ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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八話「本気」

「どういうことだ?! なぜッ」

 

 疑問に思うのは当然だろう。アバンの使徒のメラゴーストだとクロコダインの姿の俺が名乗ったと言うのに、別の場所に現れたアバンのしるしをつけたメラゴーストが攻撃してきたのだから。

 

(まぁ、呪文の効かない鎧を纏ってるから、実質驚かせただけなんだけど)

 

 極大呪文まで使ったのは、不死騎団のメラゴーストで無いという証明の意味合いもあるのだと思う。なぜなら、合体する前の不死騎団の俺は相変わらずメラの呪文しか使えなかったのだ。

 

(「これがパプニカを滅ぼしてでも居れば新たに呪文契約させてもらえてた可能性もあるかもしれない」だったっけ)

 

 自分で考え動けるモンスターが不死騎団では貴重だったようだが、使える呪文がメラだけでは戦力としては微妙と言うレベルじゃない。

 

「それがこの姿をとってるもう一つの理由。もう知ってると思うけれど、俺はアバンのしるしがなくては魔王の意思の影響を受けてしまう」

「何ッ?!」

 

 わざわざ弱点を明かしてしまうわけだが、ヒュンケルは驚きの声を上げ。

 

「あれ? ザボエラには知られてたから、知ってるものだと思ってたけど……魔王軍も一枚岩じゃないのか。それとも、人間だから信用されて無かったり?」

 

 ここぞとばかりに俺は魔王軍への不信の種を撒く。

 

「う、煩いッ! だいたい、それの何があのメラゴーストと関係するッ!」

「関係するとも。この姿なら、しるしが無くても魔王の意思の影響は受けず、しるしを譲ることで分裂した俺も魔王の意思の影響を受けずに行動できるのだから」

「な」

 

 俺の偽りの種明かしにヒュンケルは絶句し、動きが止まってるのをいいことに俺は浅く刺さったままの剣を引き抜く。密かに周囲を盗み見れば、鳥の魔物の俺はダイも運んでいってくれたようで、残されたのは俺とマァムのみ。

 

(後は俺が健闘虚しく撤退する流れに持ち込めればある程度の軌道修正にはなると思うけど)

 

 問題は呪文の効かないヒュンケルが相手だと、健闘するどころか逃げ回ることしかできないということだ。

 

「しかしそうなると、困った。なら、俺がハドラーに深手を負わせたこともひょっとして知らなかったりするかもしれないしな」

「……なに?」

 

 故に、俺がまずすべきは、ハッタリ。

 

「まさか」

「その鎧はベギラゴンにも耐えたようだけど、ハドラーに深手を負わせた呪文でも耐えられるのかな?」

 

 こちらは知って居たようで、一歩退くヒュンケルに俺は笑んで見せる。ここからが駆け引きのしどころだ。幸いにも今の俺にはサポートしてくれる味方が多数いる。

 

(これなら間違いなく逃げられ……うん?)

 

 安心感で心に余裕ができたからだろうか、俺の頭にふと一つの閃きが生まれ。

 

「いいだろう、受けて立つ!」

「なに……?!」

「どのような呪文であろうとオレの鎧には傷一つ付けられんことを教えてやろう! ……いくぞッ!」

 

 想定外の反応に驚きの声を上げた俺へとヒュンケルは再び構えをとり。

 

「喰ら」

「カアァーッ!!!」

 

 技を放とうとしたところで俺は息を吹きつけた。ただの息ではない、浴びた者を麻痺させる焼けつく息だ。

 

「ぐ、あ……しまっ」

 

 うめき声を漏らしたヒュンケルが前のめりに倒れこみ。

 

「……勝った……!!」

 

 俺は思わず呟いたのだった。

 

『団長―ッ!』

 

 が、我を忘れられたのは、ホンの一時。増援のモンスターを引きつれたメラゴーストがこっちに向かって来ようとし。

 

『A』

 

 地の底から響いてきそうな声が後方から聞こえてきた。うん、わかってる。言わんとすべきことは解かる。

 

(けど、効いちゃったんだもん、焼けつく息!)

 

 他の俺と合体したことでレベルの上がった俺のモシャスは完全版となり、変身した相手の特技や呪文などもコピーできるようになっていたのだが、つい先ほど気が付いたのだ。ヒュンケルは人間で、変身した俺は焼けつく息が使えたことを。

 

(多少動きを鈍らせれば逃げる暇くらい稼げるかなって思ったんだけどさ)

 

 ヒュンケルは痺れて動けなくなり、まさかの完全勝利。原作に近い形に修正しようと考えてた他の俺達の目論見を見事にぶっ壊してしまったわけだ。

 

『こうなっては、仕方ない。ベギラマッ!』

 

 嘆息し、ヒュンケルの方に駆けてくるモンスターの一団に首からアバンのしるしを下げた俺が腕を突き出して呪文を唱え。

 

『拙い! 皆、伏』

 

 言葉を最後まで言わせることなく、メラゴーストと一体のみを残して骸骨剣士達を呪文が消し飛ばすが。

 

『っ、仕損じたか。なら、ルーラッ!』

『させるか! その女を、突き飛ばせ!』

 

 俺以外の俺は、どこまで織り込み済みだったのか。俺、そしてアバンのしるしを下げた俺、そして動けないヒュンケルとマァムの身体が浮かび上がりかけたところで、生き残った骸骨剣士がマァムを突き飛ばして代わりに浮き上がり。

 

『いいか、この女は預かっておく! 団長の身柄と交換だ! 忘れるなよっ!』

 

 モンスターを率いていた俺の叫び声を聞きながら移動呪文によって俺達の身体は運ばれていったのだった。

 




何やってんだメラゴダイン!

【ここでちょっと解説、原作の流れを守らないといけなかった訳】
実はこの戦いの後、ハドラーがザボエラを連れてヒュンケルの拠点に視察に来るのです。
そも、今回の勇者ダイ討伐をハドラーは全軍団力を集結の上で総攻撃するつもりでした。
だが、大魔王がちょうどダイの向かう先にいたヒュンケルにダイ抹殺の勅命を下すという舐めプをし。
本来なら総攻撃の絶望が、不死騎団のみとの戦いになったと言う経緯があったのです。
他の軍団長には不満を持つ者もいて、それでもまかり通ったのは大魔王の勅命だったため。
だが、視察の時点でヒュンケルが苦戦や敗北をしてしまっていると、それに大義名分を経て全軍団の総攻撃と言うヘルモードに難易度変更される可能性が出てきてしまうのです。

……にもかかわらず、勝ちましたけどね、メラゴダイン。

次回、番外5「攫われたあとで(???視点)」

絶望を回避するための悪あがきが始まる。
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