ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
『……よし』
念のため脇道も覗き込んでモンスターの姿がないことを確認してから、俺は振り返って横にふよふよ揺れた。手招きでは見つかった時流石に言い逃れのしようがないからこその、問題なしという即席の合図だった。
「……なんかすごいところだね」
「な、なんせ昔ハドラーの魔城だったって話だしな……」
振り返るダイと恐る恐るといった態で進むポップ、二人の会話が微かに聞こえ。
(ん?)
視線を前方に戻せばメラゴーストの姿が微かに見えて、俺は慌てて軽く縦に揺れる。俺の前に別の俺が姿を現す理由なんて限られている。自身では行動を制御できないモンスターの接近を伝えるものだ。
「っ、ダイ!」
「うん」
俺の合図は見えたらしく、俺も脇の通路に退くと近づいてきた足音が今まで俺の居た場所を通り抜けてゆく。
(誘導が始まった、かな)
俺とダイ達がニアミスしかねない様なルートにメラゴースト以外の魔物を寄越したのだ。おそらくはそういうことで。
(このままある程度中まで引き込んだところで、ダイ達が発見される、と)
前方には手引き役の俺がいるのだから、ダイ達を見つけるのは後方に回り込んだモンスターだ。
(さてと、さっきの奴らは行った、か)
脇の通路から顔を出しもう足音の主の姿が見えないことを確認してから俺は元居た通路に戻り。
(ダイ達も大丈夫だったみたいだな)
周囲を見回しつつ出てきたダイの姿を確認出来た俺はそのまま正面の道を進んでゆく。先ほど引っ込んだ左手の脇道の先が牢屋に行くには正解ルートなのだが、その先はザワザワと騒がしくなっていた。
(ダイ達を追い立てるべく回り込もうとしてるモンスターが動いてるのか、それとも別の俺達が情報交換しているのか)
どちらだったとしても、そちらには連れてゆけず。
「……ポップ、メラゴースト君あちこちグルグル回ってない?」
「……そんな気もするけどしかたねえさ。さっきから何度かモンスターとすれ違ってんだろ? ……あいつは見つかってもごまかしが効くけどよ、おれたちが見つかったら一発で忍び込んでることがバレちまう」
信用してついてきてくれてる感が声からするとひたすら申し訳なくなるが、正解ルートに案内するわけにもいかず。
(あ)
前方に再びメラゴーストの見えた俺は軽く縦に揺れてから脇道に隠れ。
「まただ! ダイ、隠れ」
おそらく近くの脇道にでも引っ込もうとしたポップの言葉が不自然に途切れた。
「ホガ~ッ!!!」
「ミ……ミイラだっ!!!」
刹那の沈黙を破ってポップの悲鳴とダイの声が上がり。
「ああそこは原作通りなのね」
と、謎の感想を声に出さず呟く俺を逃げろ作戦変更だというポップの声が我に返らせる。
(……ポップ)
作戦変更の部分は俺に向けたものなのだろう。見つかってないお前だけでもマァムの元に向かえと言う。ただ、その声が聞こえたのか、脇道に引っ込んだ俺が先ほどまでいた場所を人骨の剣士の集団が駆け抜けてゆき。
「ウゲッ!?」
ポップも知覚したのだろう、ちょうど今通り過ぎたモンスター達を。
(これでダイ達はヒュンケルの元に追い詰められる筈)
俺はマァムの元に向かうふりをしつつ不死騎団のメラゴーストと合流して指示を仰ぐ。
(予期せぬ不測の事態が起こるとしたら、逃走中のマァムと鉢合わせすることぐらいか)
今の俺はモシャスで変身していて、首から下げているアバンのしるしが見えない。鉢合わせになったら、マァムは不死騎団のメラゴーストだと思うだろう。
(攻撃される可能性もゼロじゃないけど、可能性は低いだろうな)
マァムの武装というと、ヒュンケルを殴ろうとした十字の杖と呪文を撃ち出す銃。メラゴースト相手に物理攻撃は分裂で数を増やす危険性があるし、銃を用いた呪文はぶっ放せば音で周りの魔物を呼び寄せるかもしれない上撃ち出す呪文は有限だ。
(一度撃つと弾丸に込められた呪文は失われて、また呪文を込めないと撃てない仕様だった筈)
ポップか故郷の村の長か、呪文を込めたのがどちらかはわからないがヒュンケルとの戦いで攻撃呪文は一発使ってしまっているというのに捕虜になったが故に再度呪文を込めてもらうような機会はなかったと思う。
(加えてメラゴーストって俺みたいな特例を除けば、メラの呪文一発撃ったら魔法力が尽きてただの雑魚になり果てるもんな)
ただのメラゴーストなら弾丸節約の為にスルーしたとしても不思議はなく。
『漸く来たか』
『お待たせ、待った?』
問題ないと判断して進んだ先で出くわしたメラゴーストに俺は合言葉を返す。
『信じられないことだが、どうやら何もやらかさずにここまで来たようだな』
『あー、えっと、うん』
信じられないってなんだよと叫びたかったが、これまでの行いを振り返るとそういう訳にもいかず、あいまいな返事を返し。
『それでこの後の俺はどうすればいい?』
『何も』
『え゛』
予想外の答えに俺は硬直する。
『「お前はよくやってくれたよA、もはや用済みだ」ってのにも心惹かれるんだが、本当にやってもらうことはない。しいて言うなら、決着がついた頃に登場して、入れ違いになったマァムを探したり追いかけてましたとダイ達に明かすぐらい?』
『ちょ』
なんだそれ、という言葉が喉まで出かかったが、そのメラゴーストこと別の俺の話は続いた。
『普段やらかしてるお前なら、「まぁありうる」って納得してもらえるだろう? ちなみにその時は俺達も念のために同行して待機不測の事態とかに備えてスタンバイしておく』
『ちくしょう、反論できない』
思わず項垂れる俺の前でくるりと背を向けた別の俺は行くぞとだけ言って進み始めたのだった。
何とか辻褄は合わせられたのか?
次回、番外9「決着の瞬間(ダイ視点)」に続くメラ。