ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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二十話「さらば孤独の戦士1」

「ダイ! もうやめて!!」

 

 倒れたヒュンケルの側に座ったマァムが、剣を片手に歩み寄ってくるダイへ制止の声をかけ。

 

「……決着はついたわ……あなたの勝ちよ! ……だから……もう」

 

 アバンの使徒同士で傷つけあうのはやめてと訴えるマァムの目から零れた涙がヒュンケルの身体へ落ちる。

 

「「……マァム」」

 

 ヒュンケルとポップがそれぞれマァムの名を口にする中、俺は透明のまま空を仰いでいた。

 

(決着ついた後なのにダイ達と戦わせた俺って、マァム的にはやっぱりアウトかな)

 

 この場はしのげても、後でヒュンケルが加入することになったら実は俺が一度勝ってしまってることが露見しかねないのだが。

 

(現状それを知ってるのはヒュンケルとクロコダインだけな訳だし、この後口止めしておくか)

 

 そんなことを考えてる間にダイが意識を取り戻し、倒れたヒュンケルとヒュンケルを膝枕してるマァムと言う光景に驚きの声を上げ、周囲を見回し、自分が剣を持ってるのに気づいて混乱するが、気が付いたら敵が倒れていて、救い出すはずの相手まで近くに居たのだ。

 

(混乱して当然だよな、うん)

 

 できればその混乱のままに不自然な状況とかには気づかないで欲しい。そんなことを思いつつ、俺は移動を始め。

 

「……なぜ、敵であるオレを……!?」

「敵なんかじゃないわ……」

 

 ちらりと振り返れば、問うヒュンケルへ自身の首元に手を伸ばすマァムの姿が見えた。続いてチャラッと音がしたが、何をしたのかは様子を見守り続けなくてもわかる。

 

「そっ、それは……!? まさか……オレの……」

 

 そう、ヒュンケルが放り投げたアバンのしるしだろう。背を向けたから俺には見えてないが。

 

「それをずっと……持っていたのか……!?」

「あの時に拾ってね。……きっといつか、あなたにこれを返す時がくる……」

 

 そんな気がしたの、と差し出したしるしをヒュンケルが拒む筈はない。

 

「ダ、ダイ……大丈夫か?」

「ポップ、ゴメちゃん……おれ、勝ったの……?」

 

 ダイを案じるポップの声と、近くにあの金色有翼スライムも居たんだろう。未だによくわかってない様で尋ねたダイの言葉にそうだと答えたのはヒュンケルで。

 

「オレの……オレの完敗だ!」

「……ヒュンケル!」

 

 はっきりと負けを認めたヒュンケルの名を呼んだのは、声からしてたぶんダイ。

 

「……クックック」

 

 そんな中、どこかから聞こえ始める笑い声の主の元に、俺は向かっていた。

 

「クックックックックッ……!」

 

 唐突に聞こえ始めたからこそ、まだダイ達は声の主の居場所に気づかないだろう。だが、当たりをつけていた俺は違う。

 

「クックック、ざまあねえなヒュンケル……やられたあげくに女の膝枕たぁ……!!」

 

 半身が氷で半身が炎の人型が一歩前に出した右ひざへ右腕を乗せ前に乗り出すような姿勢を作ってる姿をはっきり捉え、密かに詠唱を始める。

 

「き、貴様は……!!? 氷炎将軍フレイザード!!!」

「なっ……なんだあいつ!? 炎と氷がくっついてやがる……!!」

 

 ヒュンケルに続きポップがその見た目に驚きの声を上げる。確かにインパクトのある外見だし、そもそも相反する属性の両方を兼ね備えてる見た目は、驚いても当然だと思う。

 

「な、なぜ貴様がここに……!?」

「クハハハッ! 決まってんじゃねぇか! てめえの息の根をとめてやろうと思ってきたのさ!!」

 

 ヒュンケルの問いに答えて目的を明かす氷炎将軍は、ヒュンケルに目が行ったままの様で、未だ俺に気づく様子はない。故に俺は呪文の詠唱を続けていたが。

 

「だいたいてめえは昔から気にいらなかったんだ、オレが先に目をつけたメラゴーストどもも半分ぶんどって行きやがって!!」

『え』

 

 想定外の話に、思わず詠唱が途切れた。

 

(半分? 分裂した俺を巡ってフレイザードとヒュンケルが争奪戦してた?!) 

 

 何それ、俺、不死騎団の俺からそんな話は聞いてない。

 

「その上人間の分際でオレ様の手柄まで横取りしようなんざ100年早えェんだよっ!!」 

 

 愕然とする俺には気づかず、フレイザードは半身の炎の勢いを強めながら尚も語る。

 

「てめえがもし勝っていたらブッ殺して上前はねてやろうかと思っていたが……負けていたとはいっそう好都合だぜ……!」

 

 実はもうこの前に一度負けてますなんて実情を知らないからの言葉なんだろうが、もし、ちょっと前にも負けて捕虜になってたって知ったら、この炎と氷で半分こ将軍は一体どんなリアクションを見せてくれたのだろうか。

 

「生き恥をさらさず済むようにオレが相打ちってことにしといてやるよ!! ついでにてめえのとこの生き残ったメラゴーストも拾ってやらあ!!」

 

 泣いて感謝しろいと叫んで氷炎将軍は左の手のひらに浮かべた火球を投げつけ、思わず目で追った火球は闘技場中央の地面に突き刺さると、地震を引き起こす。

 

「こっ、これは……!?」

「クカカカカ……ちょいとここらの死火山に活を入れてやったのさ……!! もうじきこのあたりは……マグマの大洪水になるぜ!!」

「ええっ?!」

 

 ポップは驚いたようだが、この流れは原作の通り。不死騎団の俺達も予期して居たようで、闘技所の客席入り口からぞろぞろと姿を見せ。

 

「あ、あそこにメラゴースト達が!」

「おお、やっぱり見どころあるな。もう全員集めてきやがったか」

 

 マァムが気付いて指さすとつられてそちらを見たフレイザードが喜色を浮かべ。

 

「お前達、まさか……」

「ホラよ、見ての通りだ。てめえに気づかれずに接触するのには骨が折れたがな」

 

 目を見張ったヒュンケルへおまえって人望ないのなと氷炎将軍は煽って。

 

「おのれッ! フレイザードォッ!」

「おっと!」

 

 怒りの叫びと共にヒュンケルが投じた剣をフレイザートは飛び退いて躱す。

 

「へへへっ歓迎されてねぇみてえだな……じゃあ、オレはあいつらとここらでおさらばするぜ」

 

 せいぜい溶岩の海水浴を楽しみなと言い残した氷炎将軍が背を向ければ、観客席の最上段に居たメラゴーストたちがこれを追いかけて行ったのだった。

 




一話に収まらなかった。

次回、二十一話「さらば孤独の戦士2」に続くメラ。
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