ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十五話「潜入と脱出」

 

『たぶんこっちでよかったよな?』

 

 なんて声は出さない。ただ手引きしてくれる俺がいる理由の一つに視界内に広がる光景からただただ納得していた。

 

(左右が同じような壁の通路とか、これは迷うわ。侵入者を迷わすって意味合いだと防衛上正しいんだろうけど、こんなところに住むのは勘弁だなぁ)

 

 幼少のころからここで育ったであろうヒュンケルはそうは思わないのかもしれないが。

 

(とにかく、ここの俺と落ち合わないと。単独じゃ絶対迷う。まぁ、原作だとマァムって壁をぶっ壊してダイナミック脱獄してた気がするから、呪文ぶちかませばこの壁はぶち抜けるのかもしれないけど)

 

 多用すれば天井が崩落するだろうし、一度でも音で周りに気取られるだろう。

 

(うん?)

 

 そんなことを考えつつ進んでいた俺が止まったのは、進行方向先から声が聞こえたから。

 

『この先は俺に任せておけ。例の小僧どもを誘い込むにも足音のしない俺達が見張りをしていた方がいい。向こうに燭台があって俺の明るさも紛れるからな』

「確かにそうだな。では任せる」

『ああ』

 

 会話の内容からすると、足のある魔物を別の俺がその場から遠ざけたようだが。

 

(そっか、不死騎団の中にも別の俺以外に話したりできる魔物はいるのか)

 

 前に別の俺が率いていた骸骨の剣士はそんな様子はなかったから、おそらくは上位種とかなのだろう。今の俺は不死騎団のメラゴーストにモシャスで変身しているから、見つかったとしてもすぐに侵入者とバレることはないだろうが、以前からここに居るのに道を知らないとなれば話は別だ。俺は骨がこすれる乾いた音を伴う足音が遠ざかるのを待ってから、先の声の場所へと向かい。

 

『待たせたか』

『ううん、今来たところ』

 

 あらかじめ決めておいた合言葉で、互いが互いを確認する。

 

「案内する、ついてこい」

 

 そんな内容すら、ハンドサインというか腕を曲げた角度で示し、会話は最小限。誰かに聞かれる可能性のある場所で上方のやり取りは出来ないということなんだろう。実際、目の前の別の俺は先ほどまで他の不死騎団のモンスターと会話をしていた訳だし。

 

『着いたぞ』

 

 前を行くメラゴーストがようやく口を開いたのは、奥まった小部屋についてから。

 

『ここは?』

『トイレだ』

 

 尋ねた俺は返ってきた答えに言葉を失った。

 

『仕方ないだろ! うちは不死騎団、団長以外不死族だからぶっちゃけここが一番人気がないんだ』

『あー』

 

 言われてみればなるほどと頷かざるを得ない。旧魔王軍は色々な種族が居たが故にこういう設備も必要だったのだろう。

 

『一応聞いておくけど、その団長が用を足しに来ることは?』

『絶対にないとは言い切れないが、その場合先回りした別の俺が知らせに来る』

『なるほど。それで、俺はどう動けばいい?』

 

 納得したところで、俺が聞くべきはここからの方針だ。

 

『Aに任せたいのは、ダイ達の誘い込みだ』

『誘い込み?』

『団長との決戦の場までダイとポップを誘導したいからな。二人には戻ったお前から「マァムは見つけたが一人では解放するのが難しい。自分が案内するから手を貸してほしい」と要請して二人を城の中に誘い込め。適当なところで他の俺がダイ達を「偶然にも発見する」から、それを上からの指示という形で団長との決戦の場まで追い込む』

 

 なるほどと、俺は唸った。うまくいけばだが、それならほぼ原作の通りの形に修正できるだろう。

 

『それじゃ、マァムは?』

『そっちは独力で脱獄してもらう。最も不測の事態は俺達が陰でサポートするが』

『じゃあ、俺がすべきことって』

『引き返してここを脱出、ダイ達と合流して再突入することだな』

 

 何といえばいいか、確かにそれならやらかす可能性は低いだろう、ただ。

 

『どうした?』

『いや、なんでも……それじゃ、いってくる』

 

 モヤっとした気持ちを抱えつつ俺は何とか迷わないように道を引き返すと、地底魔城からの脱出を果たし。

 

『……ダイ?』

 

 らせん階段を上り終えて周囲を見回しつつダイ達の姿を探して。

 

「っと、メラ公か? えらく早いな……マァムは?」

『それが』

「メラゴースト君?」

 

 姿を現したポップに俺が表向きの事情を話そうとしたところでダイも姿を見せ。

 

『ええと、もう一人のおじいさんは?』

「バダックさんだったら、おれたちが囮をやるつもりで危険だったし、『やってほしいことがある』ってポップが言ってここから離れて貰ってるよ」

『そうなんだ』

 

 一人姿を見せない老兵士に抱いた疑問をダイが解決してくれたところで、俺は嘘の報告をする。

 

「そっか、捕まってる場所はわかったんだ」

『うん。ただ、見張りとかいたし、呪文で倒すと音で他の魔物に気づかれちゃいそうだったから』

「あぁ、それでおれを呼びに来たんだ」

『そう』

 

 引き返した訳にダイは納得してくれ、頷く俺の前で同じことをポップにも話し。

 

『そういう訳だから、中では俺が少し離れて先行するよ。 一緒に居るところを見られるとモシャスで化けてる意味がないし、俺一人なら見つかってもごまかしようはあるから』

 

 内部も一度見てきてるし、と続ければ二人も納得した様子で。こうして俺は再び足を踏み入れることになるのだった、地底魔城へと。

 




次回、十六話「見つかっちゃった」に続くメラ。
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