ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十一話「ダイ、修行中2」

「……天空に散らばるあまたの精霊たちよ……我が声に耳を傾けたまえ……」

 

 ポップが詠唱するのを聞きつつ、俺はヒュンケルの姿でひたすら木の枝を振っていた。

 

(雨雲を呼ぶ呪文、ラナリオンか。ポップが詠唱するところって、久しぶりに聞いた気がする)

 

 この修行の前が師匠とポップと三人で旅をしてた時なので、振り返ると一週間くらい前になるだろうか。

 

(あれ? 割とつい最近だわ)

 

 強敵との戦い、出会いと別れ、濃厚な日々を過ごしていたせいか、一か月以上経っているような錯覚がしていたが、どうやら気のせいだったらしい。

 

(ともあれ、呪文は無事成功したみたいだ)

 

 空に雲が集まりだして暗くなってゆく。ポップの顔が辛そうなのが少し気がかりだが、いざとなれば俺がダイを引き受けて模擬戦をし、休ませればいい。

 

(この系統呪文のすげえのになると夜と昼をひっくり返したりできるんだっけ?)

 

 俺が口を挟んだせいでポップは言わなかったが、原作だとそんなことを言ってた気がする。

 

(すげえの、か)

 

 その昼夜逆転呪文なら実はもう使えるのだが、流石にこれは黙っておこうと思うが。

 

(って、いけないいけない。今は素振りに集中しないと)

 

 俺は頭を振って意識を木の枝の動きに戻す。

 

「あっちも修行してるんだし、俺もこの時間を有効活用しないと」

 

 こうして木の枝を振ってるのにも意味はある。呪文は契約できた上で呼び出す力量が必要になるが、剣技に契約の様な前提条件はない。故に既に会得してるヒュンケルの身体でアバン流刀殺法の動きをなぞることで、技を身体に覚え込ませれば、他の姿にモシャスした時でもアバン流刀殺法が使えるのではないかと俺は考えたのだ。

 

「いや、アバン流刀殺法だけじゃない。師匠の姿でブラッディ―スクライドを放つとか、クロコダインの格好で不完全版アバンストラッシュとか――」

 

 原作ではありえないことが可能となると、夢は広がる。

 

(けど、まさか本当にブラッディ―スクライドを放てるとはなぁ)

 

 人間だったころ、傘でごっこ遊びをした技を実際に放てたという事実は感慨深く。

 

「メラ公、ダイを任せてもいいか?」

「うん? あ、うん」

 

 消耗した様子のポップに声をかけられ、我に返った俺は頷きを返した。

 

(原作だと会得までぶっ続けで練習してた気もしたけど、ここには俺がいるからな)

 

 ダイとポップの二人だけじゃないという精神的余裕と、模擬戦の相手が居るからという理由があれば充分納得できる展開だ。

 

「はぁ、はぁ……それじゃ、メラゴースト君、お願いね」

「いいけど、大丈夫? 魔法力使ってたからか結構お疲れみたいだけど」

 

 明らかに消耗した態のダイを見て俺は気遣うが、ダイは首を横に振り。

 

「気を使ってくれてうれしいけど、あいつ強かったしあいつと戦う練習ができるなら、しておきたいんだ」

「そう」

 

 ダイの覚悟を聞いて、俺も気合を入れることにした。

 

「ならば油断も手加減もせんッ! 覚悟しろ小僧ッ!」

「え? メラゴースト君?」

 

 俺のキャラが変わってダイが目を剥くが、今の俺はダイの仮想敵のヒュンケルなのだ。

 

「何を呆けているダイッ! 本物との戦いに備えてのモノなら、こちらもより本物らしくせねばならんだろう!」

「……いや、それはそうかもしれないけどよ、性格変わりすぎじゃねえか、メラ公?」

 

 横合いからへたり込んだポップが口を挟んでくるが、俺は性格を変えたつもりなどない。ただ、役になり切ってるだけだ。

 

「行くぞ、ダイッ!」

「っ、うん!」

 

 一瞬気圧されつつも、すぐに表情を切り替えたダイは身構え、そこに俺は枝を振るう。

 

「アバン流刀殺法、大地斬ッ!」

「うわっ?!」

「ほう、流石にこれは避けるか、なら――」

 

 バトルジャンキーの気などなかったはずだが、軽く俺の斬撃を避けたダイの姿に少し楽しくなって、俺はどんどん攻撃を繰りだしてゆく。

 

「っ、アバン流刀――」

 

 無論、ダイも逃げ回るだけではない。武器を構え反撃を繰りだそうとし。

 

「「大地斬ッ」」

 

 互いの技が同じタイミングでぶつかり合って、相殺される。

 

「ッ」

 

 俺が本物だったなら、ダイの大地斬で相殺など不可能だっただろうが、やはりそこは本物と偽物の差か。それとも、この模擬戦の中ででもダイが急速に力を付けていっているのか。

 

「まだだッ、喰らえ! ブラッディ―スクライド!」

 

 同じ技を出しても相殺されるだけ、そう踏んだ俺はダイでは使えぬ技を繰り出し。

 

「な……なんだとォッ……!!?」

 

 それは、ダイ以外へと直撃した。

 

「へ?」

 

 目を見張ったポップが、すぐにこっちを見る。俺はすぐにでも頭を振りたかったが。

 

「獣王……クロコダイン……!!?」

 

 そう、俺の一撃の前に身体を投げ出したのは、どこかで見たピンクのワニさんだった。

 

「フフフッ……ダイたちは殺させ」

 

 おれを見据えていたクロコダインの言葉が不自然に途切れたのは、自分にめり込んでいたのが剣で無く木の枝だったことに気が付いたからだろうか。世界が死んだかのような重い沈黙に周囲は包まれ。

 

「えーと」

 

 何とか口を開き、辛うじて静寂を破るが、俺はどうしたらいいんだろう。

 

「な、なぁ、メラ公」

「うん、たぶんだけど……このクロコダイン、本人」

 

 何とも言えない表情のポップのものと視線がぶつかった俺は、微妙そうな表情で頷き。

 

「けど、クロコダインが何であんなことを」

「……とりあえず、話を聞こう」

 

 不思議そうな顔をしたダイの言葉に俺はそう提案したのだった。

 




来ちゃった、軍団長ご本人。(ただしヒュンケルにあらず)

そんなことだろうと思ったって方も多いかもしれませんが、ヒュンケルに化けたのはこうして本物ダインと合流する為でした。

修行で疲弊したポップがへたり込んでましたし、呪文練習と模擬戦で周囲は戦闘中のように荒れ果ててたので、ワニさんが誤解してもきっと仕方ないよね?

次回、十二話「ヒュンケルの元へ」に続くメラ。
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