

 

 嘆息しておおよその理由を察した俺が頷くと鳥の魔物がその屋上へ近づくように高度を下げて行く。

 

『スカラ。これで次は必要ないだろう。気付いてたかもしれないが、マァムが倒されたぞ』

「え?」

 

 言われて戦場の方を慌てて振り返ると、倒れ伏したマァムからヒュンケルがダイに標的を切り替え、ダイの投げつけた火炎呪文を両断してるところだった。

 

「海破斬か」

 

 呪文は通じず、続くヒュンケルの攻撃でダイは手傷を負ってゆく。

 

「はぁ」

 

 おそらくそろそろだろう。

 

「クエ」

「わかってる。わかってるから、そっちも手はず通りにな」

『ああ』

 

 鳥の魔物に促され、不死騎団所属の俺と別れた俺は再び空へと飛び立ち。

 

「闘魔傀儡掌!!!」

 

 やがて、戦場ではヒュンケルの突き出した手の先で、ダイが宙づりとなったのが見えた時、俺は合図を送る。

 

「クエ」

 

 一声小さく鳴いた鳥の魔物が高度を下げ、俺は身構える。

 

「今度こそ最後だ!!」

 

 どんどん近くなってゆく地面、必殺の一撃の構えをとるヒュンケル。

 

「死ねッ!! ブラッディ―スクライド!!!」

 

 ダイ目掛け一撃が放たれ。

 

「ダメだッ……!!」

 

 どこかからポップの声が聞こえる中。

 

「ウグッ」

 

 すさまじい衝撃が、俺を襲ったのだった。

 




メラゴダイーンッ!!

次回、七話「逃げるのだ!!」に続くダイン。
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