ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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先生助けて! コメディちゃんが息をしてないの!!

……って、前回のあとがきにぶっこみたくなった僕は悪くないと思うの。


番外7「牢にて2(ヒュンケル視点)」

『俺はそもそも人にどうこう言えるような資格なんてないから』

 

 天井を仰いで言葉を続けたメラゴーストに、オレは気づけば問うていた。

 

「資格がない?」

『ここまでも色々とやらかしちゃってるし、正義の味方でアバンの使徒って胸を張って言えるかって言うとちょっとね。そう言う事情なら、ヒュンケルの前で言うのもあれだけど、恩ある師匠の言葉にはそぐいたいと思うけど、なかなか』

 

 アバンを害そうと思っていたことも口にしたし、けなしもしたというのにそのメラゴーストが向けてくる目にオレへの非難の色はなく、ただ人魂の身体を揺らしながら答え。

 

『そんなハンパな俺だし、半人前の言葉なんて今は意味もないでしょ? それともここで、俺が後できっと後悔するから改心して魔王軍から抜けて仲間になってって言ったら首を縦に振る?』

「冗談も大概にしろッ!」

 

 おそらく本気ではあるまい、それでも聞き捨てならない言葉にオレが敵意のこもった視線で刺せば、だよねと言ってそのメラゴーストはくるりと背を向けた。

 

『敵討ちが行動の原動力だって言うなら、その一点については俺達も非難できるいわれはない。マァムとかダイは魔王軍と戦うのって師匠の敵討ちの一面もあるんじゃないかなって思ってるし』

「……待て、おまえは違うのか?」

 

 去り際に残した言葉の後半に自分を入れて居なかったことにオレは質問を投げたが、返ってきたのは困ったようなヤツの笑い声だけで。結局そいつがどういうやつなのかよくわからないまま、その日は終わり。

 

◇◆◇

 

「……何のつもりだ? わざわざまたその姿をとるとは」

 

 翌日クロコダインの姿でまた現れたあいつを睨むと、視線をそらした面会者は暫く沈黙してから口を開いた。どことなく気まずそうにオレだ、と。

 

「ま、まさか……クロコダイン?! ど……どういうことだっ?! 何故――」

 

 一瞬だけ目の前の獣王がオレを助けに来たのかとも考えたが、それならばすぐにでもオレを縛る縄を切るなり解いているだろう。

 

「おまえの説得を……頼まれてな」

「バカな! 気でもふれたか?!」

 

 そしてこちらの疑問を察したかの様に明かした内容にオレは思わず叫んでいた。説得などと言う言葉が出てくる時点で魔王軍からのものではあるまい。

 

「クロコダイン……くわせ者の多い六軍団長の中でも、おまえとバランだけは尊敬に値する男だと思っていたが……失望したぞ。……あんな子供の軍門に降ってしまうとはな……」

「……子供、か」

 

 オレの視線に貫かれながらも獣王は微かに笑い。

 

「何がおかしいッ!」

「伝わっていなかったか? オレを倒したのは、おまえの言う子供ではなく前にここを尋ねて来たメラゴーストの方だ。加えて、説得を頼んできたのも、あいつだ」

「なッ」

 

 オレは一瞬言葉を失った。先ほどの笑いはオレの考え違いに向けたモノだったのか。

 

「しかし……なぜそんなことを引き受けたのだ、おまえほどの男が……」

 

 信じられない思いが大きかった。

 

「ヤツらは我らが魔王軍の敵なのだぞ……」

「『我らが魔王軍』か……フフフッ」

 

 絞り出したオレの声にクロコダインは笑い。

 

「ここ数日のことは知らんが、オレにはおまえが魔王軍のために戦っているようには思えなかったぞ……おまえはまるで人間たちに対する恨みだけで戦っているように……見えた」

「ッ」

 

 怒声と共に何がおかしいのだと睨めば、返ってきた言葉はまるでこちらの心を見透かしたかのようでオレは固まり。

 

「オレもそうだ。人間どもを軽蔑していた……ひ弱なつまらん生き物だと思ってた……」

 

 だが、あいつらと戦ってわかったんだとクロコダインは言う。

 

「人間は強い……! そして優しい生き物だ! 共に力を合わせ喜びと悲しみを分かち合うことができるんだ」

 

 その言葉にオレが抱きあげた時愉快そうに笑った赤ん坊の声を思い出し。

 

「だっ……だまれ……! 人間? オレを倒したのもおまえを倒したのも人間ではなくメラゴーストだっただろうがッ!」

「……あいつも人間だったらしい」

 

 振り払うように叫べば、クロコダインの口から飛び出したのは、予想もしない言葉だった。

 

「なんだとッ?」

「あいつはメラ『ゴースト』だろう? 気が付くとあの身体だったらしいが人間だった頃の人格と記憶は残っていて、人ならざるモンスターの身体、人と混じって暮らしてゆくこともできないだろうと途方に暮れていたところで弟子の少年を一人連れたある人物に出会ったんだそうだ」

「まさか」

 

 弟子を連れたと言われた時点で浮かび上がったのは、あの男の顔、父の敵の男の。

 

「そうだ……勇者アバン。あのメラゴーストは師匠と呼んでいたな。そして、人の人格と記憶を残していることを話したのもそのアバンにだけだったそうだ。もう故人であるなら、これで知っているのはオレとお前の二人だけだな……」

「なぜそんなことをお前が知っているッ!?」

 

 衝撃を受けつつ問えば、説得を頼まれたときにあのメラゴーストが話したのだと言う。

 

「『中身がどうあれ外はモンスターという時点で自分はハンパもの』とも言っていたが、心と記憶は人間のモノ、ゆえにあいつ自身が認めて居なくてもあいつも人間、オレはそう思った。あいつは自身を卑下したが自身の身を顧みず仲間を救おうとし、自分の意思に反し操られかけ、戦場において戦うことさえ許されない状況に卑怯な手で追い込んだオレにさえ恨み言一つ言わぬ高潔な男だ」

「ッ」

 

 ハンパと言う言い方には確かに覚えがある。しかし、クロコダインがそれ程評価するヤツだったとは。

 

「ヒュンケル、人間はいいぞ……人間であるおまえに……その素晴らしさがわからぬはずがない……おまえは見て見ぬふりをしているのではないか……」

「黙れッ、黙らんかッ!」

 

 

 身体が自由であれば殴り飛ばしてでもその口を閉じさせていただろう。だが、今のオレにできることはクロコダインに背を向けることぐらいしかなく。

 

「ヒュンケル……」

 

 何か言いたげにオレの名を呼んだ獣王はそのまま牢を出ていった。

 




 と言う訳でクロコダインのターンでした。主人公がクロコダインに打ち明けたのは原作の人間讃歌的な部分が機能不全を起こしちゃまずいからと考えたからの模様。

 同じ負けた者同士なので敗者の弁と笑い飛ばすこともできず、分体の拾った赤ん坊との触れ合いも地味に効いてた模様。

次回、十三話「習得・電撃呪文」に続くデイン
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