ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「……ハァ、ハァ」
本物ダインの説得がうまくいってることを祈りつつ連絡に戻ってきた俺が目にしたのは、雨に打たれながら息を荒くしつつ地面に立った杖を見つめるダイとポップだった。
(雷撃呪文の特訓中か)
これは声をかけない方がよさそうだなと思いつつ、じゅっと言う音を聞き、空を仰ぐとポップの呼んだ雷雲から降る雨。
『ちょ』
俺は慌てた。俺の身体はオレンジ色の人魂で、ある意味燃える火みたいなモンである。雨に打たれた火がどうなるかなんて説明するまでもない。とっさに雨宿りが出来る場所を探したが、左右を崖に挟まれた荒地にそんなモノはなく。
『っ、モシャス!』
逃げ場のない俺が頼ったのは、変身呪文。
「で、クロコダインか……」
さっきまで本物がヒュンケルをうまく説得してくれるように考えて居たからだろう。深く考えず思いついた姿に変身したらこれだった訳で。
「……とりあえず背を低くしておこう」
ガタイがでかいから雷が落ちやすそうな気がして、俺は荒地に腰を下ろし、二人の特訓を眺める。
「お尻が濡れて冷たい」
雨の中なら当然だし今の俺のお尻は泥だらけかもしれない。
(そう言えばモシャスがとけたらこれ、どうなるんだ? メラゴーストだから泥が乾いて剥がれるのか、それとも……)
割としょーもないことを考えてる間もダイが掛け声を発し杖を指さす度に雷は落ち、かなりの数が杖へと命中している。
(習得まであと僅かっぽいな。移動呪文でこの大陸に来たのが早まってはいたけど、休憩入れて俺との模擬戦したりしてた分もあるからルーラ短縮分まるまる早くライデイン習得ってことにはならないだろうし)
習得までにどれくらいかかるかをおおよそで算出し、俺が次に思考を傾けたのは、ヒュンケルたちの拠点である地底魔城と囚われているマァムについてだった。
(ヒュンケルはおらず、別の俺達がモシャスで成り済ましてる訳だけど、バレたりしてないよな? 複数俺が居るわけだし、マァムの身は安全だと思うけど)
この状況を引き起こした俺に案じる資格なんてないかもしれない。
(けど、やっぱり気になる)
マァムの置かれている状況もではあるが、一番気になるのはこの後他の俺達がどうするつもりなのかだ。
(マァムと交換でヒュンケルを戻すとして、そのヒュンケルが誰かが自分の身代わりをしていたことを知ったらどうなる?)
ヒュンケルの認識でモシャスが使えるのは、俺ことダイ側のメラゴーストと俺から分裂したメラゴーストのみだ。
(俺かその分裂体が成り代わってたとしたら、攫われるのを目撃してマァムと交換だと言ってたメラゴーストが何故入れ替わりを黙認してたのかって話になってくるし)
モシャスには効果時間がある。一人でなり切るのには無理があり。
(消去法であっちのメラゴーストがこっちと繋がってると気づくか、いつの間にか部下が俺の分裂体に置き換えられてると考えるか)
思いつく限り状況に矛盾しないのはそのどちらかなのだ。
(そして、交換ってことはマァムもこっちがヒュンケルを捕まえてたってことに遅くても人質交換の段階で気づくわけで)
別の俺達がそこをどう丸く収めるつもりなのかが、俺にはわからない。
(ダイ達との戦いの直前に戻して、誰かが自分に成り代わってたことに気付かせないまま決戦に持ってくとか?)
例えば解放したヒュンケルがマァムを助けに来たダイ達と鉢合わせするようにしてリリースするといった感じで。
(それ、タイミングがものすごくシビアになると思うんだけど)
果たして別の俺にそれが可能なのか。
(いや、これも俺の勝手な想像だし)
確認するにはヒュンケルの配下になってる俺に接触する必要がある。
(モシャスであっちの俺に変身して地底魔城まで行って接触すれば不可能じゃないんだよな)
ダイ達にはモシャスで敵のメラゴーストに化けて偵察してくるとでもいえば不審な点はない。
「ライデイーン!!!」
思惑にふけっていた俺を我に返したのは、そのダイの声と空を走った稲光だった。
「ハァ、ハァ……」
「……よし。……百発百中だっ……!」
ダイが微かに笑みを浮かべ、ポップが小さく頷いて、二人は糸が切れたように崩れ落ち。
「お……おい! しっかりしろふたりとも……!!」
ダイ達に慌てて駆け寄ったことで俺はようやくもう一人ダイ達を見守っていた存在が居たことに気付き。
(この様子だと決戦は明日か)
移動呪文で他の俺に報告すべく、俺は雨をしのげそうな場所を探して歩き出しながらモシャスの効果が切れるのを待つのだった。
雨の日は無能どころか生存の危機。
次回、十四話「潜入! 死の迷宮」に続くメラ。