ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「ヒュ……ヒュンケル、あなた……なんてことを……!!」
ゴメちゃんにぶつかられても無反応なダイを見ていたマァムが振り返って叫ぶ、あなたは自分の後輩を、仲間を斬ったのよと。
「なにが後輩だ! こいつはオレの敵の弟子だ!!」
だがヒュンケルはこれを鼻で笑い。
「ちがうわ!! アバン先生はあなたのお父さんの敵なんかじゃない……!!」
「なんだと!?」
驚きの声をあげつつもでたらめを言うなと自身の言葉を跳ねのけようとするヒュンケルにマァムは手にしていた小箱を見せるとカパッと開く。
(あの隠し部屋にあった宝箱の中身、更に箱だったのか)
こういう時、原作の記憶のあいまいさを思い知らされるわけだが、俺が秘かに成り行きを見守る間にも話は続く。
「こっ……これは……!?」
小箱の中身を見せられたヒュンケルは一瞬唸ってから目を見張った、んだと思う。
「……魂の貝殻……! 死にゆく者の魂の声を封じ込めるという……」
「あなたのお父さん……地獄の騎士バルトスの遺言状よ……!」
「と……父さんの……!!?」
隠れても居ないといけないこともあり、他の人物までの距離がある不便さを痛感する俺の視界で、貝殻を差し出されたヒュンケルが鎧の兜を脱ぎ捨て貝殻を耳に当てた。
(とりあえず、アレで誤解は解ける筈)
父と慕う当人が残した真実とメッセージだ。確か、アバンと戦った地獄の騎士バルトスが破れるもヒュンケルの作った首飾りを目にとめたアバンに見逃され、感服したバルトスがヒュンケルのことを話して、アバンに託して先へ通し。
(倒された魔王ハドラーが大魔王の力で復活、アバンを通したバルトスを殴り殺したってことと、あとはヒュンケルへの個人的なメッセージだっけ?)
詳細まで覚えてないが、概ねそんな感じだったと思う。後はそれをヒュンケルが受け入れられれば、戦う理由は消失するのだろうが。
(まぁ、簡単に受け入れられなくて、起きてきたダイと戦いになるんだけど)
しばらく見守っていれば、わなわな震えたヒュンケルが嘘だと叫んで貝殻を地面に叩きつけ、空にとどまったままの雨雲から雷が落ち。
「……ダ……ダイ……!?」
「バ……バカなっ!!? ブラッディ―スクライドの直撃を受けても死なんとは……!!」
雷光に照らし出され立つダイの姿に、マァムとヒュンケルが驚きの声をあげた。胸当てから肩当てまでが一直線にえぐれてるところを見るに、体を逸らして心臓への直撃を裂けたことで助かったんだろう。
『一応俺も耐えたんだけど……って、あれはガードしてたしノーカウントか』
「チュ」
ボソッと零したところで、足元のネズミが鳴き、動き出す。
(そっか)
今、周囲の注目はダイに集まっている。
「ダイ~ッ!! やめろッ!! 殺されちまうぞッ!!」
ズンズンとヒュンケルへ向かって歩いてゆくダイへポップは叫んでいるし。
「おのれ……! 今度こそ成仏させてやる!!」
ヒュンケルに向かってくるダイを放置することなどできようはずもない。なるほど、移動するなら今という訳だ。
(それにこの出口って、ダイから見るとヒュンケルの向こう側の上の方だもんな。ヒュンケルは背中をこっちに向けてるからいいとしても)
確か原作だとこの時ヒュンケルの技を受けて意識が飛んでて、無意識で動いていたはずだから視界に入っても認識されないかもしれないが、ポップやマァムは別だ。
(闘技場の舞台と客席との間の壁って、中で戦ってるモノが逃げ込んだり乱入して来ないようそれなりに高い塀になってたはず)
移動するなら、そこか、もしくは客席のところどころにある崩落してできた穴辺りがベストか。
『って、早ッ』
隠れ場所を物色して彷徨わせた視線が闘技場の観客席を随分下まで降りて行っているネズミを捉え、我に返った俺は慌てながらもポップ達に見つからぬように体をかがめ、這うように客席を降り始める。
「聞いたはずよ!!! お父さんの言葉を……!! あなたが真に憎むべきなのは魔王軍だわ!!」
「うっ、うるさいッ!!」
闘技場の中央では、もう悪の剣をふるうのはやめてと縋りつくマァムをヒュンケルが強引に振り払い。
「あ……うっ」
「いまさら……いまさらそんなことが信じられるかっ……!!」
壁に叩きつけられて呻くマァムにヒュンケル振り向き。
(やばっ!?)
俺が慌てて身を伏せる一方で俺はもう魔王軍の魔剣戦士ヒュンケルなのだとヒュンケルが喚く。
(はぁ、今の本当に危なかった)
危うく見つかるところだったが、俺は何と戦ってるんだろうか。不意にそう思った。
(って、そうじゃない!)
俺が頭を振る間も時間は流れている。身を起こせば、行くぞと叫んで駆け出したヒュンケルの一撃を剣で受けたダイが勢いに吹っ飛ばされるのが見え。
「だめだッ!! いつものスピードが全然ねえっ!!」
更に押されるダイの様子にポップが殺られると悲痛な声をあげた。
十九話「決着」に続くメラ。