ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
『しかし、これで本当に良かったんだか』
賽は投げられた、それはわかっている。デルムリン島に居る俺に、ハドラーによる視察は怪しまれることなくやり過ごしたことを伝えたのが昨日のこと。
(原作通り視察についてきたザボエラが残ってちょろちょろしてたけど、オリジナルがヒュンケル団長に明かした「アバンのしるしがないと魔王の意志の影響を受けてしまう」って弱点が何故伝わってなかったかを追及したら追っ払えたし)
ダイ達の方もライデインの呪文を二人がかりではあるが完成させたという報告も受けている。
『ここまで来たなら、突っ走るしかないだろ』
『団長が帰ってきたら、それほど間を置かず決戦だ』
ここから先は迷ってる時間なんてないぞと別の俺が言う。
『例の赤ん坊は?』
『一人俺をつけて団長との再会待ちってとこだ。危なくなったらつけてるやつが避難させることになってる』
『しかし、マァムに赤ん坊の世話を任せるというのはナイスアイデアだったよな。アレでマァムの方は団長が不在だってことには気づかなかったはずだ』
一人別の俺の機転というか思い付きからの案を絶賛するメラゴーストが居たが、それの代償にマァムによる団長への説得は結局出来ずじまいだ。
(そもそも団長も攫われてた時点で、不可能に近かったんだけど)
人質交換の場で会話させるという意見も出てはいたのだが、そうするとこの地底魔城で決戦中に説得してもらうことが厳しくなるということでそちらは没になったのだ。
(マァムはオリジナルの手引きで脱獄させるんだっけ。あいつ、ちゃんとやれるかな)
やはり一番の不安要素はオリジナルだが、そこはもう信じるしかないだろう。
(しかし、よりによってなぜ俺がオリジナルのサポート何ですかね)
信じるしかないのに、自分の役割を鑑みると視線が遠くなるのを禁じえず。
『で、解放された団長は「おまえ一度捕まってんだからおとなしく本拠地の最奥でドンと構えてろ。どうせダイ達は決着つけにここに来るんだから。地底魔城のことは俺達が采配しとく、ダイ達きたらちゃんと伝えっから。あ、ついでに赤ん坊の世話頼むな」って隔離するんだったか』
無論こんな直球で無礼な物言いではないが、言わんとするところは変わらない内容を伝え、当人に気づかれないように細心の注意を払って隔離する。
『ヒュンケル団長が負けて、不死騎団が滅びれば真相は闇の中、か』
俺達不死騎団所属のメラゴーストもオリジナルに吸収され、姿を消すことになるだろう。
『団長もアバンが父親の仇でないと知れば、魔王軍に居る理由はなくなるしな』
団長の父親の仇はアバンではなく、ハドラー。原作知識があるからこそ俺達は知っているが、団長はそれを知らず、アバンと人間を憎み続けている。
(……その一方で俺達には甘いというか気やすいところもあるよな)
育ての父が俺達と同じ不死族だからということもあるのだろうが。
(俺達が父親をリスペクトしたから?)
実際はパプニカ国内の侵攻の犠牲者を減らすためのダシにしただけだが、そんなことは明かす必要もない。
『さてと、そろそろ総員配置につくぞ。出入り口に向かうのは、団長の出迎えが最初で、次がオリジナルのサポート。城内のモンスターを指揮する者は団長やオリジナルが他の魔物と接触するのを避ける様に部隊を動かせ。打ち合わせで決めたルートには魔物に足を踏み入れさせるなよ』
俺達を見回したBの識別名を冠した最古参のメラゴーストの声に俺達は一斉に応じ、役割ごとに分かれて散らばってゆく。
(俺は団長とそれを連れてゆく仲間をやり過ごして、その後だな)
オリジナルはやらかさないと声には出さず呪文のように唱えながら進むこと暫し。
(しかし、本当にここって迷路だよな)
防衛上のしかけなのかもしれないが、同じような見た目の通路が折れ曲がって続き。ここに来たばかりのころは道を覚えるのにも苦労したものだ。
(だからこそのサポート何だけどな)
道案内が居なければ、初見ではまず迷う。
『ヒュンケルさま、ご無事で』
『さ、奥へ』
他のモンスターは理由を作って遠ざけている入り口の方から別の俺の声が聞こえたのは一時待機場所と決めたところへたどり着いたとき。
(団長が戻ってきたか。なら、もうすぐだ)
思い返せば、たった数日の筈なのに長かった。いつばれるか気が気ではない団長不在をごまかす成り代わり。つじつまを合わせるための秘密会議とマァムの逃走経路や団長の移送経路、オリジナルの侵入経路などの確認。
(全てはこの時の為)
成功してくれよと祈りつつ、俺はオリジナルを待つのだった。
次回、十五話「潜入と脱出」に続くメラ。