ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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七話「逃げるのだ!!」

『本当にクロコダインの格好するの?』

 

 時は少し遡る。諦めきれず尋ねた俺に不死騎団所属の俺は仕方ないだろと言った。

 

『理由はいくつかあるが、まずAがメラゴーストの姿で庇おうとすると体格と言うか身体の大きさの問題でダイを庇えない可能性がある。頭の上を通り過ぎた一撃がダイに命中する、とかな? だから盾になることを鑑みれば、モシャスで体格のいい相手に変身するのは絶対条件なんだ』

 

 言われてみれば、なる程と言わざるを得ない理由だが、説明は終わらない。

 

『加えて、現段階でうちのモンスターに発見されて敵とすぐに見なされず、かつお前がモシャスで変身できる程度に格好を熟知してるのって言ったら、お前を攫ったって言うザボエラとデルムリン島で戦ったハドラー、そしてロモスのお城で戦ったクロコダインくらいだろ? うちの所属モンスターに化けた場合見つかると指示にない行動してるって不審がられるだろうし』

『あとは言葉の問題だな。ダイが意識を失ってて、まともに会話できる相手がポップだけだった場合、人間の言葉が話せる姿に変身してないと意思疎通できん』

 

 このうち小柄なザボエラは盾の役目を果たせず、ハドラーとクロコダインの二択に絞られる訳だが。

 

『ハドラーは移動と言うか緊急脱出にキメラの翼使ってたから、鳥のモンスターを使っての移動は不自然と』

『そういうことだな。空を自由に飛ぶ呪文であるトベルーラでも使えたんなら話は別だが、現状空を飛びまわってダイ達を探すのも空で介入タイミングを見計らうのも鳥の魔物に変身した俺達がやるしかない』

 

 すべての条件を満たすのがクロコダインのみなのだと言われれば、俺には何も言えず。

 

『この作戦に穴があるとすれば、クロコダインを運んでる鳥のモンスターを直接見られなかったことだが、そこはデルムリン島の鳥系モンスターの姿で代用すれば何とかなる筈だ』

『後は残ったAの身の処遇だな』

『いや、最後の割と一番大事なとこだろ?!』

 

 だが、続く問題とやらには聞き捨てならないモノがあって即座にツッコんだ。

 

『だって、Aは力尽きたらモシャスが維持できずメラゴーストに戻っちゃうだろ?』

『クロコダインなら手当てしてもらえたかもしれないけど、にっくきアバンの使徒のメラゴーストじゃあなぁ』

『じゃあどうしろと?』

 

 思わず俺が別の俺達をジト目で睨んでしまったとしても、きっと仕方ないと思う。

 

『と、これまでのうっ憤からAをからかうのはここまでとして、一応救出プランは考えてある』

『え』

『ただ、Aのやらかしを鑑みると、全部教えるとポカやりそうでなぁ』

 

 驚く俺に不死騎団所属の俺の一人が微妙そうな声音で頭を振り。あんまりだと言いたかったが、実際他の俺の手を煩わせてる俺にはさすがに言えず。

 

『その辺りは俺達を信じろ』

『ダイの盾にならず何とかする方法だと、ダイが敗北し、力不足を実感して修行するって流れを作れないから、これは避けられないしな。どこかの誰かさんがクロコダイン戦の実戦経験かすめ取った分の埋め合わせもしないと拙いだろうし』

『うぐっ』

 

 信じろと言う言葉だけでなく過去の失敗を容赦なく抉ってこられると、俺は否応なく理解させられた。

 

(口は禍の元、か。と言うより、俺と同じスペックの相手が複数いるなら、口で勝てるはずないってさっさと気付くべきだった)

 

◇◆◇

 

「な……なんだとォッ……!!?」

 

 ヒュンケルの驚く声が聞こえ。

 

「あああああっ……!!」

 

 ポップの驚く声が聞こえる。つまり、俺は何とか成し遂げたらしい。足元にはけたたましく床を金属が叩く音が聞こえ、浅くだが、腹部にヒュンケルの剣が刺さってるのが見える。

 

「バ……バカな……! 獣王……クロコダイン……!!?」

「ク……クロコダイン!? ……生きてたのか……!!」

 

 そう、モシャスのまだ解けぬ、クロコダインの姿を俺はまだ取れていた。

 

「な……なんの真似……いや、お前はクロコダインではないな!!」

「ええっ?!」

 

