ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十話「ダイ、修行中1」

「メラ公、無事だったのか? マァムはどうした?」

 

 危うくパプニカの兵士、原作通りならバダックと言ったその人に斬りかかられそうになった後、やって来たポップは俺の無事を喜んでくれたが、後半は素の姿では答えても伝わりようがなく。

 

「ポップ! メラゴースト君が来たって聞いて」

「ダイ! ああ、こっちだ」

 

 通訳できる相手の声で振り返ったポップが手招きし、ダイがやって来たところで、俺は重い口を開いた。

 

『ごめん。マァムと一緒に離脱しようとしたんだけど、脱出の際に邪魔されて』

 

 ハドラーの視察が終わるまではヒュンケルに勝ったことは伏せておいた方が良いと言う別の俺の判断の元、二人に明かすことができたのは、マァムを連れだせなかったこと。そしてヒュンケルはマァムをダイ達をおびき出す人質にするつもりのようであるということ。

 

『……ごめん、任せてって言ったのに』

「メラゴースト君……ううん、メラゴースト君までやられちゃうよりよっぽどいいよ」

 

 謝る俺にダイは頭を振り、ポップは俯いたまま何も言わず。

 

「はぁ……メラ公、人質ってことはまだマァムは無事なんだろ?」

 

 沈黙を挟んで尋ねて来たポップに俺は頷く。

 

「なら、修行だ! ちょうど新しい呪文の契約を済ませたとこだしな」

「……新しい呪文……!?」

 

 キョトンとするダイへポップは言う。昨日言ったろ、と。

 

「何としてもおれたちの力でヒュンケルを倒さなけりゃならないんだ」

 

 原作と違って、そのおれたちと言うのにはきっと俺も含まれてるのだろうななんて思う俺の前で、ポップはさらに言葉を続ける。

 

「剣ではヤツに勝てない……かと言って空裂斬ってのは一日や二日でマスターできるシロモノじゃないって言う話だしな……」

 

 師匠はそれを含めて一週間でダイにアバン流刀殺法をマスターさせようとしてた気がするが、それも師匠と言う教え手がいてこそだろうし、空裂斬を覚えるという選択肢をとらなかったことはきっと正しい。

 

(ヒュンケルも空裂斬は使えてなかったもんな。会得に必要な心眼は持ってた気がするのに……つまり心の問題。あれ?)

 

 と言うことは俺がヒュンケルにモシャスしたら心の問題がクリアされて空裂斬も使えるのでは、と一瞬思ったところで頭を振る。

 

(どう考えても俺の方が精神的にポンコツだもんな。強い憎しみの心的なモノはないかもしれないけど、他の部分の差がある時点で、たぶん無理)

 

 そもそも、仮に使えても出番は来ないに違いない。

 

「ダイ、いくぞ! メラ公も」

 

 俺が考えてる間に結論を出したようで、ポップは俺達を促して歩き出し。

 

「……ポップ。呪文で勝つって、ヤツの鎧は呪文をはね返しちゃうんだぜ」

 

 たどり着いた開けた場所で地面に杖を突き刺すポップの背にダイが問うが、無理もないと思う。

 

『俺のベギラゴンも耐えられたし』

「え」

 

 ぼそっと零した言葉にダイががばっと振り返り。

 

「べっ、ベギラゴンってメラゴースト君がクロコダインをやっつけた時に使った呪文だったよね?」

「はあっ?! マジか?!」

 

 ダイの言葉にポップまで動揺したことで、俺は遅れて要らんことを言ったことに気が付く。

 

『だ、だから逃げることしかできなかったんだけど……それでも、さっきの様子からするとポップには何か案があるんでしょ?』

「あ」

 

 慌てて話を元に戻そうとすれば、ダイもポップが杖を地面に立てたばかりなのを思い出したのか俺の言葉を通訳して伝え。

 

「あー、うん、まぁな。おれが契約を済ませた呪文はラナリオンって雨雲を呼ぶ呪文なんだ」

「雨雲……?」

 

 単語を反芻するダイにポップは説明する。昨日一晩中何かヒュンケルに通じる呪文はねえかって考えてたんだと。

 

「あったぜ! ひとつだけ……確実にヤツにダメージを与えることができる呪文が……!」

『雷撃呪文か』

「……雷撃呪文……!!?」

 

 原作の流れを思い出して俺が呟くと、それを拾ったダイが驚きの声を上げ。

 

「ああ、しかしよくわかったな?」

「いや、おれじゃなくてメラゴースト君が……」

 

 一晩考えたモノを言いあてられたからか、悔しさと同じくらいの意外さを顔に浮かべたポップが肯定して見せると、ダイは正直に俺を示し。

 

「そうか、メラ公か。話を続けるぜ? ヤツの鎧はあらゆる呪文をはじくて言ってたけど……金属でできてることに違いはねえはずだ」

 

 電撃呪文ならきっと鎧をつたってダメージを与えられるぜとポップは主張する。

 

『つまり、ポップが呪文で雷雲を呼んで、それを利用してダイが雷を敵に落とすってことか。補助があるならダイの魔法力でいけるかもしれないし』

 

 原作通りの流れだが、ならばと気になることが一つあった。

 

「あ」

「どうした?」

「あのね――」

 

 俺のつぶやきを拾ってポップの狙いを理解したダイがポップに呟きの内容を伝えるのを視界に入れつつ、俺は首傾げる。

 

『それって、俺要らないよね?』

 

 明らかに二人でヒュンケルに挑むのが想定の作戦だ。

 

「あー、まあ、あの時はお前がどうしてるかわかってなかったからな」

『ああ』

 

 ダイを介して俺の疑問を知ったポップは気まずげに説明し。

 

『じゃあ俺はどうしよう? 修行するって言うなら、手伝えることは色々あるけど』

「手伝えること?」

『例えば……モシャスッ』

 

 それっていったい何と言いたげなダイの前で、俺は変身した、ほかならぬ不死騎団長、ヒュンケルの姿に。

 

「な」

「雷撃呪文あてられるのは困るけど、模擬戦の相手ぐらいならできるよ?」

 

 そう言ってから、近くにあった小枝を拾い、空に向けて構え。

 

「ブラッディースクライドー!」

 

 放つのは、あの時見た技。小枝を利用したのは技の余波を誰かに見られることを警戒してのことだ。よくよく考えると、これから雷を落としまくるんだろうから、無駄な配慮だった可能性はあるけど。

 

「……メラ公、そんなこと出来るなら、その格好で戦えばよかったんじゃねえの?」

「無理。変身できるようになったのがそもそもあの時戦ったからだし、技も本物には威力が及ばない。それに、入れ替わり立ち代わりの激しい戦闘になったら、他の人から見分けがつかなくなるかもしれないから」

 

 あくまで模擬戦専用だと、俺は告げ。

 

「ポップが魔法力を回復するのに休憩してるときとか、ダイの手が空いてる時もあると思うし」

 

 全力で協力するよと俺は本物ならまず浮かべないであろう笑顔で言ったのだった。

 




と言う訳で、クロコダイン戦で泥棒した実戦経験を主人公はお返しする模様。

次回、十一話「ダイ、修行中2」に続くメラ。

長くなったので、二話に分割。
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