 だが俺の偽装をヒュンケルはあげた問いの途中で見やぶり。

 

「やはり、わかるか」

「当然だ! その両手の折れた剣! 扱う得物が違う時点で気づかぬ方がおかしいわ!」

 

 ヒュンケルの指摘に、俺はそうだろうなと思いつつ右の手の剣に視線を落とす。これは元々ダイが切り捨てた骸骨の剣士が持っていたモノだった。俺はヒュンケルとダイの間に割り込んだ瞬間、この失敬した剣二振りを交差させ、全力で己の身を守ったのだ。

 

(ナンバリング作品の方だと、身を守れば受けるダメージを大幅に軽減できる。そして――)

 

 不死騎団の一般モンスターの持つ剣だろうと無手よりはマシだ。剣二本を盾に、防御力を上げる補助呪文の重ねかけに加えて、ダメージを軽減する防御態勢まで用いて、ようやくモシャスが解けない程度のダメージに抑え込むことがかなったのだ。

 

(そうでもしなきゃ防げないから、ここでの原作乖離は目をつむって後で軌道修正するって話になったけど)

 

 俺も完全にクロコダインを演じ切るのは無理だと思ったので、これには同意せざるを得なかった。

 

「は? クロコダインじゃないって」

「説明は後だポップ!!」

 

 状況を理解できて居ないポップに俺は一声かけて尻尾で床を叩く。

 

「クエーッ」

 

 合図をしっかり見ていたらしく、降りてくるのは鳥の魔物に変じた俺。

 

「そいつでダイを連れて逃げろ! 説明は後だ!」

「エエッ!!? でも」

「時間がない、それに今のポップ達の強さではこいつには勝てん……!」

 

 逃げるのだと俺はもう一度ポップに言い。

 

「だっ、だけどマァムが……!! それにメラ公だって町のどこかに」

 

 仲間を置いて逃げるという選択肢をとれないのだろう、従う訳にはいかないといった様子のポップを見て、俺は嘆息する。

 

「やっぱり気づかないか、ポップ……俺がモシャスの呪文を使えることは知ってるだろうに」

「は?」

「と言うことは、お前がアバンに弟子入りしたメラゴーストか!」

 

 流石にこの緊急時でヒントの出し方が甘かったか。だがヒュンケルの方は気づいたらしい。

 

「その通り。ポップ達とはぐれちゃって、ようやく見つけたと思ったら結構危なそうだったからね。魔王軍のモンスターに邪魔されなくてダイの盾になれそうな大きさで、俺が変身できる相手ってなるとこの格好しかなくて」

「割り込んで仲間の盾となったという訳が」

「そう」

 

 原作ならこの後クロコダインがヒュンケルと会話し、その心に波紋を投げかけるのだが借り物の姿での心を揺さぶれるかと言うと、全俺が難しいと判断を下した。だから、俺の役目はもう半分果たしたといえる。あとはダイとポップにこの場を離脱して貰わないといけないのだが。

 

「だから早く逃げて。正直、あの技もう一度防げるかは解からな――」

『団長―ッ!』

 

 そうして俺がポップを説得しようとしていた時だった。人骨の魔物を引きつれたメラゴーストが姿を現したのは。

 

「逃げてポップ! マァムは俺が何とかするから! お願い!」

「クエッ」

 

 敵の増援に焦った態で叫べば、後半に鳥の魔物が応じ。

 

「ふざけるな! みすみす見のがすと思うのかッ!!」

「思うよ」

 

 俺が答えた直後だった。

 

『ベ・ギ・ラ・ゴ・ンッ!』

「な」

 

 どこからか放たれた極大閃熱呪文がヒュンケルに直撃した。

 

「なっ、な、な……」

「クエェッ!」

「うわっ」

 

 驚きに呆然とするポップの身体は隙だらけで、視界の端で鳥の魔物がその身体をがっちり捉えて飛び去り。

 

(いきなりベギラゴンとか、過激と言うか、何と言うか)

 

 ちらりと視線を向けた先に居たのは、アバンのしるしごと俺の姿へ変身した不死騎団所属と思われる俺の一人だった。

 




一応、盾にならないプランもあったらしいのですがダイのレベルアップが滞って先の敵に対処できなくなりそうだから、と言う理由で没になった模様。

次回、八話「本気」に続くメラ。

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